ちょっと用があって日本のお役所関連のところへ電話を入れた。
改めて思ったこと、日本は良い国だ。。。(しみじみ)
日本語が通じるのはもちろんだが、電話の取次から、担当者の対応まで。
なんと丁寧なこと。。。
きっとアメリカの洗礼?を受けたことのある多くの方は、同じことを思われる気がする。
それくらい日本にはポライトな人が多い。
けど、電話を切る間際、ついついいつもの癖で、電話先の担当者の名前を聞いてしもた。。。
というのは、アメリカの場合、いわゆる「人によって対応が違う」というのは茶飯事的に起こる。良い意味では「ネゴシエーションの国」に通じるかもしれんが、悪く言えば、テキトー。
そんなテキトーな国の場合、何が困るかというと、Aはこういうたのに、Bがそれはだめ、などと言い出し、振りだしへ。。。(もしくは余計厄介に・・・)
もしくは、そのA自身がテキトーだったら、進んでいるはずのことが一切進まず・・・、なんとこともよくよくよくよくある。
だから、責任の所在をあとでトレースするためにも、そのAの名前を聞くことをみんなよくやってる。(有効性がどれくらいあるかは知らんが)
それはともかく、日本のポライトさは、ホントに世界に誇るべきことだと改めて思った今日この頃。アメリカに来てわかった日本の良さでもある。
3/30/2008
日本語対応
3/29/2008
脳内即興曲
ジャズに名曲はなく、名演奏あるのみ
と野川香文が言ったように、ジャズの特徴は、毎回違うアドリブ演奏にある。
では、そんなアドリブ演奏は脳のどこの活動に支えられているのか?
最近PLoS Oneに報告された論文によると、アドリブ演奏をする時、ちょうど額の奥に位置する前頭葉の一部がより強く活動することがわかった。
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研究では、ジャズミュージシャン(ピアニスト)の脳活動をMRIで測っている。そして、次の二つの条件で、脳活動を比較している。
第一に、いわゆる「コントロール」と考えているもので、4分音符をドレミという順番で弾く。あたえられた課題曲を弾いているのと等価と考えて良さそう。第二の条件は、「アドリブ」で、4分音符だけども自由なメロディーを弾く。
この2条件のときの脳活動を比較している。研究ではさらに、リズムの制約のなしで、コントロールとアドリブの脳活動も比較しているが、結果はほぼ同じだった。(なので、省略)
ちなみに、実際の演奏例がこちらにある。(特にAudio S4を。スウィングしてます!)
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では、スウィング中の脳(Swingy Brain?)はどこが活動するか?
論文のFigure3にまとめられている。暖色がアドリブ>コントロール、寒色がその逆。
まず、アドリブを弾いている時に強く活動した脳の場所はどこか?
前頭前野内側部(medial prefrontal cortex)なるところ、特にその先端(吻側)がより強く活動していたらしい。ここは「ブロードマンの10野」といわれるところでもある。
他には、感覚運動処理に関わるいくつかの場所も強く活動している。それから、論文ではそれほど強調していないが、小脳の一部も強く活動していた。
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逆に、アドリブ演奏時、活動が弱かったところはどこか?(あくまでコントロール時との比較)
意外かもしれないが、上の前頭前野内側部を除く前頭葉の広い部分の活動が、弱かった。逆に言うと、単調な課題曲を弾いた方が、前頭葉の広い場所で活動が増えていたことになる。
その前頭葉の広い部分には、前頭葉でよく研究されている背外側部、それから眼窩前頭前野、さらには、内側の後方全般、といったところが含まれる。
さらに、海馬や扁桃体といったいわゆる「辺縁系」といわれるところも、アドリブ演奏時に活動が弱かった。課題曲演奏時に比べて。
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この研究はいわゆるクリエイティビティに関わる脳活動を調べた研究と位置づけられそうだ。非常に面白い。
このデータをそのまま理解すれば、前頭葉の先端部分の活動を高めれば、アドリブ演奏のような創造的な活動ができるのかもしれない。
一方で、前頭葉が活動したからといって、創造性を鍛える方向で頭が良くなる、という考えはNGである、とも解釈できるかもしれない。なぜなら、アドリブ演奏時には広い前頭葉の活動が、単純な作業の時より活動が弱くなっていた、と解釈できるから。
非常に興味深い。
ちなみに、海馬などの辺縁系の活動が低かったことに関しては、解釈が難しいようだ。また、自分が読んだ限り、小脳の活動については何も議論していないようだが、もしかすると、伊藤正男先生が主張されてきたことと大いに関連があるかもしれないなどと思った。どうなのだろう?
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この研究、面白いが問題もありそうだ。
例えば、「創造」と「でたらめ」の区別。
今回の研究ではミュージシャンがやったから、あたかも創造的に弾いたと一意に解釈するのはそう無理はない。
が、より厳密に考えると、アドリブとランダム演奏は区別されるべきだが、それを「客観的」にはできていない。そもそもランダム演奏という条件を設定していない。アドリブとランダムを区別するためには、創造性を「測る」必要があるわけだが、創造性は単純なモノサシで測れる代物ではないから創造なのであって、大きな壁が存在する。
とにかく、今後このような研究はどんどん発表されるだろうが、創造性とは何か?どう評価するか?という問題がつきまとう気がする。脳科学ではこれまで一部の人しか真剣に考えてこなかった「脳の活動」をみんなで深く考えていかないといけないのかもしれない。
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文献
PLoS ONE. 2008 Feb 27;3(2):e1679.
Neural substrates of spontaneous musical performance: an FMRI study of jazz improvisation.
Limb CJ, Braun AR.
今回紹介した論文。
Nat Rev Neurosci. 2008 Apr;9(4):304-13.
Control of mental activities by internal models in the cerebellum.
Ito M.
最近、伊藤正男先生が書かれた総説。
内部モデルのコンセプトを発展し、小脳におけるメンタル活動について、実験事実を踏まえながら仮説を展開、そして精神疾患との関係についても考察されている。自分が読んできた範囲の文献で、小脳は意外な場面でよく顔を出すと思っていたが、その理由を考える上でも非常に参考になる気がした。
wikipediaのCreativityという項目もなかなかお薦め。
さらに、自分が知っている範囲では、Zekiもcreativityに関連するエッセーを書いている。
3/22/2008
デスパレート・アクト
肉を切らせて骨を断つ。
英語なら、デスパレート・アクト(desperate act)とでも訳したら良いか。
捨て身の行動。
ポイントは、リスク(傷を負う)をとりながら、それよりも大きいであろうリスク(命を落とす)を避ける、ということではないかと思う。
しかし、この戦略は極めて危険である。捨て身だけに。無難に行ったほうが良いときにこんな戦略をとると、リスクが倍返しになるリスクがある。
けど、研究にこの発想を持ち込むと、実は面白いかもしれない。
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ネットワークを考える。
例えば、電線の網(パワーグリッド)。
普段は、電気がそのネットワークを流れている。
今、いくつかの中継地点が機能不全に陥ったとする。
そうすると、他の中継地点にかかる負荷が増える。
そうすると、なだれ的に中継地点が機能不全に陥っていく。
結果的に、システムそのものがダウンし、大停電へ結びつく。
アメリカではよく?聞く話である。
では、では肉を切って大停電への連鎖反応を断つことはできないだろうか?というのが、このエントリーでの問題意識である。
実は、そんな肉(中継地点)を切って骨(なだれ的な機能不全)を断つことを考えた面白い論文があったので、少し読んでみる。
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その論文は、2004年にPhysical Review Lettersという物理系の一流雑誌に発表された論文。Motterという人の研究。
この研究では、
一旦、中継地点の機能不全が始まったら、少ない負荷しかかかっていなかった中継地点を除いたり、大きな負荷がかかっていた電線を取り除くと、なだれ的な現象を軽減できる、
ことを明らかにしている。
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この研究のモチベーションはこう。
上の大停電のストーリーを
1.いくつかの中継地点が機能不全に陥る。
2.さらなる中継地点の機能不全が起こる。
と分けて考える。そして、1から2へ発展する間に、ステップ1.5として「意図的除去」を実施して2を防ごう・軽減しよう、というわけである。
ここで「意図的除去」というのは、アクシデントではなく、文字通り意図的に、中継地点や中継地点同士を結ぶ電線を取り除いて、電流の流れをコントロールしよう、という発想である。
つまり、意図的除去という肉を切る戦略をとって、なだれ現象という骨を断とう、という発想である。
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この論文では、「スケールフリー・ネットワーク」を想定した上で、2つの戦略を考えている。
1.ノード、つまり中継地点を取り除く
2.エッジ、つまり中継地点同士を結ぶ電線を取り除く
ちなみに1の戦略では、どのノードを除くかという点でさらに4つの戦略を検討している。(結果は同じ)
この戦略に基づいて、解析的に解いてわかったことを、シミュレーションとしていろんな具体的な条件(いくつ除くか?、負荷に対する許容度はどれくらいか?という条件)で確認している。
そしてわかったこと:
1.かかっていた負荷が少ないノードを除く。
2.大きな負荷がかかっていたエッジを除く。
すると、何もしないよりは、なだれ現象を軽減できることがわかった。(もちろん、止めることはできていない)
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では、これに近い発想を生物システムに応用できないか?と考えて取り組んだ研究結果を、同じMotterという人が最近報告している。いわゆる遺伝子のノックアウトを、システムを助けるため、減った生産性を上げるために使おう、ネットワークベースの発想である。
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さらに脳を考えてみる。
ロボトミーはまさにこれなのかもしれない。(ロボトミーは前頭前野の一部や線維を外科的に切除することを指してました。すみません。。。SMLさん、ご指摘ありがとうございました。)
他の例では、例えば、てんかん治療のために脳の一部を取り除いたり、脳梁を切断したりする。確かに難治性てんかんを治せるようである。
一方で、このような脳の外科的手術には大きな副作用が伴う。新しい記憶(エピソード記憶)ができなくなったり、いわゆる分離脳(以下の文献も参照)といった重篤な問題が生じる。
もしここから学ぶとするなら、「肉を切って骨を断つ」という捨て身の戦略は、あくまで非常手段であって、目指すべき方向ではないのかもしれない。
これはちょうど野党が日銀総裁人事でとっている戦略と匹敵するような気もしないでもない。つまり、目先のメリット(国民の支持率アップ?与党の支持率低下?)だけにとらわれて、もっともっと大事なシステムレベルのこと(日本の信用、世界経済)には大きなデメリットをもたらしうる。(野党は肉と骨の価値判断を完全に見誤っているように見える。)
つまりは、よく考えてやらないと、バカな戦略になって、自分の骨まで断つことになりそうである。これは言わずもがなか?(タイムリーだったのでつい。。。)
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文献
Phys Rev Lett. 2004 Aug 27;93(9):098701. Epub 2004 Aug 26.
Cascade control and defense in complex networks.
Motter AE.
Mol Syst Biol. 2008;4:168. Epub 2008 Feb 12.
Predicting synthetic rescues in metabolic networks.
Motter AE, Gulbahce N, Almaas E, Barabási AL.
おまけ。
たまたま見つけた難治性てんかんのための脳梁切断手術に関する日本語の文献。
3/21/2008
英語の応酬?
最近、アロンというイスラエル出身の大学院生にプロジェクトを手伝ってもらっている。いろいろ実験を教えたり、進捗を簡単にレポートしてもらったりしている。
と書くと、ワールドワイドチックで非常にかっこよく聞こえるはずである。
自分でもそう思う。
が、そのアロン君、英語が超下手。
英語下手度ランキングでは、ダントツのツートップを独占している。自分と。
どちらがトップ(ワースト)かは、聞きたくもないので、誰にも聞いていない。
とにかく良い勝負である。
なので、彼との英語でのやり取りでは、他人にはとても聞いて欲しくないようなすごい英語、別に変な意味ではなく、文法的にすごい英語がいきかっている。
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彼が多用するストラテジーがある。
例えば、彼が何かを伝えようとして、自分が理解できなかった場合、
OK. Never mind.
と口癖のように言う。
気になるやんけ。
例えば、自分が、「そこ、こうやったら」、といったアドバイス的なことを言った場合、
OK. Never mind.
と口癖のように言う。
気にしろよ。
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とにかく、そんな両者の英語能力でも何となく意思疎通ができるから、ヒトのコミュニケーション能力はすごいな、と思う。
脳をまるで総動員しているかのような、あるいは左脳を全く使っていないような、言語を超えたコミュニケーションがそこにはある。。。
3/16/2008
バーチャル脳ベータ版?
最近気になった論文、IzhikevichのPNAS論文。
ヒト脳のDTIデータを、thalamocorticalとcorticocortical connectionの情報、
MartinたちのネコV1の解剖データを、局所回路の情報、
ラットのスライス実験でわかったデータを、シナプス応答の情報、
として使って、ダウンサイズしたヴァーチャル脳(新皮質と視床)を作っている。さらに彼が考案したいわゆるIzhikevich modelで1M個のニューロン活動をシミュレーションしている。
そのために60個のプロセッサーをもつPCクラスターを使うという力技である。
そのPNAS論文では、図4からバーチャル脳を走らせた時の特徴的な結果を示している。面白いのは図5からか。
図5では、一発のスパイクの違いという初期条件が違っただけで後に大きな違いが出てしまうことを示し、
図6では、traveling waveを再現し、
図7ではさらに、resting stateを再現している。
図6に関連して、領野によって特定のオシレーション(ベータ)のおきやすさが違う現象は解剖情報だけで再現できた、という点は興味深い。
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ただ、これら後半の図たちで新規性はないといえばない(もちろん、リアリスティックな大規模シミュレーションをした、という点は新しいけど)。しかも通常のpeer-reviewのプロセスを通さず、Edelmanの力でPNASに出しているようだ。
この論文、一見セクシーではあるけど、ツッコミどころ満載なシミュレーションな気がする。
例えば、
全領野の局所回路をV1で置き換えて良いのか?
細胞の数という点でも領野によって違うわけで、そういう解剖情報は無視して良いのか?
シナプス応答の点で考えると、例えば、HCNの特徴を入れなくても良いのか?
apical dendriteはともかく、basal dendriteこそ重要なんではないか?
そもそもヒト、ネコ、ラットをミックスして良いのか?
DTIやcanonical circuitでは記述できていない(であろう)弱い?結合は考慮に入れなくて良いのか?
などなどなど。。。
その辺は現時点では難しいだろうけど、テクニカルな点で一つ非常に気になることがある。
このバーチャル脳、オーバーフィッティング的なことが起こりまくっているのではないか?ということ。ダウンサイズして、固定パラメーターを使ったといっても、これだけ大規模なシミュレーションをしたら、そりゃ、何でもできるでしょ、という気がしないでもない。どうなんだろう?自分にはようわからん。。。
図5のカオス的な結果を受け、最近のBrechtのネイチャー論文をdiscussionで持ち出している。が、果たして同じ次元で考えて良いのか、単なる偶然の一致なのか、ちょっとわからない。オーバーフィッティング的なことが起こっているなら、ちょっとしたノイズに過剰に反応するというのは何となく想像できる。(Brechtの論文そのものがあやしいといえば、あやしくもあるか。。。3個のinterneuronの貢献度大だし、そいつらがgap junction作ってたら1個という主張はできないし。。。)もし同じかも?と議論をするなら、1個のFS細胞のスパイクを操作した時により大きな効果がみれるかどうか興味があるところ。
このオーバーフィッティング(かもしれない)問題、モデリングに詳しい専門家が見たらどうなのだろう?単なる自分の知識不足による勘違いなのか?supplementをざっと見た感じ、そのあたりに関するコメントはないと理解した。
こういうモデリングでクロスバリデーション的なことはできるだろうか?この場合のクロスバリデーションはいったい何か?
Izhikevichのことだからそんなことは十分認識していて、とりあえず作ってから問題をデバッグして、バージョンアップをはかっていこう、という超楽観主義的発想なのかもしれない。彼のウェブには将来の見通し的な情報もある。
やはり、気になるのは、このシミュレーションから何を予言できるか?ということ。その予言を実験的に検証していくことが、この場合の「クロスバリデーション」になるのかもしれない。その意味では、この論文では予言はないと理解したので、とりあえずベータ版を作ってみました、というお披露目論文と理解したら良いのだろう。
今回のシミュレーションは睡眠状態だとして、ここから脳状態をどう変化させて、よりリアルな意識下の脳に近づけていくか?どう感覚刺激を入れて、運動出力なり、意思決定的な情報をディコードするか?
例えば、バーチャル脳ではxxxxができないとNG、といった「バーチャル脳」の必要条件を考えていく上で良い叩き台になるのかもしれない。
それにしてもこのIzhikevichという人、scholarpediaといい、出版前の本全文をPDFで公開するとか(出版後の今はさすがに公開していない)、やることがぶっ飛んでいる。。。ヤバイ研究者の一人。
文献
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Mar 4;105(9):3593-8. Epub 2008 Feb 21.
Large-scale model of mammalian thalamocortical systems.
Izhikevich EM, Edelman GM.
Izhikevichの本