少し前、「リアルタイムfMRIの応用」というタイトルでdeCharmsがNature Review Neuroscienceに総説(正確にはopinion)を書いていた。
自分のようなMRIのプロでない人にとっても、非常に読みやすく書かれていてお薦め。
リアルタイムfMRIは、自分自身の脳活動を覗いてしまうことを目指したfMRI、と言ったら良いのだろうか。wikipediaにもすでにエントリーがたっていた。
(ただ、この総説を読むと、自分が思っていたよりもその定義の範囲は広い印象を受けた。もしこの総説にあることをすべて含めるなら「リアルタイム」という言葉はやや誤解を生む言葉だな、という気もした。fMRI2.0くらいか?)
この総説では、fMRIの原理といった技術的な基本から限界がまず解説されている。続いて、ここ数年注目を浴びてきたパターン認識の手法を応用した脳活動の解読、ウソ発見器開発状況の未成熟さ、そして、いわゆるブレーン・コンピューター・インターフェースへの応用例などが豊富な引用文献とともにまとめられている。
後半からがリアルタイムfMRIの真髄ではないかと自分が思っている話、つまり、自分の客観的な脳活動を主観的に体験して、自分の脳活動あるいは感覚を変えよう、という試みが紹介されている。
この主観と客観のインターフェースとしての役割をリアルタイムfMRIが果たすかもしれないから、deCharmsはmind-brain interface(心脳インターフェース)という言葉を使っているのだろう。
終盤は、それを医療目的に応用する試みについてもいくつか紹介され、倫理的な問題も考慮に入れながら、現在抱えている問題を克服していけば、自分自身の心と脳の中をこれまで以上に覗くことができるようになるのではないかと締めくくっている。
---
感想
「心脳インターフェース」という言葉、自分はこの総説で初めて聞いたけど、魅力的な言葉。主観と客観が相互作用したら、人の脳活動、体験がどう変わっていくのか、非常に面白そう。deCharmsは冒頭でintroneuroimagingという言葉も使っている。内観の21世紀版、ということになる。
けど、この総説でも書かれているように技術的な限界もある。空間解像度、時間解像度。ともに、ニューロン活動ではなく、血流の変化を測るという根本的なところだから、その点はどう頑張ってもムリがでるわけだ。トリッキーなアルゴリズムで血流情報から神経活動を取り出せる気は少なくとも自分にはしない。
(ローカルな部分だけに注目してモデルを立てるといったことはひょっとしたら有効かもしれないけど、グリアも含めた細胞構築、血管配線などの複雑さ+脳状態に依存した神経活動の複雑さを考えると、相当にハードな気が。。。)
deCharmsは、その技術的な限界に対して反論してはいる。けど、もとの信号がなまっていると、それ以上細かい情報を見たくなっても見れないわけで、楽観的にとらえると、痛い目にあうような気もする。根本的な部分を見直すホントのfMRI2.0ができるのがベストなのだろうけど、そのあたりはやはりまだ難しいのだろうか。
それはともかく、これまでのfMRIの貢献度はとんでもなく大きいから、この新しいfMRIでどんな不可能だったことが可能になるのか、注目だ。
---
文献と関連情報
Nat Rev Neurosci. 2008 Sep;9(9):720-9.
Applications of real-time fMRI.
Christopher Decharms R.
vikingさんのブログでも今回の総説がheadlineとして紹介されていました。
Omneuron
deCharmsがいる研究所?
このサイトのこちらで彼が一般の人たちに熱く語ってたりします。
関連エントリー
自分の脳活動を覗いてコントロールする:リアルタイムfMRI
9/27/2008
心脳インターフェース
posted by Shuzo time 08:13
Subscribe to:
Post Comments (Atom)
No comments:
Post a Comment