10/11/2008

感覚統合と神経コード

EngelSingerFriesたちは、ニューロン集団の同期活動によって情報が統合される(結び付けられる)という、integration through coherenceという仮説(あるいはtemporal correlation/binding hypothesis)を唱え、それをサポートする実験的証拠を次々と報告してきた(総説としてはこちらがお薦め)。

最近、EngelのグループがTrends in Neuroscienceに出した総説では、視覚と聴覚といった異なる感覚の統合、つまり異種感覚統合(crossmodal integration)にも、そのintegration through coherenceの説を拡張しようとしている。


その総説ではまず、ヒトや動物での異種感覚統合のこれまでの研究の流れを簡単にまとめている。
そして、彼らの主張を展開した上で、大きく4つのカテゴリーとして研究を分けながら、彼らの主張をサポートしそうな研究を包括的にまとめている。

その総説中のTable1が神経オシレーションと感覚統合の関係を示したこれまでの研究のまとめ。よくまとまっている。

彼らも言っているように、動物での実験証拠が非常に少ない(Lakatos、Schroederのグループ、Ghazanfar、Logothetisたちがパイオニア)。

最後に、outstanding questionsとして、8つの問題を提起している。一部はヒトでしかアプローチできなさそうな問題だったり、感覚統合でなくても良いより広い意味で大きな問題であったりする。

彼らの主張したいことは非常にわかる。
が、読んだ感じ、感覚統合独自の問題は何なのか?もう一つしっかり伝わってこなかったのは正直否めない。別に視覚系の研究だけで十分で、ただでさえ複雑な問題に、わざわざ変数を増やしてきて、より込入った問題にする必要はない、と批判を受けるような気もしないでもない。

感覚統合の問題に取り組むからこそ脳の働きの本質が見えてくるんだ、的なことがわかってこないといけない気がする。それが何なのか、あるかどうかもよくわからないけれども。。。

それから、依然相関現象を追っているだけで、そこを超えないと彼らの主張は飛躍できない気がする。まだまだ課題は山積。

---
文献
Trends Neurosci. 2008 Aug;31(8):401-9. Epub 2008 Jul 2.
Crossmodal binding through neural coherence: implications for multisensory processing.
Senkowski D, Schneider TR, Foxe JJ, Engel AK.

No comments: