最近、EU圏の新型グラント関連の記事が目に付く。
Nature GeneticsのEditorialやNature Review Molecular Cell BiologyのPerspectiveや、少し古くなるがScienceのEditorial。
詳しいことはよくわからないけど、ERC(wikipedia)なるEU版NIHとでも言ったら良いか。それがなかなか良いスタートを切ったらしい、とのこと。
アメリカが戦争にお金を使ってサイエンスをおろそかにしているうちに、勢力分布が少しずつ変化するのだろうか?
5/04/2008
EU圏の巻き返し?
4/26/2008
大小の意思決定
意思決定 強化月間中。
ブレーンストーミングとして、脳と距離を置いてみた。
小さな意思決定:細胞の運命決定
アインシュタインが
I, at any rate, am convinced than He does not play dice.と言って、量子力学支持者と論争を繰り広げたのは有名。
生命科学という意味でも、アインシュタインの「神はサイコロを振らない」という洞察は、正確ではなかったようだ。最近サイエンスに、細胞の運命決定の確率的な側面に関してまとめた総説が掲載されいた。すばらしく面白い。
バクテリアから哺乳類の網膜まで、サイコロを振るような不確実な確率的な過程が、細胞の運命決定にどう貢献するか、現時点での理解がまとめられている。
ポイントだと思ったのは、ノイズとその増幅。
「ノイズ」が、細胞の意思決定を左右するけど、それだけでは不十分で、そのノイズを「信号」にする増幅機構が本質か。
この総説で紹介されていた具体例は、バクテリアのベット・ヘッジング的戦略、嗅覚系や視覚系の感覚受容細胞レベルでのエコノミカルな戦略としての確率的遺伝子発現、線虫やハエの発生中の細胞間側方抑制による細胞運命決定、が取上げられていた。
この総説、次のように締めくくられていた。
in conrast to Einstein’s view of the universe, she also knows how to leave cerain decisions to a roll of the dice when it is to her advantage.規律に厳格な神、気まぐれな女神。
文献
Science. 2008 Apr 4;320(5872):65-8.
Stochasticity and cell fate.
Losick R, Desplan C.
最近のニューヨークタイムズの記事もきっとこの総説にインスパイアされてる気がする。
---
大きな意思決定:動物集団のコンセンサス
次は、動物のグループとしての意思決定。
Couzinの研究は、以前も少しだけ取上げたけど、やはり面白い。
個体同士が相互作用する時、どういうルールで自分の動く方向を決めるか、ごくごくシンプルなルールだけを仮定する。そして、動物がグループとしてどのように意思決定するか、シミュレーションで調べている。
各動物の動きの決め方に関するシンプルなルールだけで、情報(行き先を知っている個体の進行方向の情報)が伝播していき、自己組織的に集団の行動が決まる。
ごく少数の個体(リーダー、ボス)が行くべき方向を知っているだけで良く、残りの大多数は、近視眼的に、他者と衝突しないように協調していくだけで良い。
もしリーダー同士の競合がある場合、リーダーの好みの方向にフィードバックをかける仕組みをいれると、妥協的な意思決定ではなく、どちらかのリーダーの方向にコンセンサスが得られるようになる。
「リーダーの好みの方向にフィードバックをかける仕組み」
これはまさに、ノイズとその増幅。
細胞レベル、動物個体レベルでアナロジーが成り立つなら、その中間のレベルもアナロジーを当てはめて良い気がする(もちろん、さらに上?のヒトのグループ行動についても)。
地に足はついていないけど、真剣に考えて良い気もする。
文献
Nature. 2005 Feb 3;433(7025):513-6.
Effective leadership and decision-making in animal groups on the move.
Couzin ID, Krause J, Franks NR, Levin SA.
Trends Ecol Evol. 2005 Aug;20(8):449-56. Epub 2005 Jun 2.
Consensus decision making in animals.
Conradt L, Roper TJ.
エコロジーの総説だけど、動物集団の意思決定、特に二つ以上の選択肢がある状態(conflict of interest)からどちらかにコンセンサスを得るような集団行動について、包括的にまとめられている。上のCouzinの研究は、そのコンセンサス意思決定に自己組織的な要素があることをモデルで示した研究、という位置づけになるか。
4/04/2008
カンファレンス・プレビュー
4月6日から9日まで、ジャネリア・ファームでスプリング・カンファレンスが開催され、参加する。
今回のエントリーはその予習が目的。(このエントリーの長さ、おそらく過去最長。)
カンファレンスのタイトルはNeural Circuits and Decision-Making in Rodents。
げっ歯類を対象に、神経回路、意思決定や記憶・学習の研究に取り組んでいる人たちが集まるようだ。
ジャネリアのカンファレンスを知らない方のために、自分が知っている範囲で少し説明すると:
春と秋、特定の研究テーマに関するカンファレンスがいくつか開催される。そのテーマの分野でトップクラス、ホットな研究者がジャネリアに招待される。その招待スピーカーに加え、抽選でポスドクや学生さんも参加できる。全体で50~70人くらいのカンファレンスになるのだろうか?細かい雰囲気までは不明。
ちなみに、ジャネリアのカンファレンス、交通費は自腹だけど、宿泊費・食費などはすべてタダ。うわさでは宿泊施設もすごいらしく&バーあり!そんなところに3泊ほどしながら、朝から晩までインテンスなスケジュールで科学三昧&呑んだくれ、という超魅力的なカンファレンスとなっている。
ちなみに、自分のいるNJ州からジャネリアまでは、車で4~5時間の距離。
---
と、前置きが長くなった。(と言いつつ、ここから相当に長いです、このエントリー。。。)
この会の詳細は多分クローズドだと思われるので、このエントリーでは、どんな人が招待されているか予習モードで調べてみる。(予習なら問題ないはず?)
ちなみに、いつも以上にまとまりがないです。。。
予習ということでご容赦を。。。
---
まずはオーガナイザー二人。
ジャネリアのAlla Karpova
この人はSvoboda研時代、MISTなる可逆的にシナプス伝達を抑制できるツールを開発している。MISTはハエのシビレに似ている。彼女の総説はこちら。
Curr Opin Neurobiol. 2007 Oct;17(5):581-6. Epub 2007 Nov 28.
Rapidly inducible, genetically targeted inactivation of neural and synaptic activity in vivo.
Tervo D, Karpova AY.
この総説では抑制ツールがまとめられている。図が非常にわかりやすくて良い。
ちなみに、DICE-Kのアイデアも少し記載されているな。これ以上はノーコメント。。。
二人目は外部オーガナイザー。Zach Mainen
有名。Sejnowski研で超良い仕事をして、理論から実験的な嗅覚研究の最前線へ進出。嗅覚系に転向してからは、同じく招待者の一人である内田さんとげっ歯類の意思決定課題を開発。今は、マルチ記録などを組み合わせながら精力的に研究を進めている。
嗅覚系研究に関する彼の総説はこちら。
Curr Opin Neurobiol. 2006 Aug;16(4):429-34. Epub 2006 Jul 5.
Behavioral analysis of olfactory coding and computation in rodents.
Mainen ZF.
洗練された行動課題を使って、嗅覚システムの情報処理を深く理解していこう、という趣旨の総説か。
---
続いて大御所第一弾として二人。
Trevor Robbins
超大御所。自分はげっ歯類やマーモセットの行動絡みの論文をいくつか読んだことがある。
PubMedで調べたら最近こんな論文(opinion)を出していた。
Trends Cogn Sci. 2008 Jan;12(1):31-40. Epub 2007 Dec 19.
Serotoninergic regulation of emotional and behavioural control processes.
Cools R, Roberts AC, Robbins TW.
セロトニンにまつわるパラドックス(セロトニンの伝達を抑える薬が抗不安薬で、セロトニンの伝達を亢進する薬が抗うつ薬だということ)を問題意識として、これまでのヒトのイメージングや動物の研究の情報をまとめて、そのパラドックスのなぞに迫ってるようだ。けど、Robbinsさんは、たくさんネタを持ってるだろうから、これはあまり関係ないかもな。。。
Peter Dayan
理論の大家。今回のトピックに関連する論文でよく引用される論文(総説)はこれか。
Science. 1997 Mar 14;275(5306):1593-9.
A neural substrate of prediction and reward.
Schultz W, Dayan P, Montague PR.
心理学的な導入部からドーパミン細胞の生理学的な振る舞い、そしていわゆるTDアルゴリズムと実際の実験データとの関係をまとめ、その時点での将来の課題についてまとめられている。
そういえばこの総説、修士のころジャーナルクラブで紹介したのを覚えている。いろいろ突っ込まれたおして、洗礼を受け、ほろ苦い記憶が残ってる総説でもある。。。罰という意味で逆の思い出か。。。
それからDayanといえば、ベイズ。例えば、こちら。
Neuron. 2005 May 19;46(4):681-92.
Uncertainty, neuromodulation, and attention.
Yu AJ, Dayan P.
この論文では、ベイズ的な学習・未来予測が脳で起こってるという発想で、そのプロセスの中で、アセチルコリンは期待される不確実さの情報、アドレナリンは期待してなかった不確実さの情報をそれぞれ運んでいる、というモデルを提唱しているようだ。
他ではポピュレーションコーディングがらみの話もしているし、ベイズ的なことが実際の神経系で具体的にどう起こっているか、という点にこだわりを持っている人、ととらえたら良いのだろうか。
Dayanの仕事は、銅谷先生のこれまでのお仕事、例えば最近書かれた総説ともリンクしそうだし、そちらも要チェックか。
Nat Neurosci. 2008 Apr;11(4):410-416.
Modulators of decision making.
Doya K.
強化学習の視点から、意思決定に関わる評価、行動選択、学習について理論的な側面がまずまとめられ、どんな脳内システム、特に神経修飾物質が関わるか、ということがまとめられているようだ。
---
次に、CSHL揃踏。
Tony Zador
うちのラボと仲の良いコンペティター(圧倒的にトニーラボが上だけど、、、)。
最近、PLoS Bioにスパースコードの論文を発表したけど(聴覚研究者が読むと、いろんなところにトゲがちりばめられていることがわかる。Wangが次の一手をどう打つか楽しみ?)、今回のカンファレンスでは別のトピックを話すだろう。
Carlos Brody
Hopfieldのお弟子さん?
Hopfieldといえばごく最近、連合記憶モデルでSudokuが解ける、という論文を出しているな(Sudokuを解くことそのものがポイントではないと思うが、彼もSudokuフリークなのだろうか。。。)。
それはともかく、BrodyはRomoとも仕事をしてきて次の論文を発表している。
Science. 2005 Feb 18;307(5712):1121-4.
Flexible control of mutual inhibition: a neural model of two-interval discrimination.
Machens CK, Romo R, Brody CD.
相互抑制をモチーフとして、アブストラクトなモデルで、ロモがやってきた体性感覚刺激の周波数弁別課題、特にその遅延期間と意思決定のフェーズを統合的に説明できるという話。確かにエレガントだけど、アブストラクトすぎて自分の頭ではもう一つピンとこない。。。最近はどんな仕事をしているのだろう。。。
マルチな人には、相互相関解析の論文でも有名か。
---
割と地味?、あるいは特定できなかった4人。
Howard Fields
この人は知らなかった。最近の論文を調べたら、こちら。
J Physiol. 2007 Nov 1;584(Pt 3):801-18. Epub 2007 Aug 30.
Cue-evoked encoding of movement planning and execution in the rat nucleus accumbens.
Taha SA, Nicola SM, Fields HL.
ラット側坐核からニューロン活動を記録したら、感覚刺激というより運動出力と関連した活動を示すニューロンがいたと報告しているようだ。
Shin-Chieh Lin
特定するのに苦労したけど(アジア人のデメリット)多分ニコレリス研の人。独立したのかは不明。
この人は、
J Neurophysiol. 2006 Dec;96(6):3209-19. Epub 2006 Aug 23.
Fast modulation of prefrontal cortex activity by basal forebrain noncholinergic neuronal ensembles.
Lin SC, Gervasoni D, Nicolelis MA.
という論文を報告している。こちらで紹介済み。この人はいろんなプロジェクトに関わっていそうな雰囲気だから、今回何を話すのかは不明。
Paul Philips
この人は特定できず。。。欧米人でもこういうケースもあるのか。。。
(予習になってない)
Peter Shizgal
この人は行動関連の人のようだ。最近の論文はこちら。
Behav Brain Res. 2008 Mar 17;188(1):227-32. Epub 2007 Nov 7.
Dopamine tone increases similarly during predictable and unpredictable administration of rewarding brain stimulation at short inter-train intervals.
Hernandez G, Rajabi H, Stewart J, Arvanitogiannis A, Shizgal P.
研究のロジックはこう:報酬のタイミングを予測できる場合とできない場合、その違いがもしドーパミン細胞の活動の違いとして反映されるなら、ドーパミン細胞のターゲットの場所でのドーパミン量が違うはず、もしくはその逆。そこで、脳内刺激(ICS)とマイクロダイアリシスを組み合わせて調べたところ、報酬のタイミングが予想できるかどうかは関係なく、どちらの条件でも同じような側坐核でのドーパミン量の上昇が見れた、と主張している。(立ち上がりが違うような気もしたり、採用した方法論の時間解像度が、問題意識に迫るのに適当だったのかは不明だけど。。。)
---
感覚寄りな二人。
Dima Rinberg
ゴキブリの神経細胞は流体力学を「知っている」、というセクシーな仕事でネイチャー論文を出し、マウス嗅覚系へ転向。現在は、ジャネリアのフェロー。経歴もセクシーやな。。。
嗅覚系の仕事としてはこちらがまず重要か。
Neuron. 2006 Aug 3;51(3):351-8.
Speed-accuracy tradeoff in olfaction.
Rinberg D, Koulakov A, Gelperin A.
急いては事を仕損じる、ではないが、じっくり時間をかけた方がパフォーマンスの精度は上がる、というのは経験的に知っている。けど、嗅覚刺激で意思決定をする場合もそうか、というのは実は最近まで論争があって、それに決着をつけたのではないかと思われる仕事。内田さんの仕事では操作できていなかったニオイのサンプリング時間というパラメーターも操作して、嗅覚系もやはり時間と精度の間にトレードオフが成り立つ、ということをマウスで明らかにした。
論争がなければ驚きではないわけだけど、この分野の文脈上、良い仕事になる。
さらに、マウス嗅覚系で脳状態依存的なスパースコーディングの話を同じ月に報告している。(なんと生産性の高い。)
J Neurosci. 2006 Aug 23;26(34):8857-65.
Sparse odor coding in awake behaving mice.
Rinberg D, Koulakov A, Gelperin A.
マウス嗅球mitral細胞のにおい選択性を覚醒中とKX麻酔中に調べて比較した、というこれまた面白い仕事。というか、目の付け所からキレを感じる。論文の書き方もうまい。
この論文では、覚醒中がよりスパースだ、という主張している。が、自分が誤解していなければ、彼の報告している自発発火の変化は主張と完全に矛盾している、、、エネルギー効率という意味では逆に悪くなってないかい?サンプリング・バイアスが非常に気になるところ。ちょっと時間があったら聞いてみよう。ちなみに、この人はジャネリアのフェロー。
Don Katz
Nicolelis研時代、味覚研究にマルチ記録を組み合わせ良い仕事をし(総説)、ブランダイズ大で独立。いまや、味覚系研究者の中では広く知られているのではないだろうか。コンスタントにJNS前後の論文を出していて生産性高し。最近の論文はこちら。
J Neurosci. 2008 Mar 12;28(11):2864-73.
Learning-related plasticity of temporal coding in simultaneously recorded amygdala-cortical ensembles.
Grossman SE, Fontanini A, Wieskopf JS, Katz DB.
味覚皮質と扁桃体から神経活動を同時計測し、ワンショット学習のCTA学習に関連して、その二つの領域の協調的活動が増強するというなかなか良い仕事を報告している。ZIPと組み合わせたらどうなるか知りたいところ。
---
モチベーションや目標指向的行動関連。
Yael Niv
この人はDayanのお弟子さん?
こんな論文(Opinion)を出していた。
Trends Cogn Sci. 2006 Aug;10(8):375-81. Epub 2006 Jul 13.
A normative perspective on motivation.
Niv Y, Joel D, Dayan P.
トピックはモチベーション。要旨を読んでも何を言いうてるかさっぱり。。。
と、避けたくなる文献だが、ちょっと重要そうなので、少し読んでみる。(読んで、書き方がかなり悪い、と思ったのは自分だけではない気がする。TICS読者には、これくらいどうって事ないのだろうか。。。それとも自分の知識不足なだけか。。。もう少し素人にもわかるように書いてもらわんと。。。)
モチベーションの効果、古くは二つ考えられていたらしい(デカルトにさかのぼるらしい)。第一に、directing effectと呼ばれる効果で、行動の目標(例えば、お金をゲットする、Aさんを助ける)を決める時に役立つ。第二に、energizing effectと呼ばれる効果で、行動を支える活力を生み出す時に役立つ。後者は、心理学者Hullの言ったgeneralized driveと近いらしい。
前者のdirecting effectとモチベーションの関係はいろいろ知られているそうなのだけど、後者については論争があるらしい。そこで、この論文では、上のモチベーションの効果二つを、今の研究の文脈でとらえなおそう、という提案。
まず、モチベーションは、行動した結果(outcome)からその効用(utility)への対応付けである、という標準的な見方に沿う。そして、directing effectは目標指向的行動(goal-directed behavior)に影響を及ぼし、energizing effectはルーチンワーク化した行動(habitual behavior)をドライブするもの、という説を展開している。
難しい。。。
つまりは、ルーチン化した行動のモチベーションはenergizing effectとリンクする、という考えなのだと思われる。無意識的なモチベーションがルーチンワークの文字通り原動力になる、とでも言ったら良いのか?その説をサポートする証拠はほとんどないらしいので、それを検証する方法も提案しているようだ。
これが、この文献のあらすじ。
この文献に関する基本的重要コンセプトを、自分なりにまとめる。
まずgoal-directed behavior。
このエントリーを通して、目標指向的行動ととりあえず訳した。訳になってない気もするが、英単語をそのまま訳すとそう間違った言葉ではないか。行動の目標が内面的に設定されている行動、とでも考えたら良いか。例は以下に出す。
その対極がhabitual behavior。習慣化した行動、ルーチンワーク。これはわかりやすいか。
何かを学習する時、前者から後者へ移行していく、ということは広く知られている。例えば、歯磨き。子供の頃、親にしつこく言われ「歯磨きしよう」という明確な目標、目的意識をもってやっていたことが、今は何も考えずに毎日やっている。研究の現場、例えば分子生物学のラボなら、エタチン。学部生、修士学生の時は、次はこうして、ああして、と目標を明確に設定しながらこなしていたことが、今日のランチは何を食べよう、などと全然他のことを考えながらでもできるようになる。
これらの例えが良いか知らないが、そういう明示的な目的・目標を設定して行っている行動(goal-directed behavior)から、いわゆるルーチンワーク化した行動へシフトする。その脳内プロセスを知ろう、というのが現代神経科学の大きな柱の一つではないかと思う。今回のカンファレンスを通して、このトピックはよく顔をだす。
そして、この手の話で度々出てくるキーワードはutility。
経済学で言われる「効用」という言葉に近いというかそのままなのだろう。何かアクションをして得られた結果の満足度とでも考えたら良いだろうか。抽象的な言葉だけど、おそらくそれほど間違ってないはず。(素人丸出しだけど)
目標指向的行動は効用に対して感度が高い、とこの論文の出だしにもある。例えば研究現場。新しい実験をした時、期待に見合ったデータが出てくれないと仮に実験そのものがうまくいっても、それはルーチンワーク化にはつながらない。なぜなら、逆に仮説どおりの結果がえられた時と、実験そのものができたというoutcomeは同じだけど、効用が低いから。一方、「エタチン」といったルーチンワーク化した「習慣化した行動」は、その行動結果の効用はあまり気にならない。
実際の研究では、reward devaluationという報酬量をさげてもその行動が続くか観察して、ルーチンワーク化したか区別するようである(誤解してるかも?)。研究者もそうか。初めての実験で一回目うまく行けば、それを続けてルーチンワーク化し、後に失敗が続いても、一回目の成功で味をしめてるから、失敗が苦にならず続ける?つまり、ルーチンワークでは、効用は関係ない。
さて、モチベーションとの関係に話を戻す。
目標指向的行動に関しては、この難しい実験をやってネイチャー論文を出す!、といった感じで、モチベーションとの関係は直感的にもわかりやすい。が、問題なのは、ルーチンワーク化した行動とモチベーションの関係。
で、Nivの文献では、効用お構いなしで行われていそうなルーチンワークを支えているのが、モチベーションのenergizing effectだ、ということを言いたいのであろう。
これはヒトを含め、いろんな動物行動を理解する上でムチャクチャ大事な問題な気がする。このネタを話すかどうか知らんが、このNivさん、要チェック。
Peter Holland
知らなかったけど、有名っぽい。たくさん論文出している雰囲気だし。
総説はこちら。
Curr Opin Neurobiol. 2004 Apr;14(2):148-55.
Amygdala-frontal interactions and reward expectancy.
Holland PC, Gallagher M.
扁桃体(特に基底外側核)と前頭前野(特に眼窩前頭皮質、orbitofrontal cortex)の相互作用、特に目標指向的行動を生み出す報酬期待に関する処理についてまとめてあるようだ。こちらのエントリーとも関連があるか?
---
Doug Nitz
例えばこちらを報告している。
J Neurosci. 2007 Mar 28;27(13):3548-59.
Adaptation of prefrontal cortical firing patterns and their fidelity to changes in action-reward contingencies.
Kargo WJ, Szatmary B, Nitz DA.
マウス前頭前野内側部から神経活動を計測して、アクションの結果とそれに基づくアップデートに関連する活動を報告している。(こちらで紹介済み)
ノイズ相関の問題にも取り組むなど、マルチ記録ならではのなかなか良い仕事。
Simon Killcross
J Neurosci. 2007 Aug 1;27(31):8181-3.
Dopaminergic mechanisms in actions and habits.
Wickens JR, Horvitz JC, Costa RM, Killcross S.
以下に登場するCostaと一緒に書いたミニ総説。
ドーパミン細胞は学習初期には関わるけど、後期にはその関わりが減る、ということと、目標指向的行動からその行動が習慣化するのと平行なことだ、という主張を、皮質―線条体の回路に注目しながら展開しているようだ。この人自身は、薬理実験を絡めた行動実験をやっているようだ。
Matthew Roesch
Schoenbaumのお弟子さんか。良い論文をたくさん出している。最近の良い論文はこちら。
Nat Neurosci. 2007 Dec;10(12):1615-24. Epub 2007 Nov 18.
Dopamine neurons encode the better option in rats deciding between differently delayed or sized rewards.
Roesch MR, Calu DJ, Schoenbaum G.
これはドーパミン細胞と強化学習という点でmust readな論文(たぶん)。なので、少し詳しく。
この論文では、ラットを対象に、VTA(ventral tegmental area)というドーパミン細胞がいるところからニューロン活動を計測したら、サルで報告されていたように、予測誤差を運んでいるような振る舞いをすることがわかった。これだけなら、JNSかJNPどまり。
この論文がホントに面白いのは、その一年前Morrisらの論文で報告されたサルのドーパミン細胞とは違う振る舞いをすることを見つけた点。
つまり、論争勃発。ラットとサルのガチンコ。
まず、ドーパミン細胞が関わる強化学習のアルゴリズムとして3つ考えがあるらしい。V learning, Q learning, SARSA。それぞれのアルゴリズムを、誤解を恐れずに、偉そうに説明してみる。(この論文を読むまで知らんかったけど。。。)
まずV learningはvalueのV。ドーパミン細胞は、選択肢の平均的な「価値」を運ぶ、という考え。例えば、5個の報酬、1個の報酬が得られるという選択肢を与えられたら、その平均3、という活動をドーパミン細胞がするという考え。
二つ目のQ learningは、動物の行動出力ではなく、ベストな選択肢の価値を常に反映したような活動をする、という超クレバーなアルゴリズム。上の例なら、常に5、という活動をする。仮に動物が1の選択をする場合でも5。(最大価値に関する文脈情報を運んでいる、という感じ?)
最後のSARSAは、state-action-reward-state-actionの略。ひどい名前だが、そういうジャーゴンだから仕方ない。これは、動物の行動出力に結びつく意思決定確率を反映した活動をする、というアルゴリズム。上の例で、もし動物が5:1の比でオプションを選ぶなら、1という活動をしたら確かに1を選び、5という活動をしたら5を選ぶ、という感じ。つまり、ドーパミン細胞の活動を見たら、サルがどっちを選ぶかわかってしまう、という話。
Morrisらの研究ではSARSAというアルゴリズムが予測するように、ドーパミン細胞はサルの意思決定確率を反映したような振る舞いを示す、と報告。一方、Roeschらの研究では、Q learningをしていそうだ、という主張をしている。(逆に言えば、V learningの可能性は消えた)
Roeschの論文のdiscussionは濃くて勉強になった。
そのdiscussionで、両者の食い違いの理由をいくつか挙げている。が、最も説得力がありそうなのは、過学習の問題。これは、Morrisらの論文に対するNivらの書いたNews & Views、その最後で、するどい突っ込みをいれていたことと同じ。
つまり、Morrisらの論文では、記録中、サルは「学習」する必要はなく(すでに半年など長期間かけて学習したことをやるだけだから)、ドーパミン細胞が運んでいる信号は単なる副産物的なものである可能性があって、ドーパミン細胞が強化学習中どんなアルゴリズムに沿って活動しているか、実は問えていない、ということ。
一方、Roeschの論文では、常に課題がブロックとして変化するように設定していて、「アップデート」が要求される。(ラットの課題としては非常に洗練されているし説得力もある)
それから、VTAと黒質の違いもあるかも?とも考察している。
確かにMorrisたちは黒質緻密部(SNc)から記録しているようだ。一方、Roeschの論文では黒質からは2個しか記録できなかったようで、サンプルしたほとんどのドーパミン細胞がVTAから。ハッピーエンドとしては、単に記録しているドーパミン細胞が違っただけ、というオチ。が、とにかくこの問題は次の論文へ持ち越し。
ちなみに、両者の神経核の解剖が面白い。VTAは背側線条体、辺縁系へ出力(新皮質も含まれている気もする)。黒質は腹側線条体といった、上で言うところのルーチンワーク系?へ出力。いろいろ仮説ができそうである。。。
ただし、このRoeschらの論文のドーパミン細胞の分類法、ちょっと気になる。
彼らの言うドーパミン細胞は常にスパイクのSN比が悪いとすると、薬を投与した後の変化は、実は電極ドリフトでも説明できるような気もする。。。ノイズに埋没する確率が増えて検出スパイク数が激減という解釈。薬の効果が見えてしばらくしたら、発火率がリカバーする、ということも言えないとロジカルに弱い。(というか、同じリファレンスのとり方をしているのに、スパイクの上下が反転しているのはかなりあやしい。おそらく電極と細胞の距離が細胞種の分類にかなり効いている。とするとこの論文の分類法。。。)
究極的には、intra, juxsta, あるいはイメージングでしっかり検証しないといけないのだろう。とすると、サルの話と折り合いをつけて決着するのか?という不安もある。。。ヒトのイメージングでVTAとSNcを区別できるのだろうか?もしできるなら、それが一番手っ取り早いか?
とにかく、この話は以下のSchoenbaum自身のトークと合わせて、今回の一つのトピックになるやもしれん。
---
Mark Walton
Cogn Affect Behav Neurosci. 2007 Dec;7(4):413-22.
Probing human and monkey anterior cingulate cortex in variable environments.
Walton ME, Mars RB.
マカクのACC(anterior cingulate cortex)研究についての総説。ACCは、今おかれている文脈から次の行動を選択するような状況で、得られた結果の情報を解釈するのに重要だ、と主張している。なんだかようわからん。。。今回の面子の中では異色な気もするけど、上のNitzの話とも近いし、種を超えたACC、あるいは前頭前野内側部の機能を議論するのに良いスピーカーなのかも?
Adam Kepecs
Mainenや内田さんと良い仕事をしている。もともとは理論系の人なのか?最近の論文はこちら。
J Neurophysiol. 2007 Jul;98(1):205-13. Epub 2007 Apr 25.
Rapid and precise control of sniffing during olfactory discrimination in rats.
Kepecs A, Uchida N, Mainen ZF.
行動論文。ラットが鼻をくんくんとやるsniffingと、におい弁別能力や行動パフォーマンスとの関係を詳しく解析している。以下で紹介する内田さんが筆頭著者の総説との絡みで、しっかりsiniffingをモニターして行動との関係を調べよう、というモチベーションの論文なのだろう。
Randy Gallistel
この人も知らなかったけど、我がラトガーズ大の人のようだ。キャンパス違うけど。。。
Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Sep 7;101(36):13124-31. Epub 2004 Aug 26.
The learning curve: implications of a quantitative analysis.
Gallistel CR, Fairhurst S, Balsam P.
学習曲線にまつわる話。徐々に変化が鈍りながら、上昇していく学習曲線は、グループ平均によるアーティファクトで、個々のケースを見ると、いわゆるシグモイド関数的に、一気に立ち上がるものだ、と主張している。
---
ここから4人はマルチな人たち。
Loren Frank
海馬マルチ系。最近、
Neuron. 2008 Jan 24;57(2):303-13.
New experiences enhance coordinated neural activity in the hippocampus.
Cheng S, Frank LM.
という超クールな仕事を報告している。
学習初期にリップルのような短い高周波のオシレーションが発生し、その最中にニューロン集団の時間的協調活動が見れると報告している。おそらくこの活動はドーパミン細胞の活動ともリンクするやも知れないので、今回のキーパーソンの一人だな。要チェック。
Matt Wilson
最近の代表論文は逆リプレー?この人はunpublished dataを話さない人かと思っていたが、先日のコサインではそうではなかったらしい。なので、どんな話をするのか楽しみ。
逆リプレーなんかも、やはりドーパミン系とリンクがあるのだろうか?確かWilsonもそのNature論文でそんなことを言っていたような、いないような。。。忘れた。もしそうなら、Frankの仕事との関係も含め、注目すべき現象か。
David Redish
ちょうど最近、総説を出たところ。
Curr Opin Neurobiol. 2007 Dec;17(6):692-7. Epub 2008 Mar 4.
Integrating hippocampus and striatum in decision-making.
Johnson A, van der Meer MA, Redish AD.
意思決定をキーワードに、海馬と線条体を統合的に理解しようという超精力的な話(ざっくりまとめると)。これからげっ歯類でマルチをやる人は、避けて通れないトピックになる予感。意思決定や将来プランニングと海馬との関係は種を超えたトピックに発展するのではないだろうか。(勝手な予想)それにしても、線条体(特に腹側)と目標指向的行動との関係、今回読んだ文献でもいろんな立場があるような印象を受けた。もう一つすっきりせず。
Geoff Schoenbaum
この人も有名人。上で紹介したRoeschのボス。
Schoenbaumといったら眼窩前頭皮質、というのが自分の理解。
J Neurosci. 2007 Aug 1;27(31):8166-9.
What we know and do not know about the functions of the orbitofrontal cortex after 20 years of cross-species studies.
Murray EA, O'Doherty JP, Schoenbaum G.
という眼窩前頭皮質(orbitofrontal cortex、OFCと略)のミニ総説も出している。OFCが顔を出すパラダイムについてまとめ、次の20年の課題をまとめている。が、上の3人の文脈で考えるとVTAの話がメインと考えるべきか。だとすると、次の2,3年先の海馬周辺研究を占う上で、重要な4人ということになるな。。。海馬とVTAの同時計測を誰かやってないだろうか?ラット海馬研究の発想で、どんな時にドーパミン細胞が活動するのか、「とりあえず見てみる」というのは面白い気もする。なぜなら、Schoenbaumの研究も含め、これまでの研究はあまりにも「実験室環境」という側面が強くて、実際のリアルワールドでいつドーパミン細胞が活動するのか、必ずしも明確ではない気がするから。
---
XJ Wang
理論の大家。アルフォンソ先生の先生。意思決定関連で言うと最近こんな仕事を出していた。
http://wanglab.med.yale.edu/
Wong K, Huk AC, Shadlen MN and Wang X (2007)
Neural circuit dynamics underlying accumulation of time-varying evidence during perceptual decision making.
Front. Comput. Neurosci. 1:6. doi:10.3389/neuro.10/006.2007
LIPを想定した回帰性回路のシミュレーションと意思決定。2005年のShadlenたちの論文がモチベーションになっているようだけど、詳細はフォローしてません。どうでも良いけど、このFrontiersシリーズはPubMedに登録されないのだろうか?良い総説も掲載されてたりするのに。。。
---
Naoshige Uchida
自分がアメリカに来た直後、ホームパーティーにお邪魔させてもらったり、SFNでは自分のポスターまで足を運んでいただいたりと、何かとお世話になってます。数年前ハーバードでPIとして独立され、かなりあこがれ。。。
ちなみに、内田さんの総説はこちら。
Nat Rev Neurosci. 2006 Jun;7(6):485-91.
Seeing at a glance, smelling in a whiff: rapid forms of perceptual decision making.
Uchida N, Kepecs A, Mainen ZF.
主に心理物理を含めた行動データを視覚と嗅覚の実験を中心にまとめ、意思決定の過程、特に時間的な側面について考察されている。サッケードとスニッフィングをアナロジカルにとらえて、断続的なチャンク単位の感覚処理が行われる、という説は非常に面白い。神経オシレーションとの関係も興味があるところ。
このアナロジー、ヒゲもおそらく成り立ちそうだし、味覚も咀嚼のリズムなどがあるから良いかもしれない。時間スケールの問題はよくわからんが。では、聴覚はどうだろうか?音楽や言語という意味では確かにチャンクに分けられるだろう。ということは、音楽なり言語の「リズム」の進化的起源は?というのが問題になるな。けど、言語と音楽のチャンクは運動と連動して初めて出てきたものと考えると、「チャンク」のオリジンは結局は運動系にあると考えても良いか。では、音楽と言語を除いた運動と聴覚の連動はいかがなものか。。。耳たぶは動かなくても、聴覚は機能するしな。。。単に周波数という波がすでにチャンクと考えられなくもないが、高周波になるとそれは速過ぎて無理だな。。。壁にぶつかった。。。聴覚はかなり異質な感覚系ということになるのか。。。研究対象としては扱いやすいと思っていたけど。。。かなり脱線。。。
Adam Mar
候補者は挙がったが、特定できず。。。
---
再び、マルチな人二人。
Mark Andermann
Moore研の人。シリコンプローブを使って良い仕事をしている。
Nat Neurosci. 2006 Apr;9(4):543-51. Epub 2006 Mar 19.
A somatotopic map of vibrissa motion direction within a barrel column.
Andermann ML, Moore CI.
2x2テトロードタイプのシリコンプローブを使って、バレル皮質2/3層と4層からニューロン活動を記録(同時ではなく、シーケンシャルに)。そして、ヒゲ刺激に対する方向選択性が2/3層ではじめてでてきそうだ、ということを見つけている。(自分の記憶が正しければ、Sakmannたちのイメージングの研究結果と食い違ってるところもあった気がする。)細かいところだけど、テトロードを使ってるのにスパイクソーティングしてなさそうなところが玉に瑕。。。なので、この結果は複数のユニットのスパイクが混ざっている。とすると、解釈というかデータの見方が変わってくる気もする。。。
Mark Laubach
この人はNicolelis研出身で、インパクトのある仕事はこちら。マルチのスパイク解析に独立成分分析を使ったりと、解析に強そうな人。独立後に
Neuron. 2006 Dec 7;52(5):921-31.
Top-down control of motor cortex ensembles by dorsomedial prefrontal cortex.
Narayanan NS, Laubach M.
という良い仕事を報告している。こちらで紹介済み(良い具合でジャネリアの記事ネタもあり)。
内容的に大学院生の仕事っぽい(実験3部構成)から、大学院生第一号の仕事なのだろう。ちなみに、うちのラボにいるアーターが少しお世話になっていた。
この二人、確かにマルチな人だけど、データを取った後の一つ目の壁であるスパイクソーティングにどれくらいプロフェッショナルな経験と知識を持っているか不明。。。Laubachはニコレリス一派だったからスパイクソーティングの問題には目を瞑っている可能性がありそう。。。
---
Genetics系の若手二人。
Susana Lima
自分の知ってる人なら、Miesenbock研で有名な恐ろしい仕事をして、今トニーラボのポスドク。どんなプロジェクトに関わっているかも知ってる。。。こういう危険な人には逆らわず、仲良くなりたいところ。。。
Walter Lerchner
この人も多分若くて、以下に登場するAndersonのラボから
Neuron. 2007 Apr 5;54(1):35-49.
Reversible silencing of neuronal excitability in behaving mice by a genetically targeted, ivermectin-gated Cl- channel.
Lerchner W, Xiao C, Nashmi R, Slimko EM, van Trigt L, Lester HA, Anderson DJ.
という論文を報告した人。線虫が持っているClを通すグルタミン酸受容体を改変してivermectinなる分子で開閉するようにする。そして、その受容体をマウスの線条体に発現させ、腹腔内投与でivermectinを与えると、4時間から12時間で線条体の活動を抑えられ、4日後には元に戻る、ということを報告している。
同時期にNpHRの話が出たからちょっとかわいそうではあるが、このシステムもすごい系である。むしろこちらの方が普及しそうな気もする。なぜかというと、従来の破壊実験を比較的簡単に(?)細胞種特異的な破壊実験に応用できそうだから。
LEDで脳を照らさずとも注射を打つ要領で活動抑制できてしまう簡単さ。もちろん、キャリブレーションの問題は残るが、従来のムシモール実験のバージョン2.0として超魅力的なシステムな気がする。さらなる工夫次第で、数箇所の抑制を組み合わせることも将来可能になる気もする。(と書いてはみたが、最近の総説などを読むと、いろいろ難題を抱えていそうか。。。)
けど、NpHRといい、Clが細胞内に流入しまくるとどうなるのか、その副作用がちょっと気になるところ。自分が知る限りNpHRの続報はまだ出てないし、副作用のチェックがいろんなラボで行われているのだろうか?
ところで、最近報告されたPALも相当にやばいな。あとはtwo-photonで操作できるケミカルかタンパク質の登場を待つばかり?というか、ケミストリーの記述にもついていけるように、勉強だけはしないといけないなぁと思う今日この頃。論文すら理解できなくなりそう。。。神経科学、心理学、数学・物理系、そして化学。。。意思決定の研究するなら、経済学の一部もか?必要な情報を光で脳に高速インストールできるようなツールを誰かに開発して欲しいと願う今日この頃。。。
---
線条体がらみの二人。
Bernard Balleine
この人はラットをモデルに、前頭前野内側部と背側線条体を中心に意思決定と目標指向的な行動からそれが習慣化する過程について研究しているようだ。今回目を通した文献でよく引用される論文を書いているようだし、有名なのだろう。上のNivさんとも関連が強そうでキーパーソンの一人か。
最近で言えば、
J Neurosci. 2007 Aug 1;27(31):8161-5.
The role of the dorsal striatum in reward and decision-making.
Balleine BW, Delgado MR, Hikosaka O.
というミニ総説を彦坂先生と出している。背側線条体が意思決定に直接関わって、しかも種を越えた共通性がありそうだ、という議論を展開している。
Rui Costa
この人もニコレリスのお弟子さん。(確認できただけで今回4人もニコレリスの弟子がいる。ニコレリスは教育者としても一流のようだ。)ちなみに、この人の研究は、上で紹介したKillcrossさんのところで紹介したミニレビューでも名を連ねている。
ニコレリス研では、
Neuron. 2006 Oct 19;52(2):359-69.
Rapid alterations in corticostriatal ensemble coordination during acute dopamine-dependent motor dysfunction.
Costa RM, Lin SC, Sotnikova TD, Cyr M, Gainetdinov RR, Caron MG, Nicolelis MA.
という仕事をしている。ポイントは、線条体へのドーパミンは、皮質―線条体の協調的活動に重要、ということ。
研究では、ドーパミントランスポーターを欠損させたマウスの背側線条体と一次運動野からマルチ記録をしている。ドーパミンが過剰なhyperdopaminergiaから、AMPTなるドーパミンを欠失させるドラッグを投与して、akinesiaにした時の発火頻度と時間的な協調性の変化を調べている。
どちらの状態も発火頻度という点では同じだけども(遷移過程で一過的に発火頻度が上昇する、というのが非常に面白い。おそらくホメオスタシス的なことがシステムレベルで起こってるのではないか?)、協調性という点では違っていたらしい。hyperkinesiaでは非同期、akinesiaでは同期が上昇。ドーパミンは皮質―線条体の同期を妨げる方向に効いていると単純に解釈したらいいのか?パーキンソン病とDBSとの関係などがどうかよくわからないが、なかなか面白い。
---
ここからはスーパースターのオンパレード。
Gyorgy Buzsaki
我がCMBNから、ギューリー先生。
間違いなくunpublished dataを話すだろう。
ネタは先日のシンポジウムと同じか。
David Anderson
Axelのお弟子さん?この人の仕事はフォローしてないけど、ハエのgeneticsを使ってinnate behaviorのシステム研究をしている人、というのが自分の理解。けど、上のivermectinの系はマウスでやってるし、とにかくgeneticsを使ってシステム研究してやろう、という人なのだろう。ちなみに、最近のハエの論文はこちら。
Curr Biol. 2007 May 15;17(10):905-8.
Light activation of an innate olfactory avoidance response in Drosophila.
Suh GS, Ben-Tabou de Leon S, Tanimoto H, Fiala A, Benzer S, Anderson DJ.
GAL4システムでChR2をab1cニューロンに発現させ、「バチバチ」やって、ハエの逃避行動を再現している。謝辞でNadasdy(ブザキ研出身)にラスターの描き方を手伝ってもらった、とあるから、神経生理学はど素人なのだろうか。。。(細かいツッコミ)
Karl Deisseroth
「神経科学業界の山中先生」とでも言ったら良いか。
きっとおそろしいunpublishedネタを話してくれるのだろう。
聞きたいような、聞きたくないような。。。
Karel Svoboda
今回のカンファレンスの文脈でどんなネタをトークするのか、予測不能。シナプス可塑性の話はちょっとピントがずれそうだから、in vivoのChR2ネタの続報か?AndersonからSvobodaまでは光まくりそうだな。。。バチバチ。
David Tank
この人もたくさんネタをストックしてそう。
個人的にはこちらの続報を聞きたいところ。
以上。ふー。。。
(もしもここまで読まれた方がいらしたら、ホントお疲れ様でした。。。)
---
何を学ぶ?
豪華かつ充実な顔ぶれ。最後の5人は、意思決定が絡まなくてもヤバイ人たち。。。ギューリー先生は別次元でもヤバイか。。。
こうしてみると、ポスドククラスの若手からテニュアトラックの中堅、そしてベテランから大御所まで、非常にバランスが取れている。面子を見て思ったが、理論から実験の最前線へ、あるいは分子生物学からシステム研究へ進出している人たちが確実に頭角を現しているなぁという印象を受ける。マルチな人の層の厚さもさすが米国。あと、こういうミニ学会で、カルテル的なコミュニティーが形成されるのだろうなぁという気もするようなしないような。。。大人の世界か。こういう壁はウェブが発達しても取り除けない壁のような気がする。う~ん、いろいろ考えさせられる。。。
ただし、面子は確かにすごいけど、回路という意味ではちょっと物足りない気もしないでもない。(おいおい。。。)genetics系の人と、バリバリシステムな人とのギャップをかなり感じる。例えば、スライス実験で意思決定の問題に迫るなんてぶっ飛んだ研究はできないだろうか?意思決定を、二つの状態のうちどちらかへ遷移する過程、ととらえることができるなら、in vitroの系へ落とせる気もする。アブストラクトなレベル、あるいはメカニズムを考える上で、そういう研究から学べることは多そう。
逆に言えば、回路の問題と意思決定の問題の融合というのは、安易な発想かもしれないが、ごくごく近い将来、げっ歯類ならではの研究トピックになるやもしれない。コアなツールはかなり揃ってきた気もするし。そのあたりを含め今後の方向を模索するのも、今回の趣旨の一つなのかもしれない。
とにかく、げっ歯類で、これから実験方法論にこだわりを持ち、さらには理論も絡められるものなら絡め、できるだけ良い行動系でDecision-Makingなどの認知機能の研究をしたい、という場合にはかなり魅力的なカンファレンスと予想される。自分の目指したい方向もこちらなので(こう見えても)、ちょっと時間をかけて、つぶやきモード爆裂で、予習してみた。
予習をやってみて、招待された人がなぜ招待されたのか、その意図が自分なりに汲み取れて、招待者同士のリンクもちょっと見えて、すでに交通費分はもとを取れた気もする。
ちなみに、自分はポスター発表をする。自分の発表内容、かなり浮くな。。。テクニカルな質問が多いのか、それとも優秀な人が多そうだから、やはり鋭いツッコミをどんどん受けてタジタジになるのか、楽しみではある。
とにかく、たくさん知り合いができるよう、気合をいれて発表したります!
職探しに役立つコネ作りになるやもしれんな。。。(結局これ)
4/01/2008
簡単、記憶力アップ法!?:BrainPrime、脳科学発インターネットビジネス
*追記&注意:このエントリーはエイプリル・フールのネタですので、ご注意下さい。
最近、脳機能を高める「ドラッグ」の是非がしばしば話題になる。例えば、ドラッグで脳機能を高めて入試に臨む人が出てくると、ドラッグを使用していない人と比べて不公平。スポーツで言う、いわゆるドーピング問題と同じ倫理問題を生む。
実は、今日報告された論文によると、わざわざドラッグを使わなくても、簡単な方法で頭が良くなる(記憶力がアップする)ことがわかった。さらに、それを新しいビジネスモデルとして応用するらしい。
---
その頭を良くする方法では、「サブリミナル効果」を利用する。
サブリミナル効果というのは、「プライミング(priming)」としても知られている。有名な話は、映画上映中に「Drink Coke」という映像を意識にのぼらないくらい瞬間的に流すと、映画終了後にコーラを飲む人が増えた、という話がある。(*この逸話は、後にウソだということがわかっている)
報告された論文でも、このプライミングを利用する。
結論から先に言うと、きれい、あるいはイケ面の異性の顔写真でプライミングすると、記憶力がアップするようだ。
---
具体的にどうやって記憶力がアップしたか?
細かい話になるが、研究の方法を説明してみる。
この実験では、それぞれ30人から成る3つの学生グループに参加してもらう。そして、英単語の記憶力とプライミング効果との関係を調べている。
その3つのグループがやることは、スクリーンに次々に表示される100個の英単語を覚えること。表示される画面は次の通りだ。
グループ1(対照群)
英単語を0.5秒間ずつ表示していく。
グループ2(中立プライミング群)
英単語の表示直前に「プライミング刺激」を表示する。そのプライミング刺激には、人の顔写真を使う。中立というのは、同性の顔写真を使うという意味(オカマという意味ではない。。。)。参加した学生が女性なら、例えば女優の顔写真を使う。その顔写真を、10ミリ秒という瞬間映像として英単語の直前に表示する。
瞬間映像だから、誰の顔が表示されたかは意識にのぼらない。
グループ3(ポジティブ・プライミング群)
基本的にグループ2と同じ。だけど、プライミング刺激として、異性の顔写真を瞬間的に映す。例えば、実験に参加した学生が男性なら、映画女優などの顔をプライミング刺激として使う。
例えば、ブリトニー・スピアーズの写真が表示されても、それは意識にはのぼらない。
---
さて、結果。
この映像による学習後、英単語をどれくらい覚えたかテストしたところ、成績は次の通りだった。(100点満点。グループ全体の平均値。)
グループ1 61点
グループ2 56点
グループ3 92点
つまり、異性の顔写真でプライミングすると、圧倒的に記憶力がアップすることがわかった。
さらに面白いのは、好みのタイプと記憶力アップとの関係。
実験では、事前アンケートで異性の顔のランキング付けをしてもらっている。そして、そのランキングとの関係を調べると、ランキングが高い顔でプライミングした単語ほど、覚えている確率が高いことがわかった。つまり、好みの顔でプライミングするほど、記憶力が良くなることになる。
---
この研究を行った研究者のインタビュー記事が、ニューヨークタイムズに掲載されていた。
その中で、異性の顔写真で成績が良くなったことについてのコメントが興味深い。
オーディエンスの前で何かパフォーマンスをすると、オーディエンスがいない時よりもパフォーマンスが良くなる「オーディエンス効果」というのが知られている。我々の研究結果は、社会的に意味のある刺激、しかも異性という進化的にも重要な刺激でプライミングして、オーディエンス効果を引き出せた、と解釈できる。
さらに、
もし解釈が正しいとすると、例えば、嗅覚が発達している動物でフェロモンのような刺激をプライミング刺激として使えば、同じような記憶力向上が期待できるかもしれない。なぜなら、フェロモンは多くの動物種で個体識別のための重要な社会的キューだからだ。今回の現象の進化的起源は、今後大きな課題の一つになるだろう。
とも。なかなかアカデミックなコメントである。
もう一つの重要課題は脳活動との関係。
ということで、この研究者は現在、プライミングに使った刺激が、意識にのぼる時、のぼらない時とで、脳活動がどのように違うのか?それが海馬などの記憶に関わる場所とどう関係があるのか?脳内報酬系のドーパミンとどう関係があるのか?といった疑問にMRIを使って調べているそうだ。
---
さらに、次のような興味深いコメントもしている。
これほど簡単な方法で記憶力が良くなることは非常に驚きであり、我々はこれを使ってビジネスも始める。
と話しており、「BrainPrime」なるインターネットサイトを近日中に公開するそうだ。そのサイトでは、
1.好きな俳優、女優の顔を選ぶ(4Uのような感じ?R指定)
2.覚えたい情報(例えば英単語)を入力、あるいは覚えたい画像をアップロードする
この2ステップだけで、この一連の「プライミング刺激+覚えたい情報」が映像として流れる仕組みになっているらしい。
この研究結果がもし本当だとすると、覚える効率が格段に上がる。例えば、明日試験だ、という場合、試験に出そうな重要キーワードを入力すれば、試験の点数が上がるかもしれない。
さらに面白いのは、一つだけスポンサーの企業名をプライミング刺激として表示するらしい。そうすることで、そのスポンサー企業の広告をクリックする割合が増え、それがこのウェブサイトの収入源になるとか。コーラの逸話に近い。
このBrainPrime、インターネット業界の新しいビジネスモデルになるとのことで、すでに特許を取得したらしい。サブリミナル効果を応用して、広告サイトへ誘導する技術全般の特許を押さえたそうだ。
---
それにしてもこのBrainPrime、2つの点で倫理的な問題を生みそうだ。
第一に、テレビなどでは禁じ手とされるサブリミナル効果をウェブの世界へ持ち込む点。
第二に、脳機能を高めるウェブサイトである点。
ドラッグのように、倫理的に問題になるのだろうか?一つの勉強法だし、なかなか線引きが難しいところではある。
今後、議論を巻き起こしそうだ。
---
ちなみにこの研究、ごく最近、サイエンスに報告された論文と発想が似ていたため(以下参照)、一流の科学雑誌には掲載されなかったようだ。この論文は、4月1日発売の科学雑誌ジャーナル・オブ・フロード・サイエンス(年一回発行)に掲載された。
---
文献
J Fraud Sci 2008 Apr 1; 4(1): 401
Positive social image unconsciously boosts memory performance.
Fool April.
Science. 2008 Mar 21;319(5870):1639.
Preparing and motivating behavior outside of awareness.
Aarts H, Custers R, Marien H.
(意識にのぼる)良い意味を持つ刺激が、意識にのぼらないプライミング刺激、しかもその内容によって効果が変わり、運動パフォーマンスがアップする、というホントの話。(ウソエントリーで「ホント」と書いても信用されないか!?)
3/16/2008
バーチャル脳ベータ版?
最近気になった論文、IzhikevichのPNAS論文。
ヒト脳のDTIデータを、thalamocorticalとcorticocortical connectionの情報、
MartinたちのネコV1の解剖データを、局所回路の情報、
ラットのスライス実験でわかったデータを、シナプス応答の情報、
として使って、ダウンサイズしたヴァーチャル脳(新皮質と視床)を作っている。さらに彼が考案したいわゆるIzhikevich modelで1M個のニューロン活動をシミュレーションしている。
そのために60個のプロセッサーをもつPCクラスターを使うという力技である。
そのPNAS論文では、図4からバーチャル脳を走らせた時の特徴的な結果を示している。面白いのは図5からか。
図5では、一発のスパイクの違いという初期条件が違っただけで後に大きな違いが出てしまうことを示し、
図6では、traveling waveを再現し、
図7ではさらに、resting stateを再現している。
図6に関連して、領野によって特定のオシレーション(ベータ)のおきやすさが違う現象は解剖情報だけで再現できた、という点は興味深い。
---
ただ、これら後半の図たちで新規性はないといえばない(もちろん、リアリスティックな大規模シミュレーションをした、という点は新しいけど)。しかも通常のpeer-reviewのプロセスを通さず、Edelmanの力でPNASに出しているようだ。
この論文、一見セクシーではあるけど、ツッコミどころ満載なシミュレーションな気がする。
例えば、
全領野の局所回路をV1で置き換えて良いのか?
細胞の数という点でも領野によって違うわけで、そういう解剖情報は無視して良いのか?
シナプス応答の点で考えると、例えば、HCNの特徴を入れなくても良いのか?
apical dendriteはともかく、basal dendriteこそ重要なんではないか?
そもそもヒト、ネコ、ラットをミックスして良いのか?
DTIやcanonical circuitでは記述できていない(であろう)弱い?結合は考慮に入れなくて良いのか?
などなどなど。。。
その辺は現時点では難しいだろうけど、テクニカルな点で一つ非常に気になることがある。
このバーチャル脳、オーバーフィッティング的なことが起こりまくっているのではないか?ということ。ダウンサイズして、固定パラメーターを使ったといっても、これだけ大規模なシミュレーションをしたら、そりゃ、何でもできるでしょ、という気がしないでもない。どうなんだろう?自分にはようわからん。。。
図5のカオス的な結果を受け、最近のBrechtのネイチャー論文をdiscussionで持ち出している。が、果たして同じ次元で考えて良いのか、単なる偶然の一致なのか、ちょっとわからない。オーバーフィッティング的なことが起こっているなら、ちょっとしたノイズに過剰に反応するというのは何となく想像できる。(Brechtの論文そのものがあやしいといえば、あやしくもあるか。。。3個のinterneuronの貢献度大だし、そいつらがgap junction作ってたら1個という主張はできないし。。。)もし同じかも?と議論をするなら、1個のFS細胞のスパイクを操作した時により大きな効果がみれるかどうか興味があるところ。
このオーバーフィッティング(かもしれない)問題、モデリングに詳しい専門家が見たらどうなのだろう?単なる自分の知識不足による勘違いなのか?supplementをざっと見た感じ、そのあたりに関するコメントはないと理解した。
こういうモデリングでクロスバリデーション的なことはできるだろうか?この場合のクロスバリデーションはいったい何か?
Izhikevichのことだからそんなことは十分認識していて、とりあえず作ってから問題をデバッグして、バージョンアップをはかっていこう、という超楽観主義的発想なのかもしれない。彼のウェブには将来の見通し的な情報もある。
やはり、気になるのは、このシミュレーションから何を予言できるか?ということ。その予言を実験的に検証していくことが、この場合の「クロスバリデーション」になるのかもしれない。その意味では、この論文では予言はないと理解したので、とりあえずベータ版を作ってみました、というお披露目論文と理解したら良いのだろう。
今回のシミュレーションは睡眠状態だとして、ここから脳状態をどう変化させて、よりリアルな意識下の脳に近づけていくか?どう感覚刺激を入れて、運動出力なり、意思決定的な情報をディコードするか?
例えば、バーチャル脳ではxxxxができないとNG、といった「バーチャル脳」の必要条件を考えていく上で良い叩き台になるのかもしれない。
それにしてもこのIzhikevichという人、scholarpediaといい、出版前の本全文をPDFで公開するとか(出版後の今はさすがに公開していない)、やることがぶっ飛んでいる。。。ヤバイ研究者の一人。
文献
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Mar 4;105(9):3593-8. Epub 2008 Feb 21.
Large-scale model of mammalian thalamocortical systems.
Izhikevich EM, Edelman GM.
Izhikevichの本
3/15/2008
A Day of Memory at NYU
というシンポジウムが今週開催され、終日参加してきた。雰囲気だけでも伝われば、と思う。
このシンポジウムは4つのセッションから構成され、分子、シナプス、回路、システム(含心理学)という幅広い内容を扱っていた。テーマは、タイトルにあるようにMemory。
ちなみに、カンデル大先生も朝一から来ていて、ほとんどのスピーカーに対して質問をぶつけていた。
---
では、セッション1。
このセッションは、シナプスレベルの話。非常に濃かった。
Steven A Siegelbaum (Columbia Univ)
ITDPを提唱した論文を中心にトーク。彼の頭のキレ具合が伝わるすばらしいプレゼンで、研究内容も面白かった。
Adam Carter (NYU)
この人は知らなかった。two-photonを使ったシナプス応答の研究で良い論文を出しているようだ。例えば、こちら。若いので、NYUでPI職を得たばかりなのかもしれない。
Larry Abbott (Columbia Univ)
unpublished dataをトーク。
---
セッション2は分子レベルの話。目玉はSacktor。
Todd C Sacktor (SUNY Downstate Medical Center)
「記憶消し物質ZIP」で今や超有名人。
PKMzetaは、記憶関連のキー分子として確立した感を受ける。(彼らの研究は、こちらのエントリーで少し紹介してます。)Sacktor本人をはじめて見たけど、アメリカンな体型で甲高い声が特徴的だった(雰囲気だけでも。。。)
Karim Nader (McGill Univ)
LeDoux研時代こちらのネイチャー論文を発表している。re-consolidation関連のdebateの火付け役ではないかと思う。トーク内容は。。。カンデル先生ですら質問しなかったので、かなり・・・。けど、独特のオーラを持ってる人だった(フォロー)。
Cristina M Alberini (Mount Sinai Medical Center)
タンパク合成とconsolidation, re-consolidation関連の研究をされている女性。PubMedで検索したら、総説がこれから出るようだ。
---
昼休み。
呑み友達でもある理論家の日本人といろいろ話をした。
---
セッション3はシステムレベルの話。
前半は神経生理。後半はヒトの記憶。
Gyorgy Buzsaki (Rutgers)
ラットの神経生理。すばらしいトークだった(若干飛躍も感じられたが)。
それにしても、ギューリー先生は効果的なプレゼンの仕方を知っている。
Wendy A Suzuki (NYU)
サルの神経生理。4年前に発表された論文を中心にトーク。良いプレゼンだった。
Lila Davachi (NYU)
彼女の研究はフォローしてないけど、unpublished dataだったと思われる。
最近、Neuronに論文を出したばかりなのにすごい生産性だ。
ちなみに、この方きれいな女性です(若くは見えますが、実際は知りません。。。)。
Elizabeth Phelps (NYU)
この人は最近ネイチャー論文で楽観性に関することを報告した人でもあるけど、トピックは全くその逆。
動物の研究でわかった知見をヒトへ応用するという精力的な研究。
ちなみに、この方も女性。だけど、強面。。。(ネタもかましてましたが。。。)
---
セッション4はヒトのイメージング研究、その中でも記憶に関連しそうな研究、そしてバリバリの心理学。
Clayton Curtis (NYU)
ヒトのワーキングメモリの研究。ラボのホームページ。
Alex Martin (NIH)
視覚物体認識(object recognition)でMRIを絡めた研究。総説も出しているようだ。雰囲気からして有名人なのだろう。全然知らんかった。。。
Janet Metcalf (Columbia Univ)
この人も知らなかったけど、ググッて彼女のラボのページを調べたらメタ認知など面白い研究をしているようだ。トークでは、心理学から見た海馬の「モデル」を話してくれた。計算論という意味でのモデルをやってる人には不評だった。。。個人的には、「悪くない」とは思った。抽象度が高すぎるのもよくない。
Marcia K Johnson (Yale Univ)
欠席でトークなし。。。
ラボはこちら。
---
そして、セッション5。
Eric R Kandel (Columbia Univ)
他のスピーカーは20分という持ち時間だったけど、カンデル大先生は40分。
アメフラシの研究から局所タンパク合成を調べられるユニークな実験系の確立、そしてプリオン的な転写因子CPEBの話へ発展した経緯、そしてその後の発展について。途中Movshonをネタにしながら、すばらしいトークをしてくれた。(Movshonが所内対応的な下っ端として働いていた。。。)
wikipediaによると、カンデル先生は来年で80才。確かに見た目はそれくらいというのは伝わる。けど、研究内容、研究に対する情熱みたいなものには、一切衰えを感じられなかった。ノーベル賞取るような人はホントに次元が違う。ちなみに、質疑応答も盛り上がり、ギューリー先生の噛み付きにも一切動じず。。。むしろ噛み付き返し?ていた。。。
良いもん見れました。。。
---
さて、何を学ぶ?
いろいろ考えさせられることがあった。
やはり思うのは、「ブリッジ」とでも言うのだろうか、異なる時空間スケールで起こる現象たちをどう自分の頭で消化して、クリティカルな問題に取り組んだら良いのか?ということ。特に時間スケールの問題が、他の神経系のトピックに比べ特にやっかいな気がする。記憶だから仕方がないのだろうけど、その問題に取り組んだ研究というのはない気がする。どうなのだろう?少なくとも現時点では実験的にできないことを可能にしないといけない諸問題がいろいろありそうだ。
もう一つ、言葉の定義。
科学をする以上言葉で表現することは大事なのだけども、神経科学の言葉で、しっかり言葉を再定義しないといけない気がする。例えば、今回議論になったconsolidationとreconsolidation。何それ?という気が素人からしたらした。。。おそらく専門家に聞いても、微妙に定義の仕方が違ったりするだろうから、新規参入しようという人には何ともおかしなジャーゴンに見えるのではないだろうか。むしろ、新しいコンセプトのタネが、こういうおかしなところに眠っているのだろう。
それにしても、復習して改めて思ったけど、どのスピーカーも一流の研究者ばかりで、濃いシンポジウムだった。NYC地区が大半、というのがまた驚き。。。
2/17/2008
研究者とニューロンの“生きるすべ”
大学院生やポスドクの研究者としての将来は、今やっている研究が世にどれくらいインパクトを与えるかで決まる。例えば、研究結果を論文という形で科学雑誌に「アウトプット」する。そして、他の研究者たちがその論文をたくさん引用してくれそうなら、つまり、ネイチャーやサイエンスといった「インパクトファクター」の高い雑誌に論文を出せれば、准教授や教授などの「テニュア職」を得て生き残るための道が拓ける。
仮にテニュア職に就いても、自分の研究分野で確固とした地位を築き上げるには、引き続き他の研究者にインパクトを与え続ける必要がある。もちろん、一旦生き残れることが決まったので、インパクトを与えなくても良い。ただし、他の研究者とのネットワークは希薄になる。
ここで、研究者への「インプット」は、過去の文献や自分の研究データ、さらには他の研究者からの口コミ情報。「アウトプット」は論文となる。他の研究者とのネットワークを拡張・維持するには、アウトプットの結果他の研究者から返ってくる良いフィードバックが重要となる。良いネットワークを構築できれば、入ってくるインプットも増える。
とにかく、より良い研究環境で生き残るためには、インプットの結果をアウトプットして、相互作用している相手にインパクトを与え続ける必要がある。
---
脳も同じではないか?
つまり、ニューロンは、他のニューロンからたくさん入力を受けて、活動電位・スパイクとしてアウトプットを出す。そうして他のニューロンたちと相互作用する。そして、その出力先のニューロンから良いフィードバックをもらえれば、神経回路内での自分の立場を確固としたものにできる。
ニューロンの“生きるすべ”は研究者のそれに似ているかもしれない。
というのが、うちのボスが最近出した論文の主張である。
その論文は、彼の仮説を世に問う論文。なので、その仮説が本当かどうかは実験的に検証される必要がある。
その仮説は、論文での言葉を借りれば次の通り:
strengthening of a neuron’s output synapses stabilizes recent changes in the same neuron’s inputs.
今、ニューロンAがいたとする。
まず、そのニューロンAの出力側のシナプスが強まる。すると、そのニューロンAの「入力側」のシナプスのうち、最近変化したものが安定化する。換言すると、ニューロンAの神経終末の強化が同一ニューロン内の最近変化したシナプスの安定化に寄与する。
ちょっとわかりにくいか。
論文中の図1にそのコンセプトがまとめられている。その図がわかれば、その論文で言わんとするところがわかる。
まず、入力側のシナプスが変化して、ニューロンAのスパイクのパターンが変化する。
その結果、もし出力側(神経終末)のシナプスが強化されれば、「逆行性シグナル(retroaxonal signal)」が軸索(axon)に沿って細胞体・樹状突起へ伝わる。そして、変化したばかりの入力側のシナプスが安定化される。
一方、もし出力側のシナプスが強化されなければ、逆行性シグナルは伝わらず、変化した入力側のシナプスは元に戻る。
アウトプット側の変化がインプット側の変化の生き残りに重要だ、ということがポイントになる。
「逆行性シグナル」の「逆行性」。通常、電気信号は細胞体側から神経終末へ伝わる。その逆向きに伝わるシグナルを考えているから「逆行性」という言葉が使われる。
そして、想定している「逆行性シグナル」は、シナプス間を伝わるものでも、電気的なものが軸索を伝わるものではなく、もっと時間的には遅いであろう「シグナル」のようだ。例えば、「神経栄養因子」が引き金となって軸索から細胞体へ伝わるシグナル伝達などである。
この仮説は、いわゆる人工知能というか人工ニューラルネットの研究、そして、実験的な神経科学、特に軸索側での化学反応とシナプス可塑性の関係を調べた研究にインスパイアされているようだ。
この仮説のもう一つのポイントは、「逆行性シグナル」は教師信号的なものではなく、すでに変化したシナプスの「選択圧」的な役割を果たす、という点か。つまり、最近変化したシナプスが生き残るかどうか、そのフィットネスは、逆行性シグナルが軸索→細胞体→樹状突起へすぐに伝わってくるかによる、ということ。
---
この論文で扱っている内容は広い。
まずヘッブ則の応用の失敗と「バックプロパゲーション」を取り入れた人工ニューラルネットの成功について紹介。そして、その「バックプロパゲーション」と神経系での学習との関係はどうか?と考えを膨らませている。
そして、仮説のエッセンスを紹介。
続いて、どんなものが逆行性シグナルとして考えられるか?そして、それがシナプスの安定化にどう働くか?過去の実験事実を紹介しながら考察している。そして、後半ではシステムレベルの話として、海馬の「場所細胞」の研究との整合性を議論し、さらに大脳新皮質へも応用可能ではないか、と話を展開している。
---
ちなみにボスがこの仮説を言い出したのは、2年くらい前だろうか。ラボ・ミーティングで、今こんなん考えてんやけど・・・という感じでラボメンバーの意見を聞いてきた。そして、ヨーロッパの学会でポスター発表したり、論文の謝辞にもあるように、同じビル内のブザキやパレなどに原稿を読んでもらって世に出たことになる。
自分が思うに、彼の仮説のポイントは、1つのシナプスというより、1個のニューロンに注目して可塑性を考えよう、というところなのではないかと思われる。これまでの可塑性の分子レベルの研究は、自分の理解では、
シナプス・樹状突起-細胞体
神経終末-細胞体
プレ-ポストのシナプス
といった具合で「1個のニューロン」という視点は少なかったのではないか?と思われる。
コロンブスの卵的と言われればそれまでだが、なかなか面白い発想の転換の気がする。そして、シナプスレベルの話をニューロンレベル、回路、システムレベルへ拡張して「学習」を考えよう、ということになるのではないかと思われる。
(***彼から直接聞いたわけではないので、私の勝手な解釈です。オーバーフィッティング気味。)
---
ちなみに、このエントリーの冒頭のアナロジー、実はこの論文の結論部分をそのまま使った。(「ケン節」炸裂な締めくくりである)
さて、彼は仮説を提示することで、可塑性研究の分野に触手を伸ばした。さて、どんなフィードバックを受けて、彼の科学者としての位置づけが変化するか、今後に期待である。
*****
彼の仮説に興味を持たれた方は、ぜひ原文をお読み下さい。
このエントリーは、あくまで私が理解した範囲でしか書けていませんので、誤解もあると思われます。
---
参考文献
Trends Neurosci. 2008 Feb 4 [Epub ahead of print]
Stability of the fittest: organizing learning through retroaxonal signals.
Harris KD.
今回紹介した論文。Opinionとして数ヶ月以内に掲載されるようだ。
人工ニューラルネットについて
Nat Biotechnol. 2008 Feb;26(2):195-7.
What are artificial neural networks?
Krogh A.
良いタイミングで人工ニューラルネットに関する良い入門文献が出ていた。ムチャクチャ読み易い。
これを読むと、論文の導入部のポイントが明瞭になると思われる。
おまけ。
Nat Cell Biol. 2008 Feb;10(2):149-59. Epub 2008 Jan 13.
Intra-axonal translation and retrograde trafficking of CREB promotes neuronal survival.
Cox LJ, Hengst U, Gurskaya NG, Lukyanov KA, Jaffrey SR.
ごく最近出た論文。
神経終末にあるCREBのmRNAがニューロンの生存に必要、という話。つまり、CREBが軸索内でローカルに翻訳されて、それが核での遺伝子発現を誘導し、細胞の生存に寄与する、ということを明らかにしている。
ボスの仮説の文脈で考えるとさらに面白い。
例えば、核内で軸索側と樹状突起側のシグナルの同期検出的なことが起これば、仮説にかなり近い気がする。。。先日、この論文を見つけてボスに話したら「もうin pressになったから、引用できんな。。。」と嘆いていた。
2/02/2008
知性と感情は別モノか?
Nature Review Neuroscienceに面白い総説が出ていて、それについて簡単に。
その文献情報はこちら。
Nat Rev Neurosci. 2008 Feb;9(2):148-58.
On the relationship between emotion and cognition.
Pessoa L.
このエントリーのタイトルで「知性」というのは、いわゆる「前頭葉機能」。文献のタイトルではcognition(認知)という言葉が使われている。以下「認知機能」と呼ぶことにする。例えば、ワーキングメモリ、注意といった類の脳機能を指している。
一方、感情と情動は専門的には区別されるが、ここでは積極的には区別せず、英語で言うところのemotionを指すことにする。
---
さてこの総説。一言で言えば、認知機能=前頭葉、情動=扁桃体という古い見方を捨てましょう・改めましょう、ということを謳っている。
その根拠として、前頭前野が感情に関連した活動を示したり、逆に扁桃体が認知機能に関連した活動を示すといった研究例をまず引き合いに出している。続いて、脳のマクロレベルのネットワークの話を持ち出し、脳回路という構造上、認知機能と感情を分けるのはもともと難しいと主張。
そして、脳領域と脳機能との間には多対多の関係があるんだ、と主張している。つまり、1つの脳領域は複数の機能に関わっていて、逆に一つの脳機能ですら複数の領域の活動に支えられている、ということを主張している。そして、「相互作用」重視で脳を理解していきましょう、ということを謳っている。
主張としては、ごもっともでこういう見方は大好き。
が、問題は、その考えをどう実験的に確かめるか?ということ。
その有効策は何も言っていないと理解した。確かに、いくつか研究を紹介してこういう方向の研究が望ましい的な主張は読み取れた。が、例えば、脳の領野間結合に基づいた研究は、解剖学的な結合の「重み」を軽視している傾向が若干ある。軽視せざるを得ない現状がある。
例えばこの総説の図2や3。
これだけ見れば、「なるほど、脳の構造上、認知機能と感情を分けるのはナンセンス」、というのがよくわかる。が、この図で同じ矢印で結ばれている結びつき方は、果たして同じなのか?もし、結びつき方の「重み」が違って、実は認知機能と感情を完全ではないにしろ区別可能なら、従来の説は間違ってないと反論できる。機能的結合を考えたら、解剖学的な結合では見えない関係が見えてきて、やはり古い見方は正しい、ということにもなりうる。主張としては良いのだが、そのあたりの問題を具体的にどう考えるべきなのか、もっともっとテクニカルなことを考えないといけない。
話は少し変わるが、こういうグローバルネットワークレベルに関しては、ひょっとしたらコネクトームなしでも、うまいこと考えてうまくいったりして?という気がしないでもない。いくつかのツールに+αをかませば、仮説を立てるような研究ができるかもしれない、という気が最近ちょっとする。そして、その仮説を脳機能画像計測で検証するという研究がひょっとしたら可能かも?という気がちょっとする。「気がちょっとする」ばかりではダメだけど、マカクザルは非常に良いモデル生物というのは間違いない。(けど、実際にやるのは、超大変なんやろなぁ。。。)
それはともかく、上の文章で、
「マカクザルは非常に良いモデル生物というのは間違いない」は前頭葉
「超大変なんやろなぁ。。。」は扁桃体
が言っている。
などと分けるのはNGだ、ということを今回紹介した文献では言っている。(ちと違うか)
1/01/2008
2008年の抱負
新年明けましておめでとうございます。
2008年が皆さまにとって良い年でありますように。
---
以下、今年の抱負ランキングを。
1.論文のアクセプトレターをゲットする。
2.レフリーの要求に応える。
3.論文を投稿する。
4.ボスに論文を直してもらう。
5.論文を書く。できるだけセクシーに。
6.その前に、論文用データを用意しろ。
7.グラントをゲットする。
8.新規プロジェクト1.0のエフォートを40%くらいに上げる。
9.新規プロジェクト2.0をスタートさせる。
10.2009年のための就職活動を開始する(秋ごろ)。そのためにもまず論文を。。。
.
.
15.友達を作る。
.
.
20.英語力・ディベート力をつける。
.
.
25.数学・物理をもっともっと勉強する。
.
.
30.このブログをもっと充実させる。
.
.
50.埃をかぶりがちなUSBギターをもっと弾く。
.
.
100.越年させた汚い机をきれいにする。ASAP。
.
.
1000.嫁さんとのバトルを避ける。if possible。
12/31/2007
リベットと自由意志と2007年と
日本ではすでに年が明けていようが、大多数の方が2008年にこのエントリーを読むとわかっていようが、まだ2007年である。
ということで、今年2007年に亡くなった偉大な研究者を偲びながらエントリーをたててみる。
Benjamin Libet。
7月に亡くなった。享年91歳。wikipediaによると、ヴァーチャル・ノーベル賞を2003年に受賞したそうで、こちらで「アットホーム」な雰囲気の受賞講演のムービーを見ることができる。
Libetは実験的な意識研究のパイオニアで、自由意志のディベートに科学的なデータを提供したことでも有名。
その1983年に発表した論文では、主観的報告と時間解像度の高い脳活動計測、さらに筋電活動計測を組み合わせて、自由意志的な気持ちが湧き上がる数百ミリ秒も前に、すでに脳が活動し始めていることを示した。自由意志はイリュージョンである、という考えを強くサポートする研究と位置づけられている。
その後の研究のフォローアップとしては、自分が知る範囲では、Haggardという人の研究が重要か。今年もfMRIを使った研究で、Libetの言う自由意志の存在可能性の余地として唱えた「拒否権」を発動する脳の場所は、ブロードマン9野の一部ではないか、と主張する論文を発表している。
それはそれで良いのだが、個人的に気になるのは、どうやってreadiness potential(準備電位)が生じるのか?というメカニズムの問題。
その前に、readiness potentialとは何か?
RPと略す。どんな脳活動かというと、単純には、実際行動が起こる前に生じる脳活動。それだけでは味もそっけもないから、Libet実験のスパイスを絡めて「セクシーさ」を出してみるとこう:
Libetの実験では、2.5秒くらいで点が時計のようにグルっと一周するモニターを人に見せて、自由なタイミングでボタンを押してもらう。すると、ボタン押しに関連した筋肉の活動より500~700ミリ秒前にそのreadiness potential(RP)が高次運動野あたりに見られることを示した。自由意志というか、インテンションというか、運動を起こそうという気持ちを感じるのは筋活動より300ミリ秒前くらい。実験的には、モニターの点がどこに来た時にその意志が生じたか、あとで教えてもらって、その点から筋電、RPがおこったタイミングを比較すれば、時間順序を知ることができる。Libetの実験データは、RPが始まって数百ミリ秒後にようやく自由意志を感じる、という解釈ができる。
その文脈では、RPは自由意志を感じる前に起こる脳活動、というセクシーな説明もできる。
ちなみに、Haggardの後の再現実験では、RPというよりも、lateralized readiness potentialが「インテンションの気づき」となじむということを提唱した。lateralized readiness potential、偏側性準備電位という難しい訳がウェブで見つかる。lateralizedとは、例えば右手でボタンを押す場合、脳活動が左脳だけで見れるからlateralizedという修飾語がRPについている。LRPと略す。
話がそれた。
LRPなりRPなりなんでも良い。Libetの研究を踏まえて自分が抱く問題は少なくとも2つ。第一に、どうやってRP的な活動が勝手に・自由に生じるのか?そのRPが起こるタイミングを何らかの形で予測・予報できるか?つまり、メカニズムの問題。第二に、RP的な活動が起こった後にどうやってインテンションに気づくのか?気づくことに何の意味があるのか?つまり、脳活動から意識が生まれる仕組みと意識なり気づきの役割の問題。
ここでは、第一の問題を気にしてみる。なぜなら後者よりまだ手に負えそうな気がホンの少しだけするから。(後者の問題を来年の年の瀬くらいに考えるようになることが来年の課題です。。。)
とりあえず次の仮説的なことを考えてみる。
自由な判断でボタン押しをするという課題・文脈が与えられた時点(初期状態)で、押すべきか、押さざるべきかを考えている二つの脳状態・脳活動が同時に生じる。そして、「押すべし集団」の勢いが「押すな集団」を凌駕し、形勢が一気に「押せ」に傾いてRP的活動が生じ、それ以下のプロセスが連鎖反応的に・なだれ的に進み、ボタンを押す。
もしくはノーシンキングな集団とごく少数の「押すべし集団」がいる、という状況が初期状態と考えても良い。そして、「押すべし集団」の勢力が増していってRP的活動につながる。
では、その仮説(?)を示すにはどうしたら良いか?
実験的には、たくさんのニューロンの活動を同時に計測して、その二つの対抗勢力の勢力分布がどう変化するか調べ、RPというマクロ的な活動が生じていく様子を説明していけば良いか。そして、何がきっかけで形勢が変化するか細かく調べれば良いか。
計算論的には、この仮説をモチベーションにシミュレーションして、少なくともRPの発生を説明するネットワークモデルを考える、ということになるか?
後者はすぐにでもできそうな気がする。(もちろん自分はできないけど)
例えば、発想的にはCouzinの2005年ネイチャー論文に近いのはどうだろう。そこでは、情報を握った小集団を仮定して、個々のエレメントは誰がその情報を握っているのか知らなくても、バイオロジカルにもっともらしい単純なルールを想定するだけで、集団的意思決定を説明できることを示していた。このモデルで鳥や魚などの集団行動を説明できる。これをベースにして、アイデアをパクッて、神経ネットワークモデルでネットワーク状態の変遷を調べると良いのではないか。(と勝手な楽観的なことを素人だから書く)
では前者の実験的なアプローチをどう考えるか?
人では無理。なので、マカクなりげっ歯類なりハエなり線虫なりで調べるというオプションがすぐに思い浮かぶ。ハエや線虫だと、せっかく人の研究でCMAやSMA/preSMA周辺が大事という知見が得られているのに、その知見を応用するには距離がある。アブストラクトなレベルではだめ、という立場をとるとするなら、マカクなりげっ歯類ということになる。アブストラクトでOKなら、ハエは有力モデルであるのは確か。だから、ハエの研究にアンテナを張っておくと良いアイデアをもらえる機会がありそう。
それはともかく、今、マカクかげっ歯類で研究するとする。
主観的報告はあきらめても、リベット実験モドキ行動課題はできる気がする。(こう考えると、今の意思決定、行動選択という文脈でやられている研究の範疇に収まる恐れもあるのか。。。)
そして、その課題をやっている最中の神経集団活動をマルチ記録・イメージングなりでごっそり計測するということになる。今はネットワークのことを考えているから、単一細胞記録をやりたおしてバーチャルポピュレーションで考えても良い、という立場はたぶん取れない。(できれば相互作用も扱いたいから)
そして、できればネットワークの状態変遷を実験的に操作して、自由意志を操作されたロボットのような行動を引起せたら、かなりいい線いける。
この研究の場合、前頭前野のここのニューロン活動が中央実行系的役割を果たす、的なオチで終わらせるのではなく、下流のニューロンのことや、一見どうでも良さそうな「弱いリンク」にも注目しながら、ネットワークのことを考えてみたい。というかそれをしないといけない。
一見、意外とできそうな気もする。
というかRomoは文脈付けこそ微妙に違えど近いことをすでに手がけているように、こうして書いているうちに思えてきた。最近報告した論文で彼らの言う「noニューロン」は、入力寄り・出力寄りという点では違うかもしれないけど、上の「押すな集団」とアナロジカルなものと捉えられないだろうか。けど、彼はまだマルチ記録をバリバリはやってないはず。だから、相互作用という点でつっこんだことをやれてないはず。局所電気刺激はどの細胞のどこを刺激しているのかわからないし(電極周辺を通過している神経線維も刺激しているはず)、細かいところで非常に不安。ということは、Svoboda実験の方向で考えた方がやはり良いか?ただし、今の光センサーベースのツールは「レチナールの呪い」がどこかに潜んでいるような気がしないでもない。
それから、ホントにネットワークのことを考えるなら相互作用を扱いたいわけで、コネクトーム的な構造情報がないとかなりきつい気もする。。。なぜなら、ネットワークの重要な特徴は「弱い結合」にこそ潜んでいる可能性が過去の事例(例えばスモールワールドネットワーク)から考えられ、従来のほとんどの神経科学研究はその「弱い結合」を見落とす、除外するというバイアスがかかっている・かかっていたおそれがあるから。コネクトーム的なことまで必要だとすると、やはりマウスでやっていくのがベターなオプションな気もする。
大いに「ブーム」に沿った発想で、新しくない、という批判は自分でもよくわかっている。が、それほど悪い方向ではないように思う。こうしてみると、今世の中にavailableな技術を総動員すれば、こういう問題に超まじめにアプローチしていけそうな可能性がこの1,2年で見えてきたのではないか。
来年2008年の今頃。この考えが自分の中でどれくらい具体化しているか??それとも、この局所解から抜け出せるような次のブレークスルーが起こっているのか?
2007年の年の瀬、納めなければいけない目の前の仕事を納めずに、さらに発散させることを考えてみた。(現実逃避とも言う)
update:
リベット関連の本をいくつか。
12/22/2007
聴覚機能を支えている遺伝子たち
聴覚機能はどんな遺伝子たちに支えられているか?
そんな問題意識で調べた論文を、独断と偏見で、調べた範囲内でまとめてみる。ちなみに、聴覚機能と言っても、主に蝸牛で働いている遺伝子たちの話(例外もあり)。この分野は、今回取り上げた論文を読んで初めて知ったことばかりなので、情報の精度はいつも以上に低いです。。。(誤り訂正等は大歓迎です。よろしくお願いします。)
---
1.総説
まず総説を二つ。
Trends Mol Med. 2006 Feb;12(2):57-64. Epub 2006 Jan 10.
From deafness genes to hearing mechanisms: harmony and counterpoint.
Petit C.
途中から細かい話も登場するが、この分野の概要を理解するには最適な総説か。著者のPetitは、この分野の大御所的存在のようだ。
この総説ではまず、聴覚障害について解説がある。続いて、感覚神経性難聴(sensorineural deafness)と遺伝の関係が解説され、具体的な遺伝子と聴覚障害との関係がまとめられている。最後に、この分野の展望を議論している。
多くの研究は、マウスの分子生物学・分子遺伝学の成果によるところが多いようで、マウスの研究が人の聴覚障害の研究にどれくらい貢献できるか、そのメリットと課題について触れている。最後に、実際の成体を扱ったin vivoの研究の必要性を強調している。
論文中のBoxやTableも良い情報。
ちなみに、以下を読み進める上での参考情報をここで。
感覚神経系難聴のうち非シンドロームタイプ(non-syndromic forms)をさらに細かく区別する時にDFN, DFNA, DFNBという呼び方がされる。
DFNとは、X染色体とリンクした難聴。
DFNAとは、常染色体優勢遺伝の難聴。
DFNBとは、常染色体劣勢遺伝の難聴。
それぞれの遺伝子座が特定される度にDFNB1といった番号が割り当てられていくようだ。
---
もう一つ総説。
Nat Genet. 2001 Feb;27(2):143-9.
A genetic approach to understanding auditory function.
Steel KP, Kros CJ.
少し前の総説になるが、こちらも蝸牛、特に内有毛細胞、外有毛細胞の機能と関連した遺伝子群についてまとめられている。
---
2.Petitの研究
Petitの研究で面白いと思ったものを二つ。
Cell. 2006 Oct 20;127(2):277-89.
Otoferlin, defective in a human deafness form, is essential for exocytosis at the auditory ribbon synapse.
Roux I, Safieddine S, Nouvian R, Grati M, Simmler MC, Bahloul A, Perfettini I, Le Gall M, Rostaing P, Hamard G, Triller A, Avan P, Moser T, Petit C.
オトファーリン(Otoferlin)という、聴覚障害のうち常染色体劣勢遺伝の候補遺伝子として見つかった遺伝子がある。この論文でその機能を明らかにしている。
このオトファーリンは内有毛細胞(inner hair cells)のシナプス部位にいて、カルシウムと結合して、シナプス小胞のエキソサイトーシスを制御する重要なタンパク質(syntaxin1とSNAP25)と相互作用することがわかった。このオトファーリンを欠損させると、そのエキソサイトーシスが完全に止まる。したがって、オトファーリンは、有毛細胞から聴覚神経への情報伝達に必要不可欠だということがわかった。
Nat Genet. 2006 Jul;38(7):770-8. Epub 2006 Jun 25.
Mutations in the gene encoding pejvakin, a newly identified protein of the afferent auditory pathway, cause DFNB59 auditory neuropathy.
Delmaghani S, del Castillo FJ, Michel V, Leibovici M, Aghaie A, Ron U, Van Laer L, Ben-Tal N, Van Camp G, Weil D, Langa F, Lathrop M, Avan P, Petit C.
常染色体劣勢遺伝で、DFNB59の候補遺伝子を発見したという話。その遺伝子の名はpejakin。面白いのは、この遺伝子は内有毛細胞ではなく、その後の聴覚経路(下丘まで)のニューロンで発現しているという点。機能はわかっていないが、変異を入れたpejakinを「ノックイン」したマウスは聴覚障害を起こす。つまり、内有毛細胞以外の聴覚経路が正常に機能するのにこのpejakinは必要、ということになりそう。
---
3.TMC1と聴覚障害
2002年に同定された遺伝子TMC1に関連した論文を3つ。
Nat Genet. 2002 Mar;30(3):277-84. Epub 2002 Feb 19.
Dominant and recessive deafness caused by mutations of a novel gene, TMC1, required for cochlear hair-cell function.
Kurima K, Peters LM, Yang Y, Riazuddin S, Ahmed ZM, Naz S, Arnaud D, Drury S, Mo J, Makishima T, Ghosh M, Menon PS, Deshmukh D, Oddoux C, Ostrer H, Khan S, Riazuddin S, Deininger PL, Hampton LL, Sullivan SL, Battey JF Jr, Keats BJ, Wilcox ER, Friedman TB, Griffith AJ.
DFNA36とDFNB7と11の原因遺伝子としてこのTMC1という遺伝子が発見された。TMCとはtransmembrane cochlear-expressed geneの略。
この論文の興味深い点は2つ。第一に、この遺伝子はdnマウスというすでに知られていた難聴マウスの原因遺伝子でもあったという点。このマウスを対象に、より基礎的な研究が可能ということになる。第二に、そのマウスをモデルにした研究から、この遺伝子はマウスが生まれた後(P5から)に有毛細胞で発現し始めるという点。機能は現時点でもまだわかっていないようだが、先天的な進行性聴覚障害の鍵を握る遺伝子ということになるか。
Nat Genet. 2002 Mar;30(3):257-8. Epub 2002 Feb 19.
Beethoven, a mouse model for dominant, progressive hearing loss DFNA36.
Vreugde S, Erven A, Kros CJ, Marcotti W, Fuchs H, Kurima K, Wilcox ER, Friedman TB, Griffith AJ, Balling R, Hrabé De Angelis M, Avraham KB, Steel KP.
同じ研究グループが、上の論文と同時に発表した論文。ENUという化学物質を使って、マウスのDNAにランダウに変異を起こすプロジェクトで偶然見つかった難聴マウス、ベートーベン(Beethoven)の報告。実はこのマウスもdnマウスと同様、TMC1に変異を持つ。
J Comp Neurol. 2008 Jan 20;506(3):442-51.
Maturation of auditory brainstem projections and calyces in the congenitally deaf (dn/dn) mouse.
Youssoufian M, Couchman K, Shivdasani MN, Paolini AG, Walmsley B.
dnマウスの聴覚経路の解剖。生後発達に注目している。聴覚神経の蝸牛核側の神経終末をエンドバルブと言うが、そのサイズがdnマウスでは減少していることがわかった。
---
4.蓋膜の働き
蝸牛は大まかには3つのピースから成る。
蓋膜(tectoial membrane)
コルチ基(organ of Corti)
基底膜(basilar membrane)
コルチ基は、基底膜と蓋膜にサンドイッチされている。ちょうど上で書いた通り。
コルチ基に内有毛細胞がいて、聴覚神経に主な聴覚信号を伝える。基底膜は、いわゆるフーリエ変換的な音の周波数分解をして、内有毛細胞に振動情報を伝える。
では、蓋膜は何をするか?
コルチ基にある外有毛細胞を介して蓋膜は基底膜と物理的につながっている。共鳴を起こして信号増幅、周波数チューニングに関わっているのではないかという説はあったようだけど、よくわかっていなかった。けど、Richardsonたちのグループが立て続けに重要な事実を明らかにしている。
Neuron. 2000 Oct;28(1):273-85.
A targeted deletion in alpha-tectorin reveals that the tectorial membrane is required for the gain and timing of cochlear feedback.
Legan PK, Lukashkina VA, Goodyear RJ, Kössi M, Russell IJ, Richardson GP.
という論文では、α-Tectorinがなくなって、外有毛細胞を介した物理的な連絡がなくなる(減少する)とどうなるか?という疑問を立てて研究している。α-Tectorinは蓋膜を構成するタンパク質の一つ。
研究では、その遺伝子の3番目のエクソンを欠損したマウスを作成して、蝸牛の働きを調べている。その結果、コルチ基と基底膜の形は正常だけども、働きがおかしくなることがわかった。具体的には、基底膜の感度が落ち、通常見られるはずの蝸牛内の共鳴器的な働きが悪くなっていることがわかった。
Nat Neurosci. 2005 Aug;8(8):1035-42. Epub 2005 Jul 3.
A deafness mutation isolates a second role for the tectorial membrane in hearing.
Legan PK, Lukashkina VA, Goodyear RJ, Lukashkin AN, Verhoeven K, Van Camp G, Russell IJ, Richardson GP.
α-Tectorinのアミノ酸置換を起こしたマウスに注目している。このマウスは、先天性聴覚障害を持つオーストラリアのとある家系のモデル動物。
このマウスは、上のマウスと同様、蓋膜の異常はあるけども、コルチ基との接点は残っているらしい。この研究の驚きは、蓋膜とは関連していないと考えられていた内有毛細胞に機能的なリンクが見つかったということ。具体的には、変異マウスで、内有毛細胞のチューニングが大きく変化していることがわかった。基底膜を的確に揺らすのに蓋膜と外有毛細胞との正常な接点が大事、ということになりそう。
Nat Neurosci. 2007 Feb;10(2):215-23. Epub 2007 Jan 14.
Sharpened cochlear tuning in a mouse with a genetically modified tectorial membrane.
Russell IJ, Legan PK, Lukashkina VA, Lukashkin AN, Goodyear RJ, Richardson GP.
今年報告された論文では、蓋膜を構成する別のタンパクβ-Tectorinに注目している。この遺伝子をノックアウトすると、低周波数帯域の感知にだけ異常が生じることがわかった。つまり、基底膜で起こるであろう周波数分解の性能に蓋膜は関わるだろう、ということになりそう。
ということで、基底膜、コルチ基、蓋膜が三位一体となって、複雑な仕組みで音の振動が変換されているようだ。
---
5.TRPチャネル
Proc Natl Acad Sci U S A. 2007 Dec 4;104(49):19583-8. Epub 2007 Nov 28.
A helix-breaking mutation in TRPML3 leads to constitutive activity underlying deafness in the varitint-waddler mouse.
Grimm C, Cuajungco MP, van Aken AF, Schnee M, Jörs S, Kros CJ, Ricci AJ, Heller S.
ごく最近発表された論文。TRPチャネルが聴覚系でも働いているということを報告した論文。
---
何を学ぶ?
とにかく基礎知識を身につける上でも非常に勉強になった。。。
それはともかく、第一に学んだことは、蝸牛レベルですでに超複雑、ということ。
まだわかっていないことがいろいろありそう。例えば、Richardsonたちの研究を考えると、基底膜・内有毛細胞の活動を蓋膜が支えているわけで、蝸牛というシステムがどう働いているのか、実はよくわかってないということになりそう。彼らの研究は、人工内耳の新しいストラテジーを考える上でも参考になる気もする。入力をよりバイオロジカルな事実に基づいて最適化できれば、もっとスムースに脳の可塑性を引き起こせるのかもしれない。
第二に学んだことは、geneticsの環境が整っている現状。
マウスを中心にこれだけgeneticsの研究が発展しているということは、より中枢レベルの研究にも間違いなく応用されていきそう。個人的には、ここで扱ったPetitの研究の応用に興味が沸く。これまでの聴覚研究はネコ、モルモット、ラット中心で行われてきた気がするけど、これから数年でマウスの聴覚研究は間違いなく注目を浴びると思われる。長期的にはバレルよりも良い気もする。なぜなら、感覚刺激の制御が圧倒的にやりやすいから。それにハイスピードで耳たぶの動きまでモニター、ということは必要なさそうだし運動系との関連は少なそう。マウスがどんな知覚をしているか人でも何となく空想できそうな気もする。。。(バレル系のイリュージョンなんて想像できない。)ただし、聴覚の場合は自分が発する音・振動をどうするか、という問題は残るか。これはかなりやっかいな問題。ハエの聴覚研究は今のところあまり聞かないし、聴覚という点だけで考えれば、ハエよりも良いモデル生物とは言えそうか。
11/17/2007
ピアレビュー制度の変革とコンフィデンシャルコメントの賛否
今回のエントリーは完全プロ向け、しかも神経科学者対象。けど脳そのものとは関係なし。
Nature Neuroscienceのエディターがやっているブログのエントリー。(ぜひお読みください)
このエントリーの前半部分では、来年から一部の神経科学関連ジャーナルの査読システムを試験的に変化させることの説明がまずある。
これまでの制度では、次のことが普通だった。
例えば、JNSに投稿したら2ヵ月後くらいにレフリーに散々たたかれてリジェクト。その後、そのレフリーのコメントを参考に論文を手直し。ジャーナルのランクを下げて、例えば、JNPあたりへ投稿。査読結果をまた2ヶ月くらい待つ。。。またリジェクトだったら、また手直しして別のジャーナルへ投稿して、さらに2ヶ月休む。。。という無駄とも思える時間を過ごす。
けど、来年から試験導入されるであろう制度では、1つ目のジャーナルで(良い)レフリーだった人に、別のジャーナル上で明示的に再チャレンジできるようになるらしい。つまり、ジャーナルのランクを落として、リバイス的投稿ができるようになる。「あんたのコメントには応えたし、ジャーナルのランクも落としたし、はよ通して!」という要求ができることになる。これは良い話だと思う。
が、問題はその裏の話で、コンフィデンシャルコメントもジャーナル間で共有することになるそうで、それをどう思うか?コンフィデンシャルコメントそのものをどう思うか?神経科学者全体へ問いかけている。
コンフィデンシャルコメントというのは、論文の著者はアクセスできない、エディターとレフリー間でやり取りされる丸秘情報のこと。その丸秘情報がジャーナル間で共有されても良いか?倫理的な問題も含めてどうか?という問いかけ。
例えば、著者が見れるレフリーコメントにはほめ言葉が書いてあって、「このレフリーは自分の論文に好意的」と思っても、実はコンフィデンシャルコメントではボロクソに叩かれているというリスクもある。
この場合、悲劇は繰り返される。。。
例えジャーナルのランクを下げて、そのレフリーに再チャレンジしてもアクセプトされる可能性は低い。。。そういうリスクもあるということ。
このエントリーに対して、多くの神経科学者がコメントを寄せている。自分が知ってる超有名人もコメントしている。その中でKochのコメントは簡潔で納得。
この問題、全神経科学者にとって重要な話題だと思われるので、ぜひ原文をどうぞ。
11/10/2007
学会を終えて
サンディエゴでの学会の感想等をつづってみます。
コネクトームブーム到来??
今回参加して、おそらくこれから数年間のうちにconnectomeというフレーズを謳う人がたくさん出てきそうな気がした。ゲノム(genome)プロジェクトが全塩基配列の決定だったら、コネクトームプロジェクトは、connection(結合)、脳の配線を調べつくそうという話。
間違いなくブームになりそう。
presidential special lectureの人選からそれを感じた。connectomeのパイオニアVan Essenらしい人選。
ということで、connectome絡みの比較的最近の論文を思いついた範囲でいくつかピックアップしてみると、
PLoS Comput Biol. 2005 Sep;1(4):e42.
The human connectome: A structural description of the human brain.
Sporns O, Tononi G, Kotter R.
神経束を生きたまま可視化できるというMRI(DTI/DWI)を主に使ってhuman connectome、人の脳配線を決めること、をやろうという提案。(以前こちらでも紹介)
Nat Methods. 2007 Apr;4(4):331-6. Epub 2007 Mar 25.
Ultramicroscopy: three-dimensional visualization of neuronal networks in the whole mouse brain.
Dodt HU, Leischner U, Schierloh A, Jahrling N, Mauch CP, Deininger K, Deussing JM, Eder M, Zieglgansberger W, Becker K.
Nat Methods. 2007 Nov;4(11):943-50. Epub 2007 Oct 28.
Two-photon photostimulation and imaging of neural circuits.
Nikolenko V, Poskanzer KE, Yuste R.
ごく最近発表された論文。単一細胞レベルで、ニューロン間の結合(機能的な意味での結合)を調べられる。すべて光学系でできそう、というスゴワザ。まだスライスレベルとはいえ、かなりやばい。
PLoS Biol. 2004 Nov;2(11):e329. Epub 2004 Oct 19.
Serial block-face scanning electron microscopy to reconstruct three-dimensional tissue nanostructure.
Denk W, Horstmann H
Curr Opin Neurobiol. 2006 Oct;16(5):562-70. Epub 2006 Sep 8.
Towards neural circuit reconstruction with volume electron microscopy techniques.
Briggman KL, Denk W.
自動電子顕微鏡(serial block-face imaging)。connectomeのキラーツール?光学計測では見えないところが見えるので、圧倒的に有利で正確。自動化によって生産性が上がって、画像処理技術が大幅に向上すれば、他の方法はいらないかも。原理的には、分子局在の情報も載せられるか?統計的に考えれば良い、という立場を取れば、学習前後の配線・分子局在の変化だって研究対象になる気もする。ニューロンとグリアを同時に調べられる。いろんな夢が膨らむ。
今回のレクチャーでdiffusion MRIの話もあったが、個人的には5~10年以内に、死後検体のサンプルを自動電顕装置で調べ尽くす究極のhuman connectome project version 1.0が始まってもおかしくない気がする(かなり好い加減な見通し)。どれくらい膨大なデータサイズになるか知らないが、Googleの協力でも得てGoogle EarthバリのGoogle Brainが公開される日も遠くない気がする。(こちらを読むとそう楽観できないか?)
それはともかく、
connectomeがブームになろうがなるまいが、システム研究に如何に遺伝学を絡めるかということが、さらに重要になることを痛感した。その意味では、ハエのシステム研究から多くを学べそう。とすると、哺乳類を研究対象にするなら絶対的にマウス優位の時代到来?Brainbowの応用も面白そうだし、少なくとも大脳新皮質に関してはAllen Instituteが良いインフラを整備してくれそうな雰囲気。
いろんな意味で、rich-get-richerが加速気味のサイエンス業界。如何に良いサイエンスをやるか?ということを、手を動かす前に考えないとホントにやばい気がした。そんなこと言われなくてもわかってるけど、実践するのはホントに難しい。。。単に競争が激化している以上に恐ろしい時代に突入している気がした。
---
学会で気になったこと
個人的には、学会はまだ論文になっていない「未発表データ」を話す場だと思っている。けど、相変わらず未発表データを持っているはずなのに、すでに論文になってるデータだけ発表して、他の人の未発表データを聞こうとする利己的な人が結構いたように感じた(ホントに未発表データがないのかもしれないけど)。「未発表データなしポスター」「発表データのみを発表する参加者」といったカテゴリーを設けるなどして、何か淘汰圧をかける仕組みが必要な気もする。競争が激しいから、、、という気持ちもわかるけど、自分だけデータを隠すというのはアンフェア。もしみんな同じ行動を取ったら学会は単なる顔合わせの場くらいの意味しか持たなくなる。ちょっと考えさせられた。
---
と、まじめなことを書いた後は、ちょっと気楽に。
自分の発表
今回は、聴覚系のサテライトイベントでの口頭発表が最大のタスクだった。
何とか無事?に発表を終えた。それにしても緊張した。。。中には「緊張して手が震えてうまくポインターを指せません」と言ってウケを取っている人もいた。その人に比べたら緊張具合はまだましだったか?
口頭発表の直前にポスター発表の時間があった。
自分の英語はやはり相手に聞き取りにくい、と感じたので、口頭発表中はできるだけゆっくり話すように心がけた。それから、あらかじめアニメーションをしかけまくっていたのも奏功か。
聴衆の注意のコントロールは建前、自分のトークの手助けが本音。
規模は100人くらいだったか?
数千人を前にしたレクチャーで、スライドをほとんど使わず一時間くらい話せる人というのは、経験以上の才能があるのだろう。。。(トーク遺伝子?エンターテイナー遺伝子?)
ちなみに、今回の学会の直前、実は毎年恒例の研究所内ミニシンポジウムでもトークをしていた。その時は、誰からも「良かった」というコメントはかけられなかったけど(悲しいかな。。)、サテライトシンポジウムでは知らない人からもいろいろ声をかけられた。もちろん、外人のほめ言葉は8割引くらいで考えた方がいいだろうけど、ゼロでなかったのは良かった。質疑応答も、比較的イージーな部類の質問だったので、何とかお茶を濁せた気がする。
---
ポスター発表は、サテライトイベントと学会中と2回発表。
トークの練習を積んでた分、ポスター発表はかなりリラックスしてできた。学会中のポスター発表では、前日ケンがトークしたおかげか、聴覚研究者以外の人たちにもたくさん来てもらった。ラボ全体的に盛況だったと思われる。やはり中日(なかび)のポスター発表は良い。
このブログをご覧になられて来られた方、ポスターのコピーのリクエストまでいただいた方、ありがとうございました。気軽にメール等でご感想・ご意見等をお聞かせください。ポスターに関係なくても大歓迎です。
---
ソーシャルネタ
やっぱり学会は、夜。
今回は、10人以上の食事・パーティーに参加する機会に恵まれた。
学会初日は、基生研時代の知り合いに誘われて、少し遅れて食事会に参加。名前・顔は知っていたけど、話をしたことのなかった人たちとも話ができて有意義な時間を過ごせた。2次会はバーに行ったけど、うるさくて至近距離の人と会話するのにも一苦労。。。(ありがち)
2日目は、pooneilさんのところにもあるように、しげさんを誘って神経科学者SNSのオフ会に参加した。昔からpooneilさんは一方的には知っていたけど、こういう形でお話ができたのは今回初(ASSCの時はポスター発表を聞いただけだったし)。ブログをやってるおかげか、自己紹介なしでそれ以上の文脈で会話をスタートできるというのは結構良いかも?参加者全員と挨拶はできなかったけど、他にも大学院生やポスドクの方たちと話す機会があって充実のパーティーだった。
火曜日は、ラボのパーティーとバッティングしてしまったけど、もとから参加予定だったNY/NJ地区日本人研究者呑み会に参加。これまた初めてお会いする人がたくさんいて、いろんな話ができた。二次会は、いつもこってり絡んでる面子を中心にバーへ。
やはりナイトサイエンス?は重要。
それにしても今回、このブログを読んでいただいている方にたくさんお会いできた。自分のネームプレートを見て「読んでます」、お世辞でも「勉強になってます」などと言ってもらってうれしかったです。ありがとうございました。これからはこちらでも声(コメント)を気軽にかけてください。
10/13/2007
そろそろ学会
ということで、SFN2007まで1ヶ月を切った。
神経科学関連の方には今更だけど、神経科学者がよく使うSFNとは、Society for Neuroscienceの略。アメリカの神経科学学会、特にその年次大会(Annual Meeting)のことを指す。
今年は11月3日からサンディエゴで開催される。
アメリカの学会だが、毎年2万人以上の神経科学者が、日本も含め世界中から参加する。とにかくバカでかい。
ポスター会場で、超有名人に会うこともしばしばある。バカでかいけど、論文でしか知らなかったそういう人と距離感を近づける良い機会だったりもする。
そんな学会がもうすぐあって、自分のいる研究室からも何人か発表する。そこで今回は、ラボの発表内容の宣伝を。(このエントリーの目的は、結局これ)
ちなみに、要旨集が公開されていて、会員でなくともフリーでアクセス可能。(相変わらず使い勝手が悪いけど・・・)
ラボメンバーの演題番号は、109.5、それから389.12から389.16までの連番。
検索の仕方は、Advanced Searchに進んで、Author(First Name)にKenneth、Last NameにHarrisとたたいて検索する。
発表時間は、日曜日の午前と月曜日の午前となっている。
まず日曜にボスがトークして、翌日、部下のポスター発表、となかなか理想的な順番か。
---
では、そのボスのケンから、、、
(109.5) Cortical UP States: Sequential Structure and Homology to Sensory Responses
(Sunday, Nov 4 2007 9:35 AM - 9:55 AM)
というタイトル。
彼はThe Upshot of Up States in the Neocortex: From Slow Oscillations to Memory Formationというミニシンポジウムのシンポジスト。彼のvisibility、アメリカでは結構高まっている気がする。
ミニシンポジウム全体の内容はいわゆる「UP状態」、スローオシレーションの話。記憶の固定化の話も若干絡みそうだ。いろんなレベルの研究者がスピーカーとして選ばれていて面白そう。
ケンは、ラット聴覚野のUP状態中と感覚刺激処理中の神経集団活動についてトークするだろう。以下で紹介するアーターの話が中心かと思われる。ひょっとしたら、うちのラボでやってることのダイジェスト的な内容になる可能性も大。実は、彼の生トーク、一度も聞いたことがなかったので、自分自身、最も楽しみにしている演題の一つだったりする。
---
続いて、部下のポスター5つ。すべて11月5日(月)午前。
1.(389.12/GG7) Internal dynamics yield to external sensory control during cortical desynchronization
(Monday, Nov 5 2007 11:00 AM - 12:00 PM)
2.(389.13/GG8) State-dependence of sensory-evoked responses in neocortex
(Monday, Nov 5 2007 8:00 AM - 9:00 AM)
3.(389.14/GG9) Sparsening and compression of information across cortical laminae
(Monday, Nov 5 2007 9:00 AM - 10:00 AM)
4.(389.15/GG10) Spontaneous events outline the realm of possible sensory responses in auditory cortex
(Monday, Nov 5 2007 10:00 AM - 11:00 AM)
5.(389.16/GG11) Interaction of internal dynamics and temporally structured stimuli in auditory cortex
(Monday, Nov 5 2007 11:00 AM - 12:00 PM)
1は大学院生ステファンの発表。
脳の状態が違うと、聴覚刺激を処理中の聴覚野ニューロン集団が、どう挙動を変えるか?という話。
2はカリーナ。
彼女は生後3ヶ月くらいの赤ちゃん連れでプレゼンを敢行するはず。隣で発表する自分にとって、今回最大の脅威である。なぜなら、聴衆は間違いなくポスターより赤ちゃんに注意が向くはずだから。。。発表中、おむつ交換の手伝いをさせられるリスクもあったり、なかったり。。。旦那ヴラディミアがベビーシッターをするのだろうか。。。
それはともかく、彼女の発表内容は、ステファンの研究に近い。脳の状態が違うと感覚野の挙動はどう違うか、という問題に、実験データとモデルの両方から迫っている。
3は自分。
聴覚野で、層が違うと情報コーディングという点で何が違うか、という話。昨年の発表よりはグレードアップしていると思われる。そうでないと困るか。。。一方、英語はマイナーチェンジ程度で停滞中。それに困っている。。。
4はラボのエース、アーター。
彼の話は、今年PNASに発表した話の続報。なので、最もハイ・デフィニションな内容である。HD-posterとでも呼んだら良いか。彼の話を聞きに来たついでに、ぜひ私のところにも寄ってください。
5は大学院生のリアド。
彼女は今回初参戦。彼女の内容、実は、よく知らない。。。たぶん、アルフォンソとケン以外は知らないと思われる。。。(良いのか?)タイトルからして、急性実験のデータを話すのだろう。というか今、遅めの夏休み(秋休み)を取っている。こんな時期に。。。(良いのか?)
---
ポスター発表は、聴覚系のセッションではあるが、聴覚に興味がない方にも面白い内容盛りだくさん。特に、ニューロン集団がどんなことをやっているか、という問題に興味がある人にはぜひ来て欲しい内容。と大風呂敷を広げてみたり。。。(あくまでも宣伝ということで)
---
APAN2007
長くなったが、「聴覚な人」には、毎年プレイベントとしてAPANというシンポジウムが開催されている。そこでは、ケン以外全員ポスター発表する。自分はなんとオーラルにも選ばれてしまった。。。ポスターとオーラルのダブルヘッダー。。。
日本語ですら、学会等の公の場でプレゼンしたのは一回しかない。。。選ばれたのはとても光栄だが、自分が英語できないことを知って、いじめてやろう、という意図で選ばれたのか、とさえ思ってしまう。確かに、演題をチェックすると、ビッグネームのラボと内容が競合していて、その人からオーラル発表のお誘いが来た。。。
聴覚系研究者は人口がまだ少ない分、一部の有名人でカルテル的な組織を作っている雰囲気を感じる(どこもそうかもしれんが)。今回も、そのシンジケートのトップが各セッションのチェアだったりする。そのカルテルの一員に嫌われると、おそらく今後論文を通す時の大きな障害になる気もする(あくまでも想像)。
ということで、ポスターとスライドの両方を用意することになってしまって、今、結構テンパっている。。。
とにかく、聴覚系の人に顔を覚えてもらう非常に良いチャンスではあるか。
---
最後に、このブログを見て来られた方は、「ブログ見ました」「ブログ見てます」と一言いっていただけると、かなりうれしいです。ぜひ気軽に声をかけてください。
