3/15/2008

A Day of Memory at NYU

というシンポジウムが今週開催され、終日参加してきた。雰囲気だけでも伝われば、と思う。

このシンポジウムは4つのセッションから構成され、分子、シナプス、回路、システム(含心理学)という幅広い内容を扱っていた。テーマは、タイトルにあるようにMemory

ちなみに、カンデル大先生も朝一から来ていて、ほとんどのスピーカーに対して質問をぶつけていた。

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では、セッション1。
このセッションは、シナプスレベルの話。非常に濃かった。

Steven A Siegelbaum (Columbia Univ)
ITDPを提唱した論文を中心にトーク。彼の頭のキレ具合が伝わるすばらしいプレゼンで、研究内容も面白かった。

Adam Carter (NYU)
この人は知らなかった。two-photonを使ったシナプス応答の研究で良い論文を出しているようだ。例えば、こちら。若いので、NYUでPI職を得たばかりなのかもしれない。

Larry Abbott (Columbia Univ)
unpublished dataをトーク。

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セッション2は分子レベルの話。目玉はSacktor。

Todd C Sacktor (SUNY Downstate Medical Center)
「記憶消し物質ZIP」で今や超有名人。
PKMzetaは、記憶関連のキー分子として確立した感を受ける。(彼らの研究は、こちらのエントリーで少し紹介してます。)Sacktor本人をはじめて見たけど、アメリカンな体型で甲高い声が特徴的だった(雰囲気だけでも。。。)

Karim Nader (McGill Univ)
LeDoux研時代こちらのネイチャー論文を発表している。re-consolidation関連のdebateの火付け役ではないかと思う。トーク内容は。。。カンデル先生ですら質問しなかったので、かなり・・・。けど、独特のオーラを持ってる人だった(フォロー)。

Cristina M Alberini (Mount Sinai Medical Center)
タンパク合成とconsolidation, re-consolidation関連の研究をされている女性。PubMedで検索したら、総説がこれから出るようだ。

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昼休み。
呑み友達でもある理論家の日本人といろいろ話をした。

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セッション3はシステムレベルの話。
前半は神経生理。後半はヒトの記憶。

Gyorgy Buzsaki (Rutgers)
ラットの神経生理。すばらしいトークだった(若干飛躍も感じられたが)。
それにしても、ギューリー先生は効果的なプレゼンの仕方を知っている。

Wendy A Suzuki (NYU)
サルの神経生理。4年前に発表された論文を中心にトーク。良いプレゼンだった。

Lila Davachi (NYU)
彼女の研究はフォローしてないけど、unpublished dataだったと思われる。
最近、Neuronに論文を出したばかりなのにすごい生産性だ。
ちなみに、この方きれいな女性です(若くは見えますが、実際は知りません。。。)。

Elizabeth Phelps (NYU)
この人は最近ネイチャー論文で楽観性に関することを報告した人でもあるけど、トピックは全くその逆。
動物の研究でわかった知見をヒトへ応用するという精力的な研究。
ちなみに、この方も女性。だけど、強面。。。(ネタもかましてましたが。。。)

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セッション4はヒトのイメージング研究、その中でも記憶に関連しそうな研究、そしてバリバリの心理学。

Clayton Curtis (NYU)
ヒトのワーキングメモリの研究ラボのホームページ

Alex Martin (NIH)
視覚物体認識(object recognition)でMRIを絡めた研究。総説も出しているようだ。雰囲気からして有名人なのだろう。全然知らんかった。。。

Janet Metcalf (Columbia Univ)
この人も知らなかったけど、ググッて彼女のラボのページを調べたらメタ認知など面白い研究をしているようだ。トークでは、心理学から見た海馬の「モデル」を話してくれた。計算論という意味でのモデルをやってる人には不評だった。。。個人的には、「悪くない」とは思った。抽象度が高すぎるのもよくない。

Marcia K Johnson (Yale Univ)
欠席でトークなし。。。
ラボはこちら

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そして、セッション5。

Eric R Kandel (Columbia Univ)

他のスピーカーは20分という持ち時間だったけど、カンデル大先生は40分。
アメフラシの研究から局所タンパク合成を調べられるユニークな実験系の確立、そしてプリオン的な転写因子CPEBの話へ発展した経緯、そしてその後の発展について。途中Movshonをネタにしながら、すばらしいトークをしてくれた。(Movshonが所内対応的な下っ端として働いていた。。。)

wikipediaによると、カンデル先生は来年で80才。確かに見た目はそれくらいというのは伝わる。けど、研究内容、研究に対する情熱みたいなものには、一切衰えを感じられなかった。ノーベル賞取るような人はホントに次元が違う。ちなみに、質疑応答も盛り上がり、ギューリー先生の噛み付きにも一切動じず。。。むしろ噛み付き返し?ていた。。。

良いもん見れました。。。

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さて、何を学ぶ?
いろいろ考えさせられることがあった。
やはり思うのは、「ブリッジ」とでも言うのだろうか、異なる時空間スケールで起こる現象たちをどう自分の頭で消化して、クリティカルな問題に取り組んだら良いのか?ということ。特に時間スケールの問題が、他の神経系のトピックに比べ特にやっかいな気がする。記憶だから仕方がないのだろうけど、その問題に取り組んだ研究というのはない気がする。どうなのだろう?少なくとも現時点では実験的にできないことを可能にしないといけない諸問題がいろいろありそうだ。

もう一つ、言葉の定義。
科学をする以上言葉で表現することは大事なのだけども、神経科学の言葉で、しっかり言葉を再定義しないといけない気がする。例えば、今回議論になったconsolidationreconsolidation。何それ?という気が素人からしたらした。。。おそらく専門家に聞いても、微妙に定義の仕方が違ったりするだろうから、新規参入しようという人には何ともおかしなジャーゴンに見えるのではないだろうか。むしろ、新しいコンセプトのタネが、こういうおかしなところに眠っているのだろう。

それにしても、復習して改めて思ったけど、どのスピーカーも一流の研究者ばかりで、濃いシンポジウムだった。NYC地区が大半、というのがまた驚き。。。

2 comments:

阿頼王 said...

Shuzoさんへ
なかなか活気があって面白いシンポジュームだったようですね。
カンデル大先生。80歳現役! すごいですね。普通なら50歳位で、脳機能が著しく低下するような気がしますが、「神経細胞は年齢に関係なく、成長する見本」のような方ですね。
しかし、

>Lila Davachi (NYU)
 この方きれいな女性です
>Elizabeth Phelps (NYU)
 この方も女性。だけど、強面。。。

には笑ってしまいましたね。

ところで、わたしのブログでも紹介したのですけど、日本のアニメで、士郎正宗氏が『神霊狩』ってのを描かれてまして、このアニメ、たかがアニメされどアニメと言うか、すごく士郎氏はお勉強されてまして、オカルティックなんですけど、“大脳生理学”や“精神医学”などの専門家が登場し、専門的な事を話すのですけど、Shuzoさんに是非見てもらいたい作品です。WOWWOWで木曜日の深夜0時からやっているようですが、著作権上問題はあると思いますが、動画サイトで誰かがアップしています(但し、画質はそれほど良くない。動画ファイルとしては小さいですからね)。
ただ、直ぐに消去されてしまうので、動画ファイルとして取っておかないと、見れない(直ぐに“消去”されてしまってます)のですけど……。
ちなみに、個人的な楽しみのために、当方は1話から最新話(19話)まで、持っております。DVDでも販売されているようですが、まだまだ話しはこれからですから、それに日本のDVDは高いですからね。
このアニメについて、Shuzoさんの感想&意見を是非ともお伺いしたい所です。

Shuzo said...

こんにちは、阿瀬王さん。
紹介していただいた神霊狩。ウィキペディアのエントリーを今見ただけですが、各ストーリーのタイトルがまず刺激的ですね。LTP、アフォーダンスが出るなんて。。。やっぱり日本アニメはすごいっすね。こういうのは、外人にも絶対受けるかも?です。(まだ見たわけではないですが。。。)