4/01/2008

簡単、記憶力アップ法!?:BrainPrime、脳科学発インターネットビジネス

*追記&注意:このエントリーはエイプリル・フールのネタですので、ご注意下さい。

最近、脳機能を高める「ドラッグ」の是非がしばしば話題になる。例えば、ドラッグで脳機能を高めて入試に臨む人が出てくると、ドラッグを使用していない人と比べて不公平。スポーツで言う、いわゆるドーピング問題と同じ倫理問題を生む。

実は、今日報告された論文によると、わざわざドラッグを使わなくても、簡単な方法で頭が良くなる(記憶力がアップする)ことがわかった。さらに、それを新しいビジネスモデルとして応用するらしい。

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その頭を良くする方法では、「サブリミナル効果」を利用する。
サブリミナル効果というのは、「プライミング(priming)」としても知られている。有名な話は、映画上映中に「Drink Coke」という映像を意識にのぼらないくらい瞬間的に流すと、映画終了後にコーラを飲む人が増えた、という話がある。(*この逸話は、後にウソだということがわかっている)

報告された論文でも、このプライミングを利用する。
結論から先に言うと、きれい、あるいはイケ面の異性の顔写真でプライミングすると、記憶力がアップするようだ。

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具体的にどうやって記憶力がアップしたか?

細かい話になるが、研究の方法を説明してみる。
この実験では、それぞれ30人から成る3つの学生グループに参加してもらう。そして、英単語の記憶力とプライミング効果との関係を調べている。

その3つのグループがやることは、スクリーンに次々に表示される100個の英単語を覚えること。表示される画面は次の通りだ。

グループ1(対照群)
英単語を0.5秒間ずつ表示していく。

グループ2(中立プライミング群)
英単語の表示直前に「プライミング刺激」を表示する。そのプライミング刺激には、人の顔写真を使う。中立というのは、同性の顔写真を使うという意味(オカマという意味ではない。。。)。参加した学生が女性なら、例えば女優の顔写真を使う。その顔写真を、10ミリ秒という瞬間映像として英単語の直前に表示する。

瞬間映像だから、誰の顔が表示されたかは意識にのぼらない。

グループ3(ポジティブ・プライミング群)
基本的にグループ2と同じ。だけど、プライミング刺激として、異性の顔写真を瞬間的に映す。例えば、実験に参加した学生が男性なら、映画女優などの顔をプライミング刺激として使う。

例えば、ブリトニー・スピアーズの写真が表示されても、それは意識にはのぼらない。


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さて、結果
この映像による学習後、英単語をどれくらい覚えたかテストしたところ、成績は次の通りだった。(100点満点。グループ全体の平均値。)
グループ1 61点
グループ2 56点
グループ3 92

つまり、異性の顔写真でプライミングすると、圧倒的に記憶力がアップすることがわかった。

さらに面白いのは、好みのタイプと記憶力アップとの関係。
実験では、事前アンケートで異性の顔のランキング付けをしてもらっている。そして、そのランキングとの関係を調べると、ランキングが高い顔でプライミングした単語ほど、覚えている確率が高いことがわかった。つまり、好みの顔でプライミングするほど、記憶力が良くなることになる。

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この研究を行った研究者のインタビュー記事が、ニューヨークタイムズに掲載されていた。
その中で、異性の顔写真で成績が良くなったことについてのコメントが興味深い。

オーディエンスの前で何かパフォーマンスをすると、オーディエンスがいない時よりもパフォーマンスが良くなる「オーディエンス効果」というのが知られている。我々の研究結果は、社会的に意味のある刺激、しかも異性という進化的にも重要な刺激でプライミングして、オーディエンス効果を引き出せた、と解釈できる。

さらに、

もし解釈が正しいとすると、例えば、嗅覚が発達している動物でフェロモンのような刺激をプライミング刺激として使えば、同じような記憶力向上が期待できるかもしれない。なぜなら、フェロモンは多くの動物種で個体識別のための重要な社会的キューだからだ。今回の現象の進化的起源は、今後大きな課題の一つになるだろう。

とも。なかなかアカデミックなコメントである。

もう一つの重要課題は脳活動との関係。
ということで、この研究者は現在、プライミングに使った刺激が、意識にのぼる時、のぼらない時とで、脳活動がどのように違うのか?それが海馬などの記憶に関わる場所とどう関係があるのか?脳内報酬系のドーパミンとどう関係があるのか?といった疑問にMRIを使って調べているそうだ。

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さらに、次のような興味深いコメントもしている。

これほど簡単な方法で記憶力が良くなることは非常に驚きであり、我々はこれを使ってビジネスも始める。

と話しており、「BrainPrime」なるインターネットサイトを近日中に公開するそうだ。そのサイトでは、

1.好きな俳優、女優の顔を選ぶ(4Uのような感じ?R指定
2.覚えたい情報(例えば英単語)を入力、あるいは覚えたい画像をアップロードする

この2ステップだけで、この一連の「プライミング刺激+覚えたい情報」が映像として流れる仕組みになっているらしい。

この研究結果がもし本当だとすると、覚える効率が格段に上がる。例えば、明日試験だ、という場合、試験に出そうな重要キーワードを入力すれば、試験の点数が上がるかもしれない。

さらに面白いのは、一つだけスポンサーの企業名をプライミング刺激として表示するらしい。そうすることで、そのスポンサー企業の広告をクリックする割合が増え、それがこのウェブサイトの収入源になるとか。コーラの逸話に近い。

このBrainPrime、インターネット業界の新しいビジネスモデルになるとのことで、すでに特許を取得したらしい。サブリミナル効果を応用して、広告サイトへ誘導する技術全般の特許を押さえたそうだ。

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それにしてもこのBrainPrime、2つの点で倫理的な問題を生みそうだ。

第一に、テレビなどでは禁じ手とされるサブリミナル効果をウェブの世界へ持ち込む点。
第二に、脳機能を高めるウェブサイトである点。
ドラッグのように、倫理的に問題になるのだろうか?一つの勉強法だし、なかなか線引きが難しいところではある。

今後、議論を巻き起こしそうだ。

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ちなみにこの研究、ごく最近、サイエンスに報告された論文と発想が似ていたため(以下参照)、一流の科学雑誌には掲載されなかったようだ。この論文は、4月1日発売の科学雑誌ジャーナル・オブ・フロード・サイエンス(年一回発行)に掲載された。


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文献
J Fraud Sci 2008 Apr 1; 4(1): 401
Positive social image unconsciously boosts memory performance.
Fool April.


Science. 2008 Mar 21;319(5870):1639.
Preparing and motivating behavior outside of awareness.
Aarts H, Custers R, Marien H.
(意識にのぼる)良い意味を持つ刺激が、意識にのぼらないプライミング刺激、しかもその内容によって効果が変わり、運動パフォーマンスがアップする、というホントの話。(ウソエントリーで「ホント」と書いても信用されないか!?)

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