4/26/2008

最近知った技術たち

こんな技術・ツールがあったら良いなぁ、というウィッシュリストを、誰もが持っているかもしれない。

単調な実験を、不満をいわず、ひたむきに、しかも正確にやってくれるロボット
論文や研究費申請書を、セクシーに仕上げてくれるAI
とか。。。
(実現すると、科学者の失業者はさらに増えるか。。。)


それはともかく、
これまでできなかった研究ができるかも?という意味で、最近知ったすごい(かもしれない)技術を中心に、4つネタを。

1.ラマン顕微鏡
最近の論文を見て、ラマン顕微鏡なるものを知った。何となくすごそうな気がした。何がすごいかというと、蛍光顕微鏡と違って、複数の分子を同時に調べられそう。

基本をちょっと調べてみた。踏み込んだことはわかっていないし、たぶん誤解している部分もありそう。

情報源としては、英語版wikipediaのRaman spectroscopyRaman scatteringが基本を知るのに役立ちそう。

光を分子にあてると光が散乱する。その時、もとの光と異なる波長の光も散乱するらしい。ラマンさんが見つけたからラマン散乱というらしい。

光が当たって分子が振動したり、回転したり、電気的なエネルギーが変化するのに伴って、光の波長が変わるらしい。レーザーで光をあてて、散乱してくる光の波長成分をスキャンすれば、どんな分子がどこにいるか知れるとか。

自分の理解では、それがラマン顕微鏡の基本原理。

ラマン顕微鏡では、跳ね返ってきた光の波長のスペクトラムを一気に知れるらしく、複数の分子を同時に可視化できるポテンシャルがあるらしい。もちろん、散乱時に波長を変える光の強さは非常にショボイらしく、検出の感度が当面の課題だったらしい。

が、SERSなるラマン顕微鏡の一種が、一つのブレークスルーになったようだ。
表面プラズモンなるものを応用するらしい。完全に化学や物理だな。。。もはやついていけず。。。

ようは、SERSだと感度が大幅に上がるらしい。おかげで、生物学・医学への応用に道が開けたらしい。

今回見た論文では、そのラマン顕微鏡を使って、マウスの生体から非侵襲的に分子(Nanoplex Biotagsとカーボンナノチューブ)の可視化に成功している。

論文の図を見ると空間解像度はまだ高くはなさそうだけど、レーザーを使うのだろうから、このあたりはどんどん上がりそう。例えば、MRIで分子イメージングするよりも小規模な装置でできそうだし(ホントか?)、少なくとも基礎研究という意味ではなかなか良い気もする。

神経科学にもきっと応用されるか。
将来、複数の分子局在や動きをリアルタイムで見れるのか?
でたくさんの分子がゴチャゴチャ動き回るのが見れたら、科学的にどうこう以前に、とりあえず楽しそう。シナプスを刺激して、たくさんの分子たちがどう動き回るかワンショットで見たり。。。ボスの仮説を直接検証したり。。。

例えば、ニューロンのpotassiumチャネルかsodiumチャネルにナノ分子か何かでタグ付し、チャネルの開閉にあわせた振動を可視化してニューロンの活動を高時空間解像度で可視化したりできないだろうか?
勝手に夢を膨らませてみた。

文献
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Apr 15;105(15):5844-9. Epub 2008 Mar 31.
Noninvasive molecular imaging of small living subjects using Raman spectroscopy.
Keren S, Zavaleta C, Cheng Z, de la Zerda A, Gheysens O, Gambhir SS.


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2.バクテリアで遺伝子治療
これは新しいわけではないらしいが、新しく知ったこと。

最近の総説に紹介されていた文献で知った。

遺伝子を導入するのにウィルスはよく使われる。
例えばハエやマウスなら、ノックイン、トランスジェニックとしてゲノムに直接DNAを入れれば良いけど、霊長類、特に人の病気の治療目的で遺伝子を導入したい場合、そうはいかない。

だから、ウィルスなどのDNAの運び屋を使う。
バクテリアもその運び屋に使われているらしいことを知った。

今はがん治療のための臨床試験が行われているらしい。

神経科学でも遺伝子導入は非常に大事。
バクテリアなら、ウィルスより長い遺伝子を持たせることができそうだから、例えば細胞種特異的に遺伝子導入をしたい場合、近い将来良い候補の一つになるのだろうか?
このあたりは全然知らないけど、万が一のための備忘録として。。。

文献
J Pathol. 2006 Jan;208(2):290-8.
Bacterial gene therapy strategies.
Vassaux G, Nitcheu J, Jezzard S, Lemoine NR.

Trends Biotechnol. 2008 May;26(5):267-275. Epub 2008 Mar 20.
Membrane-active peptides for non-viral gene therapy: making the safest easier.
Ferrer-Miralles N, Vázquez E, Villaverde A.

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3.光でタンパク質の編集
光合成関連のタンパク質を利用して、二つのタンパク質を光でつなげる技術、とでも言ったら良いか?
そんな方法を開発して、酵母で試した論文が報告されていた。論文の最後に、哺乳類の細胞でお試し中、と書かれている。

これも神経科学に応用できそうか?
アイデアしだいでいろんなことができそう。

文献
Nat Methods. 2008 Apr;5(4):303-5. Epub 2008 Feb 13.
Activation of protein splicing with light in yeast.
Tyszkiewicz AB, Muir TW.

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4.約十年前の予言
最後に最近読んだクリック論文。意識に関する論文ではない。

この論文では、分子生物学でどんな「ツール」を用意すればハッピーか、クリックのウィッシュ・リストを紹介している。今読んでもすごいと思うから、ホントにすごい人だったんだ、というのがわかる。(むしろ今読むからすごいと思うのかもしれない)

おそらく5年、10年後でもウィッシュ・リストのままかもしれないこともありそう。

クリックは視覚を中心に意識の問題に取り組んできたからか、サルを対象に研究している人向けに書いている節もある。例えば、分子生物学という文脈ではないが、マカクでグローバルレベルのコネクトームをやれ、と言ってたりもする。また、「この領野にはこんな反応をするニューロンがx%いました」、という研究はサイエンスではない、とかも吐いていたりする。。。(ついでに心理学者に対しても毒を。。。)

とにかく、これを読むと、如何に楽観的に深く考えるか(ついでに毒を吐くか?)、が重要なんだな、というのが伝わる。

もし今も生きていたら、どんなウィッシュリストなんだろう。。。

文献
Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 1999 Dec 29;354(1392):2021-5.
The impact of molecular biology on neuroscience.
Crick F.

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