1/04/2009

仲間との議論は大事

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

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新着のサイエンスに、クラスの学生たちのパフォーマンス向上に関する面白い論文が掲載されていた。

仲間同士の議論を積極的に持ち込むことで、一人で問題を考えた時は正解がわからなかった学生が、他の類似問題に適用できるくらいまでに知識を獲得し、たとえ誰も問題の答えを知らないケースでも、正解にたどり着く割合が増えたり、とにかく、グループ全体のパフォーマンスが上がるらしい。(細かいところは理解してませんが。。。)

この研究、どれくらい一般化できるのかはわからないけど、学習一般から未解決の問題にどう取り組むか、といったことを考える上で参考になりそうだし(ソーシャル・ラーニング&アクティブ・ラーニング?)、集団による意思決定、という点から考えても面白いかも、と思った。

ある意味、学生間の相互作用によって、自己組織化的に「学生集団」が正しい方向へ進む、と考えられなくもないか。経験的に何となく知っていそうなことでも、こうしてしっかりデータを示されると、もっとこういうことを積極的に取り入れるべきなのだな、と再認識させられる。

新年に出た、なんだか面白い論文でした。

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文献
Science. 2009 Jan 2;323(5910):122-4.
Why peer discussion improves student performance on in-class concept questions.
Smith MK, Wood WB, Adams WK, Wieman C, Knight JK, Guild N, Su TT.


ちなみに新着のサイエンスでは、教育とテクノロジーに関する特集が組まれていて、教育用ゲームなど、幅広いトピックが扱われている様子。

2 comments:

Anonymous said...

Shuzoさんへ
確かに面白い論文ですね。
その“仕組み”が知りたいですけど、ド素人のわたしが思いつくのは、

① 多人数の“脳”が、あたかも“ロー・スペック”のCPUの並行処理によって“スーパー・コンピューター”並みのパフォーマンスを発揮する事ができるようになった。

② 人間は、一人ひとりの“個体差=個性差”によって、少しづつ『モノを観る角度』が異なっており、それらの人達が、お互いの持っている“情報”を交換する事で、『(より)正確な『情報像』を得る事が可能になり、“正解”に近づく事が出来る。

と、言った所ですけど、或いは、その両方の作用が働くのかも知れませんね。まあ、これは、パソコンのアナロジーなんで、“脳”と言う複雑な機構に当てはまるかどうかはわかりませんけど、その辺はShuzoさんの“専門分野”ですから……Shuzoさんは、どのように考えられますか?

Shuzo said...

阿瀬王さん、コメントありがとうございます。
レスが遅くなり、申し訳ありませんでした。。。

私はここで紹介した論文の専門家ではないですが、素人として、仕組みというかルール的なことをいろいろ考えられそうですね。

心理学(というか行動経済学?)の本などで、社会的なコンセンサスが個人の意思決定に影響を及ぼす、というのは有名な話ですから、そのラインで考えますと、今回の場合は、議論という社会的相互作用を介することで、合理的というか、よりロジカルな意思決定へと集団を導くということかもしれないですね。

それから、理論生態学の研究で、「コンセンサス意思決定」というトピックがあって、そのラインで考えるのも面白そうですね。Corzinという人が面白い研究をしてます。

あとアナロジーとしては、個人レベルの考えを「遺伝子」的な情報と考えて、フィットネスが強い(例えば、反論等に強い)考えが生き残って、そのコピーが増殖して集団に伝播していく、といった見方をしても良いかもしれないですね。ドーキンスの本、実は読んだことがないですが、彼はそんな議論してたりしないでしょうか?

それから、私は、脳と現在のパソコンは全く別物、というフィロソフィー(大した根拠はないですが)を持っていますので、パソコンのアナロジーがどれくらい有効かは「懐疑的」という立場を一応アピールさせていただきたいと思います。あくまでフィロソフィーなので、客観的にはどちらもありだと思います。