1/25/2009

アクティブ・ミーティング

ミーティングというと、あらかじめ発表者が決まっていて、それ以外の参加者は基本的には「受身」的なことが多い。ミーティングの企画者がトップダウン的にミーティングを形作っていく感じ。

けど、ボトムアップ的な要素を強くしたミーティングは、非常にアクティブな議論が繰り広げられて、最先端の意見交換ができる非常に有意義な場となる・・・・

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昨日、ジョンズ・ホプキンス大で開催された一日ミーティングに参加した。
このミーティングは、Auditory Cortex Splash2009という名のミーティングで、文字通り聴覚野の研究者が集まる超マニアックなミーティング。今回が初の試み。

このミーティング、僕がこれまで参加したミーティングの中で最もインタラクティブで、内容も「ボトムアップ的」に決まって、非常に刺激的だった。

どういう意味で「ボトムアップ」だったか、どんな運営方法だったか、備忘録として詳細を。

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企画アナウンスと参加者募集

企画のアナンスが流れたのは、年末クリスマス頃。(開催1ヶ月前)
まず、聴覚系の主要PIへ向け、オーガナイザーがアナウンスメールを送った。

うちのボスがそのメールをラボメーリングリストに転送し、部下はその存在を知る。

面白そうなので、僕も参加メールをオーガナイザーへ出す。
(以降、連絡用メーリングリストに追加される)

ちなみに、そのアナウンスメールには、
誰が来て、何を話すか決めてない
とあった。(ここがこのミーティングのミソ)

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企画募集
年明け(2~3週間前)、オーガナイザーからメールで、2つのことを聞かれる。
1.興味のある質問を2,3挙げて。
2.もし未発表データを話したかったら、その内容をごく簡単に教えて。
(ただし、一人に割り当てられるまとまった時間はないけど、とも)

締め切りまでに、気になっている事二項目と、発表したい未発表データの内容をオーガナイザーに伝える。

ここで参加者から募った質問が、ミーティングの内容となる。
これが「ボトムアップ」という意味。

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企画途中経過

締め切り後、再びオーガナイザーからメールで、集まったすべての質問(54!)が網羅された添付ファイルが送られる。

ついでに、事務的な質問も3つ。
(懇親会に参加するか、駐車券はいるか、学生やポスドク用の宿泊施設がいるか)

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プログラム発表

ミーティングの数日前、オーガナイザーが質問集をカテゴリーごとにまとめて、プログラムとして参加者にメールした。

最終的には、4つのカテゴリーに分けられ、各カテゴリーにそれぞれ6,7の質問が書かれていた。当日は、この質問について議論した。

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当日

朝9時スタート。
参加者は40~50人くらいだったか。
この分野の有名PIたちからポスドクや大学院生までが参加。
ミーティング会場は、50人入ると少し狭いか、というくらいの小~中会議室くらいの広さ。

まず、本編に入る前に、昨年末亡くなった偉大な解剖学者Winerさんの功績がごく簡単に紹介された。

そして本編。

1セッションあたり2時間くらいの時間が割り当てられ、各セッションごとに割り当てられた座長的な人がモデレーターとして一応仕切って議論が進行。

まずモデレーターがとっかかりを作って、各セッションで割り当てられた問題について、みんなで自由に議論をしあうという形式。

プロジェクターは、結局、その問題が書かれたスライドを表示するのに使ったくらい。データや考えを視覚的に伝えたかったら、プロジェクターではなく、ホワイトボードに手書きして議論してね、という感じ。

とにかく学生さんも含め、いろんな質問・回答がとびかった。もちろん、PIたちが議論の中心にはなったけど、一部のポスドクや学生は、アクティブにどんどん発言していた。

4つのカテゴリーに分けて進行はしたけど、一部は当然オーバーラップする部分もあって、議論がいろいろ発散したりもしたし、コンセンサスを形成させようとしたりと、まるでラボミーティングの拡張版のような感じで進んでいった。

最後に、今後の大問題を10くらいリストアップして終了。

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何を学んだ?

聴覚野の研究者たちの今の考え・哲学をぶつけ合ったという点で、非常に刺激的だった。今回集まった聴覚野研究者がどういう方向へ進もうとしているか、伝わってきた。

今回の形式、アクティブ・ラーニングに対抗して、「アクティブ・ミーティング」とでも言ったら良いかもしれない。大成功と言って良いだろう。

成功の鍵は、やはり多くの人が積極的に議論に参加した、ことに尽きるわけだけども、そのための要素として、参加者の規模、そして、問題意識というか研究分野がみんな共通していた、という点もクリティカルだったように思う。

テーマ(聴覚野)に興味を持っていなかったら、そもそも成り立たない企画だったから、参加者が人生をかけて(?)研究しているから、熱い議論が繰り広げられたのだろう。

それから、その場で問題を提起して考えるだけでなく、あらかじめ問題を参加者全員から募って(半ば義務のようにも感じた点が良かったかも)、オープンにした、という点も良かったかもしれない。

今回のミーティングは、いわゆるラボミーティングのプログレスレポートに毛がはえたようなものといえば、そうだけども、普通のラボミーティングと違って、プロ中のプロが大勢集まっているから、誰かがフォローアップしたりして、中途半端なものではなく、非常に質の高い議論が繰り広げられた。(なので、傍観者状態になったこともしばしば。。。)

その意味では、PIクラスの人が全体の1割近くを占めてコアを形成していた、という点も重要だったように思う。議論のハブ役。

ちなみに、このミーティングは今後も開催していくらしい。ぜひ続けて欲しい。
次回は、ホントにラボミーティングの延長として、解釈に困っている未発表データをネタに議論していこう、とのこと。

3 comments:

オーツ said...

分野が違うので、acronym が理解できません。
PIというのは何の略でしょうか。
ネットで検索しても、他の意味ばかりが出てきて、さっぱりわかりません。辞書類でも見当たりません。
よろしければお教えください。

Shuzo said...

オーツさん、こんにちは。

すみません、いわゆるジャーゴンを断りもなく使ってしまって。。

PIとはPrincipal Investigatorの略で、研究主宰者、研究室のボスのことです。独立した研究室を持っていて、それを運営している人です。

オーツ said...

Shuzo 様
 オーツです。
 回答、ありがとうございました。
 なるほど、そういうことだったのですか。
 だいたいの意味は文脈でわかったのですが、正確な意味はわかりませんでした。
 けっこう理系の人に書いたものに登場しますね。