ネットワークの中で、各ノードの持つエッジ数の確率分布がべき乗則に従うスケールフリーネットワーク(scale-free network)。
スケールフリーネットワークに関するBarabasiたちの論文が報告されて10年。
その論文では、異なると思われていたネットワークたちは、実はこのスケールフリーという共通性を持つことがわかり、このスケールフリーネットワークがどのように出来上がるかそのモデルも示された。
そんな論文の発表10年を記念(?)して、サイエンスでは特集が組まれている。
特集の概略に続いて、Barabasi自身が記事を寄せている。
非常に読みやすい記事で、スケールフリーネットワークの論文がどのような文脈で発表されたか、その後の発展、そして将来展望がまとめられている。
トポロジーだけでなく、やはりシステムとしての振る舞いが重要問題ということで、後半はそれについて触れられている。彼自身は、分野を超えた法則性があるのではないか、と信じているようだ。
そして、そのようなブレークスルーが次の10年くらいで訪れるか?ということに関しては、「おそらく(perhaps)」と見ていて、彼自身が最近取り組んでいる分野でそのブレークスルーが起こると思っているようだ。
いろんな流行的なことが起こったけども、ますますはっきりしてきたことは:
Interconnectivity is so fundamental to the behavior of complex systems that networks are here to stay.と最後に結んでいる。
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つぶやき
途中、コネクトームという言葉が出てきたりはしているが、神経科学は何となく蚊帳の外という印象を受けた。。。(Bullmore とSpornsの総説の紹介はあるが)
そもそもデータを集めるという部分が他の分野に比べて大きな(狭い?)ボトルネックになってるのではないか。
将来、「脳も他の分野で10年前にわかったことと同じでした」というのはなんか癪に障るから別の問題で勝負(?)しないといけないのかも。。。といって、interconnectivityを調べないと先に進める気はしないわけで。。。研究ツールもあって、多くの優秀な人たちが取り組んできたのに、ネットワーク、という点では現状がこれということは、それだけ脳はひどく複雑ということなのか。。。
それだけ、やりがいのある分野でもある、ということで。
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参考情報
Science. 2009 Jul 24;325(5939):412-413.
Scale-Free Networks: A Decade and Beyond.
Barabási AL.
今回紹介した記事。
<関連書籍>
Barabasiが書いた啓蒙書
新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く
最新の研究をフォローするにはもはや古典になっているかもしれませんが、すばらしく良い本です。彼らがどういう経緯で10年前のサイエンス論文の発表に至ったかなども物語風に書かれていて、自然科学の読み物としても逸品。
Dynamical Processes on Complex Networks
バラバシではないですが、今回の特集から存在を知って、早速アマゾンで注文(なので激しく未読)。いくつかの特集記事で引用されているので、プロが推薦する本だと思われます。
<今回の特集>
ちなみに、今回の特集のButtsという人の記事では、ネットワーク解析での心構えとして、ネットワークとは、ノードとは、エッジとは、時間スケールは、という問題について例を挙げながら導入的なことを説明している。
神経生理学で考えると、解剖学のデータがないとエッジの定義がどうしても難しくなり、ボトルネックとなっている。その意味でもコネクトームは大事なステップだと思われるが、その後、コネクトームとネットワークの振舞いを結びつけるのにも、実際上たくさん壁がありそう。。。
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導入部分しか読んでませんが、Schweitzerという人たちは、いわばネットワーク経済学(そういう分野があるか知りませんが)について書いていて面白そう。
Vespignaiという人の記事は、上述したBarabasiたちが希望を見出している分野に関する記事。読みましたが、わかりやすく書かれていて、この分野の最新論文・トピックの情報源としては良いと思われる。
という感じで、この10年間でこの研究分野だけでない他の発展・発達・危機なども絡まって、とんでもなく広い分野になっている模様。
update:
この記事では、ネットワークというよりもっと広く複雑系研究に関する記事で、経済、渋滞、伝染などよりリアルワールドと直結する研究分野について紹介されていて面白い。この記事のライターへのインタビューがpodcastとしてあり。
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