脳内セロトニン(serotonin)の量が減ると、不平等な提案に対してより拒否の態度を示すらしい。
新着のサイエンスに掲載されている。
研究では、20人のボランティアに、一時的にセロトニンの量を減らす処理(前駆アミノ酸・トリプトファンを枯渇させる処理)を施し、ultimatum game(日本語訳ソース)というゲームをやってもらう。
このゲームでは、提案者による「山分け」の提案をどれくらい受け入れるか調べる、実験経済学の課題のようだ。例えば、1000円の獲得賞金のうち45%を山分け、という提案を受けたら、それを受け入れるか、拒否するか答える。当然、アンフェアな提案に対しては、高い確率で拒否する。
そんな実験をした結果、プラセボ処置をされた時と比べ、セロトニン量が減ると、アンフェアな提案(20%だけの山分け)に拒否する確率が20%弱上昇することがわかった。
この不公平なオファーに対してより拒否を示すようになったことは、気分(mood)、公平性の判断力、行動抑制の変化として簡単に説明できないらしい。
ということで、セロトニンは不公平に対する行動レベルの反応を変化させる、と著者たちは結論付けたようだ。
ちなみに、このultimatum gameで不公平なオファーを拒否する時、脳のどこがかかわるか?
前頭前野、特にその背外側部と腹側部が関わるのではないか、という研究が以前に行われたらしい(例えばこちら)。特に腹側の前頭前野が障害されると、不公平な提案により拒否を示すそうで、今回の結果と行動のレベルでは似ているそうだ。
脳内セロトニン
前頭前野の腹側部分
不公平なことへのアクション
それらの関係、今後の研究に期待される。
アンフェアなことに対して拒否感を示しやすい人(不平をよく言う人?)は、セロトニン量が他の人と違うのだろうか?そういう人は、前頭前野の腹側部分の活動が他の人と違うのだろうか?
最近、不満をよく口にするな、と思った時、トリプトファンを摂取すると、不平を人並みに言うようになるのだろうか?
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文献
Science. 2008 Jun 27;320(5884):1739. Epub 2008 Jun 5.
Serotonin modulates behavioral reactions to unfairness.
Crockett MJ, Clark L, Tabibnia G, Lieberman MD, Robbins TW.
6/28/2008
エコヒイキとセロトニン
posted by Shuzo time 11:01
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2 comments:
Shuzoさんへ
う~ん。
非常に思い当たる節があります。
『不公平な提案』と言ってしまえば、『利己的な不公平』だけのように捉えられますが、
「広く社会的な不公平感に対する義憤」もその中に入るのであれば(もちろん、“社会的義憤”と言っても、最終的には“利己的”な不平等に繋がってきますケド)
わたし、自立神経系が乱れて、睡眠障害を起こしているようなのですが、
非常に社会的な不平等感に対して憤りを感じます。
実は、順序は“逆”なんですけどね。
仕事上で、「社会的(かつ利己的?)義憤を感じた」ので、そのような“発言”をしていると、夜勤職場に左遷されまして、それで、睡眠障害を起こしたのですけど。元々“眠りが悪い”方だったので、一時は、完全に“不眠症”に。
でも、セロトニンって、睡眠リズムに関係する“物質”ですよね。
「このやり場のない“社会的(かつ個人的)義憤”はどこに持って行けばいいのか」
って、感じを持って居るのですけど、
“セロトニン”を個人輸入して摂取すれば、この“義憤”も改善されるのですね。
でも、今は“義憤”を通り越して、
「好きにして、財政破綻でも何でも起こせば」
って、どうでも良くなっているのも事実ですけどね。
ご心中お察しします。。。
今回の話はあくまで「研究室内」の話なので、どれくらいリアルワールドに当てはめられるかわかりませんが(と、一応前置き的なことを書かせてください)、
> “セロトニン”を個人輸入して摂取すれば、この“義憤”も改善されるのですね。
セロトニンの前駆アミノ酸の「トリプトファン」を摂取しないと脳内セロトニン量が減るようなので、セロトニンでなく、「トリプトファン」を摂取すると良いかもしれません。
ただ、あくまで「人並み」に不公平なことに拒否を示すようになるだけで、何でも受け入れられるようになるには、プラスアルファの何かが必要なのかもしれません。(あまり無責任なことは言えませんが。。。)
ちなみに、日本語ウィキペディアのトリプトファンの項目にはこうあります:
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%97%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3
「必須アミノ酸なので基本的には食品中のタンパク質が多いほど多く含まれる。
したがって、肉、魚、豆、種子、ナッツ、豆乳や乳製品などに豊富に含まれる。
適量の摂取は神経を落ち着かせ、睡眠をうながす作用があるといわれる[1]。」
これを信じれば、天然食品のタンパク質をしっかり摂取すると良いかもしれないですね。
「但し、過剰に摂り過ぎると肝硬変を招く恐れがある。」
ともあります。。。
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