8/17/2008

神経手品学(Neuromagics)?

ネタのようなタイトルですが。。。

手品のテクニック・発想を応用して、注意とアウェアネスを実験的に操作し、意識の謎の迫る研究分野、とでも言ったら良いだろうか。今回は、その分野(?)に関連した情報源を。

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すべてはASSC 11th Annual Meetingがきっかけ?

昨年、ASSC(意識を科学的に研究する人たちのための学会)のミーティングがラスベガスで開催された。そこで、プロマジシャンたちが特別出演するシンポジウムが企画された。

タイトルはThe Magic of Consciousness

それ以前の、手品と神経科学との関係はフォローしていません。。。けど、これが一つきっかけであったのは確かだと思う。

そのシンポジウムでは、5人のプロマジシャンが登場した。そして、実演を交えながら、如何に聴衆の注意をひきつけながら手品をするか、という手品のフィロソフィーというか、テクニックというか、とにかくテレビで見るショーとはまた全然違う角度からマジシャンたちがパフォーマンスを見せて(魅せて)、語ってくれた。

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そのシンポジウムの様子が、昨年、NatureNew York Timesで紹介された。

Mind Science Foundationのウェブにムービーが公開されている。

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そして1年後の最近になって、総説や新聞記事などが掲載された。

まずはNature Review Neuroscienceに、総説というか、この分野の展望についてまとめた論文がオンラインに掲載された。(こちらはまだ読んでません。PDFをフリーで読めます。*オンライン版のリンクのため、すぐにリンク先が変わる恐れありです。お早めに。)

イリュージョンについて幅広くまとめ、手品と認知神経科学の融合のポテンシャルについてまとめられている雰囲気。

マジシャンと彼らのテクニックを研究して、注意とアウェアネスを実験的に操作する強力な方法論を学ぼう。そして、そのような方法論は意識の行動レベルと神経レベルの研究に有用なのではないか、と謳っているようである。

ちなみに、共著者のApollo Robbins、TellerJohn Thompsonはシンポジウムに出演したマジシャン。

この論文にあわせてNew York Timesに記事が掲載された。

さらに、この記事などを受けて、いくつかのブログでエントリーが立てられている。
NeurophilosophyBrain WavesBoolah

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この分野、表面的には「手品と脳科学の融合」というセクシーさでとりあえず一般ウケしそうではある。けど、Nature Review Neuroscienceの論文にもあるように(まだ読んでいませんが)、やはりマジシャンのテクニック・発想から神経科学者が学べることは非常に多そう。

逆に、手品を、これまで科学者が研究してきたイリュージョンなどからどれくらい説明できるのか、という点でも面白そう。その意味では、マジシャンもいろいろインスパイアされるところが、ひょっとしたらあるのかもしれない。(茂木さんとマジシャンのトーク、もしまだ実現していなかったら面白い企画かも?脱線)

個人的に興味があるのは、注意とアウェアネスを実験的に操る、という点に注目して、それをヒト以外の研究に拡張できるか、という点。ホントにマジックショー的な要素を考慮に入れるなら、エンターテーメント的な要素も課題に取り入れ脳状態を高いレベルで操作しつつ、さらに注意やアウェアネスを操るような課題を作れると面白い研究になりそう。(ちと違うか。。。)サルが手品をするヴァーチャル映像を作って、ソーシャルな側面を入れつつ実験するとか。。。

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関連情報
Nature Review Neuroscienceの情報をPubMedで確認できしだい更新します。

neuropodでMartinez-Condeさんのインタビューがある。(フルバージョン
注意を操作することで、ひょっとしたら教師が生徒の注意をコントロールしたり、注意に問題のある子供の手助けになるかもしれない、といったimplication、なるほど、と思った。

Trends Cogn Sci. 2008 Aug 5. [Epub ahead of print]
Towards a science of magic.
Kuhn G, Amlani AA, Rensink RA.
という総説も最近出たようです。
新着のNature Review Neuroscienceに間に合わなかったとこを見ると、このTICSの情報を察知して(いわゆるスクープというやつですか)、あわててオンラインで出して(しかもフリーダウンロード)、マスコミにも情報を流したのでしょう。確かに、ニューヨークタイムズの最近の記事、昨年このネタを扱っているのに、また同じネタで記事を掲載するというのはおかしいですね。さすがNature系というかなんというか。。。サイエンスも(は?)政治力がものを言います。。。

昨年のASSCミーティングの様子は過去のエントリー(こちらこちらこちらこちら)にて。

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