8/23/2008

An Odyssey Through the Brain, Behavior and the Mind

ボスのケンにコピーを借りて主要箇所を読んでみた。
この本はVanderwolfが2003年に出版した本。退官講演的な内容になっている。

Vanderwolfとは誰か?

自分のボスの元ボスの元ボス(Neurotree)。
ケンの元ボスの元ボス。
Buzsakiの元ボス。
それが、Vanderwolf。

Hebbの弟子と言っても良いし、海馬で見れるシータオシレーションシャープウェーブの行動との関係を初めて報告した人、という説明がより良いか。

とにかく偉大な神経科学者。

Vanderwolfのスタンスは、「注意、認知、意識、知覚、記憶の神経基盤を探る」ではなく、あくまで脳活動アリキで、それが感覚入力や行動出力とどのように関係があるか示していく、というもの。冒頭のPrefaceで、そのスタイルについてまず手短に書かれている。

続く章では、まず彼がHebbのもとで大学院生として、視床(midline/intralaminar thalamus)の研究をし、その後、海馬や新皮質のオシレーションと(広い意味で)行動との関係を明らかにしていく様子について、教科書というより物語風のスタイルで書かれている。

彼がどのように感じ、どのように研究に取り組んでいったか詳しく書かれている。テクニカルな表現も多く、非常に臨場感あふれる自伝的な本。実験家としてどのように自然現象を観察し洞察を得ていくか、そのプロセスも学べる。

そして、終盤の11章The Mind and Behavioral Neuroscienceでは、心脳問題に対する彼のフィロソフィーが書かれ、Prefaceでの主張がより明確になる。彼の主張は、アリストテレスといった古代ギリシャ哲学に起源を持つ心理学的発想は、単に”cultural artifacts”であって、その神経基盤を見つけるというスタイルはbad scienceだと主張する。そうではなく、どのように神経系は行動を生み出すのか、という点にもっと注意を払うべきで、もっと生物学的な観点から客観的な記述に基づいて真実を明らかにするという戦略を取るべきだという主張をしている。

ちなみに、Buzsakiがポスドクとして働いていた時のエピソードが、6章に登場する。Vanderwolfは二つの問題に取り組みたいと当時考えていたようだが、Buzsakiはそれとは違う第三の問題に取り組んだそうだ。そして、彼がRutgers大で職を得るまでの話が1ページほどだが記述されている。

海馬、新皮質を中心に、オシレーション、脳状態、そして行動、心の問題を考えたい場合、一読に値する本である。

1 comment:

Anonymous said...
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