下手に経済をネタにすると、無知を暴露して墓穴を掘るだけな気もする。が、あえて。。。
この一週間、株式市場が揺れに揺れた。
やれサブプライム問題だ、商品価格だ、公定歩合だ、景気刺激策だ、景気後退の鮮明化などなど。個人的な生活にもいろいろ関係のありそうなことがいろいろあった。
まずサブプライム問題は、ローンも組んだことがない自分には全く関係ない。(株価下落というトバッチリはうけてたりもする。。。あいたたた。。。)
次に、商品価格のこの1年ほどの高騰はシャレにならん。
まずガソリン代が高止まり。
原油以外の商品価格も高騰したおかげで、ラトガーズ大、特に自分のいる研究所の人たちがランチとして愛用しているタイレストランが値上げに踏み切った。これはまさに家計を直撃である。
5.90ドルで食べれたのが6.50ドルへ。
月12ドルくらい出費がかさむ。
せこい?
けど、2回分食べ損なうことになる。タックスをごっそり持っていかれるアメリカのポスドクとしては、せこくない切実な話だったりもする。
次に、公定歩合の異様なまでの緊急引き下げ。
もしこれからローンを組もうという人には良い話か?家の価格も下がってるし、数年のうちに家でも買おうという人には良い知らせだと思われる。(公定歩合をさらに下げてくれそうだし)けど、サブプライムですでに苦しんでる人には何の得にもならないのではないか。
景気刺激策。
専門家のいうことはようわからんが、庶民としてはちとうれしい報酬である。ニュースを知ってドーパミンニューロンが活動した気がする。自分の理解が正しければ、少なくとも300ドルはタックスが返ってくるらしい。うちには子供が一人いるからさらに300ドル。
さて、何に使う?
そのお金が向かうセクターの株は短期的に上がったりするのか。(もうすでに織り込まれたのか?そのあたりがよくわからん。織り込むって何??)
とりあえず、100ドルを使って我慢している本くらい買いたい。(涙ぐましい希望)
それにしてもこの政府の動きは早かった。そのスピードには驚いた。
日本でバブルがはじけた直後にこういう動きがあったのだろうか?というか、今動いた方が良いのでは?日本は経済と政治の乖離度がアメリカより大きい気がする。というか、すでに借金まみれで首回らずか?
日本といえば、株価にもあらわれているように、相対的な魅力がどんどん低下している気がする。何となく一人負け的な印象すら受ける。実際、アメリカの目はどんどん中国へ向かっているのを感じる。どの政党の誰が大統領になっても、一昔前の「日本バッシング」というのはトーンが落ちて、「中国バッシング」的な方向に行くような勝手なことを思ったりもする。バッシングを受けているうちが華である。日本にはもっと頑張って欲しい。心底思う。
と、ここまでが今週思ったこと。
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さて、ここから強引にサイエンスの話へ持って行ってみる。
株価はどうやって決まるか?
もちろん、表面的な辞書的なことを聞いているわけでなく、株取引に参加している人たちが、どんな見えない・文章化されていないルールにしたがって行動し、集団として意思決定をしているか?ということを気にしている。小難しい話ではあるがちょっと考えてみる。
おそらくそんな研究はたくさんあるのだろう。
けど、自分は全然知らない。なので、知っている情報のうち強引に結び付けられそうな情報に基づいて考えみる。
例えば、「集団による意思決定」は、複雑系というか、動物集団行動の研究として面白い研究がある。というかごく最近知った。ConradtとRoperの研究やCouzinたちの研究は面白い。
「株式取引における集団的意思決定」を考える上で気になることは少なくとも2点。
第一に、各エージェントが、ローカルだけでなくグローバルな情報も得ることがある、ということ。情報伝達の仕方が動物集団行動とちょっと違う気がする。第二に、各エージェント格差が大きい。つまり、各エージェントの影響力の分布は、間違いなく平等ではなく、おそらく正規分布でもなく、たぶんログノーマル的な分布か。このあたりを考えてモデルを考える必要があるのか?けど実験による検証は不可能に近いから、机上の空論になるおそれもあるか。。。
それはともかく、まず第一の点について補足。
株取引の場合、インターネットのおかげで、大きなインパクトを与える情報は一瞬で全体に広がる。一瞬で情報が広がるから、同期現象が過剰におきやすい。スーパーシンクロニーが起こる。インパクトのある情報が伝わると短期的に不安定な振る舞いを示す、というのは何となくわかる気もする。インターネットの時代前後で、株価の振る舞いを比較するのは面白いかも?それから情報を伝達する時の情報源は、必ずしも株取引に参加していなくても良い。株取引での情報伝達は、電話などで情報がローカルに伝わっていって意思決定する世界、とは若干違いそう。
第二の点について。
例えば、10万円くらいの資金で投資信託を買ってかわいく参加している人もいれば、インサイダー取引するアンフェアな連中がいたり、フランス有名金融機関のおバカさんのように、システムをハックして数兆円という想像できない額をスルような人もいたりする。ここまで異なる影響力を持った多様な要素からなるシステムはそうは見つからない。もちろん、ポジティブフィードバックが働き続けた結果としての今、という考えはありかもしれない。けど、エージェントの多様性はかなり重要な気がするがどうか。一方で個人の目的はゲインの最大化で一貫している。
他にもいろんな特徴があるのか?
では、脳はというと、各神経細胞がシナプスを介してバケツリレー的に情報を伝えていくから(教科書的には)、脳と株式市場は異なるルールで動いているような気もしないでもない。
一方で、株取引を実際にしているエージェントは脳を持っているので(最近は、AIがやってるヘッジファンドもあるとか、ないとか。。。「ヒト対AI 株取引バージョン」 である。。。脱線。)、エージェント内部はルールAが走るシステム、エージェントたちを集団としてみるとBという異なるルールで動く、というややこしいことになる。
と思ったけど、脳も違ってない気もしてきた。(あっさり前言撤回)
大脳基底部や脳幹からの情報、いわゆるアセチルコリンやらセロトニンは、グローバルな情報と考えられなくもない。その情報源は、例えば感覚情報処理に直接的に関与してなくても良い。
ローカルに情報伝達しつつ、グローバルな情報(脳状態、市場状態?)も受けながら、集団として意思決定なり、答え・値を一つに決める、そんなシステムと捉えれば、脳も株式市場も近いところはあるのか?例えば、グローバルな情報へのアクセス性というパラメーターを変えれば、実は脳シミュレーターが株シミュレーターになったりして、、、
んなアホな、、、、(暴走)
一方、多様性という点では、ニューロンは確かに多様ではある。けど、いわゆるニューロンの多様性とはちょっと違う気がする。けど、文字通りの「意思決定」に関する貢献度という点で考えれば、末梢のニューロンと連合野のそれとの影響力の違いを考えれば、アナロジーは考えられなくもないか?このあたりはよくわからん。
階層性、フィードバック、閾値によるストラテジーのスイッチ、多様性、などなど、、、そんなキーワードをどうやって消化させるか?
とりとめなく書いて不毛な話になってきたので、この辺でやめます。
補足
The Swingy Marketとは、各エージェントがスウィングしながら株価というswingyなメロディーを奏でているシステム、を指す。完全なでっち上げ用語。
1/27/2008
The Swingy Market
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4 comments:
はじめまして。いつもおもしろく読ませていただいてます。
脳と株取引が決定的に違うのは、株の世界は騙しあいというところですかねぇ。
集団の中で騙しあいをしながらも意思決定がある。。
ともあれ、経済現象もヒトの意思決定の末に起こるのですから面白いですね。
ゴンさん、はじめまして。
なるほど、騙しあいですか。
ただ脳というかニューロンの活動を実際計測していると、刺激Aが示されていないのに、まるでその刺激が示されているように振舞うこともあります。その意味では、記録しているニューロンの出力先は「騙されている」と解釈できなくもないですね。
もちろん、ニューロンの場合、ヒトと違って「悪意」はないと思いますが。。。
株取引での騙しは、システムを混乱させる方向のもの、脳での騙しは、実験者(少なくとも私)を混乱させるもの、という違いですね。
これからもよろしくお願いします。
Shuzoさんへ
アメリカも“サブプライムローン”問題で、アメリカのみならず、世界経済の失速が懸念されていますね。あれは完全に、日本で起こった「土地バブル」と同じ現象ですね。金融工学が発達しているだけに、余計に複雑ではありますけど。RRBも「経済失速の確率50%」と発表したとか。(正式な名称は解りませんが)この間行われた国際会議では、アメリカの研究者たちから「アメリカ政府の対応の遅さ」が追求されていましたが、日本に比べれば、はるかに迅速に動いて居るように見えます。しかし、あれだけ、日本の“土地バブル”を批判したアメリカが同じ事をするというのは……やっぱり、どこの国の人間の(経済)行動も似たり寄ったりだなとおもいました。
さて、Shuzoさんの“脳と“経済”との関係の考察は面白いです。経済活動も、行き着くところ、人間の“脳活動”ですから。経済においては、言うまでも無く「多数の人間が“価値”を認めている間は、そのものに“価値”がある」んですよね。ところが、一旦“風向きが変わって”皆が“集団幻想”から覚めると、そのものに対する“価値”は一気に無くなります。この辺り、個体としての“共同現象”が集団の“共同現象”にどのように関わってくるのか(確かに『百匹目のサル』みたいにオカルト的ではあるかも……)、“脳”という軸足から追求してみると面白いかもしれませんね。少数の人間の“思惑”がどのようにして、他人の“脳”の分泌物に変化を与えて行くのか。“集団心理”はいかにして形成されるのか、そして、なぜそれらは一気に萎むのか。確かに、複雑系モデルだし、政治的・経済的に有力な個人の意見で、状況が急激に変化(Hot⇒Cool)になる場合もある訳ですが、こんな“モデル”が出来たら、社会科学の中に、ますます数理モデルが入って行く余地があるかも知れませんね。既存の複雑系は確かにそういうモノを出しているかも知れませんが、あれは“全体”を捕らえての話しですよね。個別過程においてはそういう数値モデル無いのではないですか?
阿瀬王さん、コメントへの返事遅くなりました。。。
確かにアメリカは日本と同じ過ちを犯している気がしますね。けど、日本の金融機関までもサブプライム問題で騒いでいるのはどうよ?と思ったりもします。。。
それから、アメリカは大統領が変わったら、健康保険の問題など国の基盤を重視する政策に変わるかもしれません。そうすると、政府の出費がかさんで、借金が増える日本化の道を歩むのでは?なんて思ったりもします。もしそうなら、アメリカは日本より数十年遅れてますね。。。
ところで、脳と経済。
経済活動を支えているのは確かに脳活動でしょうけど、経済と脳という「システム」は異なる原理で動いていてもおかしくないと、個人的には思っています。例えば、量子力学で脳の動作を説明するには相当のギャップがありますから、それと同じ話です。
なんでもかんでも脳化させるのは、実は好きでなかったりしますし。。。
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