最近、アロンというイスラエル出身の大学院生にプロジェクトを手伝ってもらっている。いろいろ実験を教えたり、進捗を簡単にレポートしてもらったりしている。
と書くと、ワールドワイドチックで非常にかっこよく聞こえるはずである。
自分でもそう思う。
が、そのアロン君、英語が超下手。
英語下手度ランキングでは、ダントツのツートップを独占している。自分と。
どちらがトップ(ワースト)かは、聞きたくもないので、誰にも聞いていない。
とにかく良い勝負である。
なので、彼との英語でのやり取りでは、他人にはとても聞いて欲しくないようなすごい英語、別に変な意味ではなく、文法的にすごい英語がいきかっている。
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彼が多用するストラテジーがある。
例えば、彼が何かを伝えようとして、自分が理解できなかった場合、
OK. Never mind.
と口癖のように言う。
気になるやんけ。
例えば、自分が、「そこ、こうやったら」、といったアドバイス的なことを言った場合、
OK. Never mind.
と口癖のように言う。
気にしろよ。
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とにかく、そんな両者の英語能力でも何となく意思疎通ができるから、ヒトのコミュニケーション能力はすごいな、と思う。
脳をまるで総動員しているかのような、あるいは左脳を全く使っていないような、言語を超えたコミュニケーションがそこにはある。。。
3/21/2008
英語の応酬?
3/16/2008
バーチャル脳ベータ版?
最近気になった論文、IzhikevichのPNAS論文。
ヒト脳のDTIデータを、thalamocorticalとcorticocortical connectionの情報、
MartinたちのネコV1の解剖データを、局所回路の情報、
ラットのスライス実験でわかったデータを、シナプス応答の情報、
として使って、ダウンサイズしたヴァーチャル脳(新皮質と視床)を作っている。さらに彼が考案したいわゆるIzhikevich modelで1M個のニューロン活動をシミュレーションしている。
そのために60個のプロセッサーをもつPCクラスターを使うという力技である。
そのPNAS論文では、図4からバーチャル脳を走らせた時の特徴的な結果を示している。面白いのは図5からか。
図5では、一発のスパイクの違いという初期条件が違っただけで後に大きな違いが出てしまうことを示し、
図6では、traveling waveを再現し、
図7ではさらに、resting stateを再現している。
図6に関連して、領野によって特定のオシレーション(ベータ)のおきやすさが違う現象は解剖情報だけで再現できた、という点は興味深い。
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ただ、これら後半の図たちで新規性はないといえばない(もちろん、リアリスティックな大規模シミュレーションをした、という点は新しいけど)。しかも通常のpeer-reviewのプロセスを通さず、Edelmanの力でPNASに出しているようだ。
この論文、一見セクシーではあるけど、ツッコミどころ満載なシミュレーションな気がする。
例えば、
全領野の局所回路をV1で置き換えて良いのか?
細胞の数という点でも領野によって違うわけで、そういう解剖情報は無視して良いのか?
シナプス応答の点で考えると、例えば、HCNの特徴を入れなくても良いのか?
apical dendriteはともかく、basal dendriteこそ重要なんではないか?
そもそもヒト、ネコ、ラットをミックスして良いのか?
DTIやcanonical circuitでは記述できていない(であろう)弱い?結合は考慮に入れなくて良いのか?
などなどなど。。。
その辺は現時点では難しいだろうけど、テクニカルな点で一つ非常に気になることがある。
このバーチャル脳、オーバーフィッティング的なことが起こりまくっているのではないか?ということ。ダウンサイズして、固定パラメーターを使ったといっても、これだけ大規模なシミュレーションをしたら、そりゃ、何でもできるでしょ、という気がしないでもない。どうなんだろう?自分にはようわからん。。。
図5のカオス的な結果を受け、最近のBrechtのネイチャー論文をdiscussionで持ち出している。が、果たして同じ次元で考えて良いのか、単なる偶然の一致なのか、ちょっとわからない。オーバーフィッティング的なことが起こっているなら、ちょっとしたノイズに過剰に反応するというのは何となく想像できる。(Brechtの論文そのものがあやしいといえば、あやしくもあるか。。。3個のinterneuronの貢献度大だし、そいつらがgap junction作ってたら1個という主張はできないし。。。)もし同じかも?と議論をするなら、1個のFS細胞のスパイクを操作した時により大きな効果がみれるかどうか興味があるところ。
このオーバーフィッティング(かもしれない)問題、モデリングに詳しい専門家が見たらどうなのだろう?単なる自分の知識不足による勘違いなのか?supplementをざっと見た感じ、そのあたりに関するコメントはないと理解した。
こういうモデリングでクロスバリデーション的なことはできるだろうか?この場合のクロスバリデーションはいったい何か?
Izhikevichのことだからそんなことは十分認識していて、とりあえず作ってから問題をデバッグして、バージョンアップをはかっていこう、という超楽観主義的発想なのかもしれない。彼のウェブには将来の見通し的な情報もある。
やはり、気になるのは、このシミュレーションから何を予言できるか?ということ。その予言を実験的に検証していくことが、この場合の「クロスバリデーション」になるのかもしれない。その意味では、この論文では予言はないと理解したので、とりあえずベータ版を作ってみました、というお披露目論文と理解したら良いのだろう。
今回のシミュレーションは睡眠状態だとして、ここから脳状態をどう変化させて、よりリアルな意識下の脳に近づけていくか?どう感覚刺激を入れて、運動出力なり、意思決定的な情報をディコードするか?
例えば、バーチャル脳ではxxxxができないとNG、といった「バーチャル脳」の必要条件を考えていく上で良い叩き台になるのかもしれない。
それにしてもこのIzhikevichという人、scholarpediaといい、出版前の本全文をPDFで公開するとか(出版後の今はさすがに公開していない)、やることがぶっ飛んでいる。。。ヤバイ研究者の一人。
文献
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Mar 4;105(9):3593-8. Epub 2008 Feb 21.
Large-scale model of mammalian thalamocortical systems.
Izhikevich EM, Edelman GM.
Izhikevichの本
3/15/2008
A Day of Memory at NYU
というシンポジウムが今週開催され、終日参加してきた。雰囲気だけでも伝われば、と思う。
このシンポジウムは4つのセッションから構成され、分子、シナプス、回路、システム(含心理学)という幅広い内容を扱っていた。テーマは、タイトルにあるようにMemory。
ちなみに、カンデル大先生も朝一から来ていて、ほとんどのスピーカーに対して質問をぶつけていた。
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では、セッション1。
このセッションは、シナプスレベルの話。非常に濃かった。
Steven A Siegelbaum (Columbia Univ)
ITDPを提唱した論文を中心にトーク。彼の頭のキレ具合が伝わるすばらしいプレゼンで、研究内容も面白かった。
Adam Carter (NYU)
この人は知らなかった。two-photonを使ったシナプス応答の研究で良い論文を出しているようだ。例えば、こちら。若いので、NYUでPI職を得たばかりなのかもしれない。
Larry Abbott (Columbia Univ)
unpublished dataをトーク。
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セッション2は分子レベルの話。目玉はSacktor。
Todd C Sacktor (SUNY Downstate Medical Center)
「記憶消し物質ZIP」で今や超有名人。
PKMzetaは、記憶関連のキー分子として確立した感を受ける。(彼らの研究は、こちらのエントリーで少し紹介してます。)Sacktor本人をはじめて見たけど、アメリカンな体型で甲高い声が特徴的だった(雰囲気だけでも。。。)
Karim Nader (McGill Univ)
LeDoux研時代こちらのネイチャー論文を発表している。re-consolidation関連のdebateの火付け役ではないかと思う。トーク内容は。。。カンデル先生ですら質問しなかったので、かなり・・・。けど、独特のオーラを持ってる人だった(フォロー)。
Cristina M Alberini (Mount Sinai Medical Center)
タンパク合成とconsolidation, re-consolidation関連の研究をされている女性。PubMedで検索したら、総説がこれから出るようだ。
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昼休み。
呑み友達でもある理論家の日本人といろいろ話をした。
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セッション3はシステムレベルの話。
前半は神経生理。後半はヒトの記憶。
Gyorgy Buzsaki (Rutgers)
ラットの神経生理。すばらしいトークだった(若干飛躍も感じられたが)。
それにしても、ギューリー先生は効果的なプレゼンの仕方を知っている。
Wendy A Suzuki (NYU)
サルの神経生理。4年前に発表された論文を中心にトーク。良いプレゼンだった。
Lila Davachi (NYU)
彼女の研究はフォローしてないけど、unpublished dataだったと思われる。
最近、Neuronに論文を出したばかりなのにすごい生産性だ。
ちなみに、この方きれいな女性です(若くは見えますが、実際は知りません。。。)。
Elizabeth Phelps (NYU)
この人は最近ネイチャー論文で楽観性に関することを報告した人でもあるけど、トピックは全くその逆。
動物の研究でわかった知見をヒトへ応用するという精力的な研究。
ちなみに、この方も女性。だけど、強面。。。(ネタもかましてましたが。。。)
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セッション4はヒトのイメージング研究、その中でも記憶に関連しそうな研究、そしてバリバリの心理学。
Clayton Curtis (NYU)
ヒトのワーキングメモリの研究。ラボのホームページ。
Alex Martin (NIH)
視覚物体認識(object recognition)でMRIを絡めた研究。総説も出しているようだ。雰囲気からして有名人なのだろう。全然知らんかった。。。
Janet Metcalf (Columbia Univ)
この人も知らなかったけど、ググッて彼女のラボのページを調べたらメタ認知など面白い研究をしているようだ。トークでは、心理学から見た海馬の「モデル」を話してくれた。計算論という意味でのモデルをやってる人には不評だった。。。個人的には、「悪くない」とは思った。抽象度が高すぎるのもよくない。
Marcia K Johnson (Yale Univ)
欠席でトークなし。。。
ラボはこちら。
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そして、セッション5。
Eric R Kandel (Columbia Univ)
他のスピーカーは20分という持ち時間だったけど、カンデル大先生は40分。
アメフラシの研究から局所タンパク合成を調べられるユニークな実験系の確立、そしてプリオン的な転写因子CPEBの話へ発展した経緯、そしてその後の発展について。途中Movshonをネタにしながら、すばらしいトークをしてくれた。(Movshonが所内対応的な下っ端として働いていた。。。)
wikipediaによると、カンデル先生は来年で80才。確かに見た目はそれくらいというのは伝わる。けど、研究内容、研究に対する情熱みたいなものには、一切衰えを感じられなかった。ノーベル賞取るような人はホントに次元が違う。ちなみに、質疑応答も盛り上がり、ギューリー先生の噛み付きにも一切動じず。。。むしろ噛み付き返し?ていた。。。
良いもん見れました。。。
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さて、何を学ぶ?
いろいろ考えさせられることがあった。
やはり思うのは、「ブリッジ」とでも言うのだろうか、異なる時空間スケールで起こる現象たちをどう自分の頭で消化して、クリティカルな問題に取り組んだら良いのか?ということ。特に時間スケールの問題が、他の神経系のトピックに比べ特にやっかいな気がする。記憶だから仕方がないのだろうけど、その問題に取り組んだ研究というのはない気がする。どうなのだろう?少なくとも現時点では実験的にできないことを可能にしないといけない諸問題がいろいろありそうだ。
もう一つ、言葉の定義。
科学をする以上言葉で表現することは大事なのだけども、神経科学の言葉で、しっかり言葉を再定義しないといけない気がする。例えば、今回議論になったconsolidationとreconsolidation。何それ?という気が素人からしたらした。。。おそらく専門家に聞いても、微妙に定義の仕方が違ったりするだろうから、新規参入しようという人には何ともおかしなジャーゴンに見えるのではないだろうか。むしろ、新しいコンセプトのタネが、こういうおかしなところに眠っているのだろう。
それにしても、復習して改めて思ったけど、どのスピーカーも一流の研究者ばかりで、濃いシンポジウムだった。NYC地区が大半、というのがまた驚き。。。
EarthとBrainの相似性
地球上にはいろんな美しい地形がある。
そんな地形をGoogle Earthを使って旅できる。
(方法:このページのリンクからplacemarkファイルをダウンロードし、Google Earthで旅する。)
そんな地形を見ていると、脳のことを知っている人は「眼優位性コラム(ocular dominance column)」を思い出すかもしれない。イメージはこちら。
脳のシワを想像する人もいるかも。
EarthとBrain。
スケールは違うけど、ちょっと似ているところもある?
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参考文献
Trends Ecol Evol. 2008 Mar;23(3):169-75. Epub 2008 Feb 5.
Regular pattern formation in real ecosystems.
Rietkerk M, van de Koppel J.
あのアラン・チューリングが初めて言い出したらしいscale-dependent feedbackというルールで、地形の規則的パターンの形成を説明できる、と主張しているようだ。非常に興味深い。
3/09/2008
Aクラスな科学の情報
この一週間で知った情報を、強引に関連付けてみます。
キーワードは「Aクラスな科学」。
スピン(一般向け)
ネイチャーのウェブページ上で「スピン(spin)」の特集が組まれている。
自分は、ポッドキャストを聞いただけだけど、なかなかわかりやすく解説されていてお薦め。
スピンとは、基本粒子のもつ角運動量。英語では、intrinsic angular momentum of elementary particles。(自分は大学教養物理で挫折しているので、これ以上の詳細は不問ということで。。。)
では、そのスピンは何の役に立ってるか?
例えばハードディスク。昨年のノーベル物理賞とも関係が深い。スピントロニクスなる言葉を初めて知った。ちなみに、そのスピントロニクスの分野ではスピンを応用した半導体が開発されつつあるとか。脳科学でいえば、今やなくてはならないMRIを支えている物理現象もこのスピン。スピンを利用した大発見がこれからも続くのだろうか?
Aクラスな研究者になるためのハウツー(大学院生向け)
そんな大発見をするようなAクラス研究者になるための良い情報がいくつかある。リチャード・ハミングという数学・コンピューターサイエンスで功績を残した偉い人の講演全文がウェブにある。良い研究者の条件について語っている。英語の長い文章は読んでられないという人は、こちらに10のポイントとしてまとめられている。一方、他にも重要な要素があるよ、というツッコミもこちらにある。
これに関連して、個人的に大好きなエッセーは寺田寅彦の「科学者とあたま」。
場所細胞、グリッド細胞、そして(大学院生、プロ向け)
そんなAクラスな研究者のうち、今脳科学の分野で活躍している「カップル」がMoser夫妻。海馬周辺領域のシステム研究をしている人で、今やMoser夫妻を知らない人はいない(たぶん)。
そのMoserたちがAnnual Review Neuroscienceに総説を書いている。この分野は、ラット・マウスの研究を中心に、今コンセプチュアルなレベルで劇的な発展を遂げている。昨年話題になった本Rhythms of the Brainでもそんな最新情報はフォローしきれていない。このホットな分野をフォローするにはうってつけの総説だと思われる。
Freemanの教科書(大学院生、プロ向け)
さらに脳科学のAクラスな研究者を。
Walter J Freemanといえば、嗅覚系でカオス的脳活動について言い出したことで有名ではないかと思う。その人が30年以上前に出版した有名な教科書の全文が公開されている。1ページあたりの文字数はそれほど多くはないが500ページ強に及ぶ。
いわゆる「ポピュレーションコード」など、ニューロンが集団として情報処理していること、を議論する論文の中で、この教科書は頻繁に引用される。自分はこの本を読んだことがなくて、今、第一章を読んでいるけど、非常にお薦めな教科書である。
PDF版も含め、著作権がFreemanに戻ってきたから公開したらしい。すばらしい。。。この原稿公開のためにprefaceを追加していて以下のように述べている。
The word "chaos" has lost its value as a prescriptive label and should be dropped in the dustbin of history, but the phenomenon of organized disorder constantly changing with fluctuations across the edge of stability is not to be discarded.
主張の軌道修正とも解釈できそうである。Freemanがどんなデータをもとにどうカオスという主張をしはじめたのか知らないが、なかなか興味深い言葉である。
ノーベル賞受賞者の汚点(プロ向け)
さらに超Aクラスな研究者で嗅覚系の研究をしている人のニュース。嗅覚系といえば、リンダ・バック。嗅覚受容体の研究でノーベル賞を受賞した女性。
そのノーベル賞受賞前、2001年に発表した超有名なネイチャー論文を、今週取り下げた。関連記事も掲載されている。データを再現できず、さらに捏造の可能性がわかり、論文での結論に自信がなくなった、ということが取り下げ理由のようだ。
実際、この論文が出た直後に悪いうわさを聞いた覚えがある。確かに、論文の図を見ると「こんないい加減な図でよく通ったな」と今思う。論文の図はすべて筆頭著者が用意したと発表されたので、捏造がホントなら、筆頭著者が行ったと理解すべきなのだろう。が、常識的な科学者が大きな発見を報告する場合、少なくとも、もっと説得力のある図を用意するのが普通ではないかという気がする。ノーベル賞をとるような人が、論文作成時点でそのことをなんとも思わなかったのだろうか?論文のレフリーが誰だったのかもちょっと気になったりもする。
もちろん、今回の取り下げは、彼女がノーベル賞に値する発見をした事実そのものには全く影響はない。が、なかなかショッキングなニュースである。自分が知る限り、彼女は40代に花開いた苦労人で、そんな大器晩成タイプの研究者として、自分は非常にリスペクトしていた研究者の一人だったのに。。。。でも、こういうことからいろいろ学ばなければいけないこと(「社会勉強」という点で)はたくさんある気がする。
ちなみに、Action Potentialでもエントリーが立てられている。
そしてiPS細胞(大学院生向け、プロ向け)
さらにノーベル賞に関連する(であろう)Aクラスなネタで締めくくり。
日本にいないからiPS細胞がどれくらい騒がれているのか、もう一つその空気を読めていない。けど、うちの母親もネタにしていたくらいだから、国全体の盛り上がりようは相当(だった)なのだろう。。。それはともかく、JSTこと科学技術振興機構が公開している特別シンポジウムの報告書はいろんな意味で面白い。
科学という純粋な意味で面白かったのは、例えば、がん化することは問題ではない、むしろ必要条件である、といった質疑応答の箇所など、この分野に直接関わっていない人たちが持っている「誤った常識」を正す上でもなかなか質の高い情報だと思った。おそらく英語でもこの手のタダの情報を手に入れるのは難しい気がする。
もう一つ面白いことは、その報告書から、その人の人柄、考え方が伝わってくる。研究現場を知っているトップ、研究の方針決定に携わる人たちのいろんな思惑が伝わる。アダルトな世界が少し垣間見れるかも?
ところで、脳に「魔法の因子」を入れて、脳が関わるあらゆる病気を治すことはできないだろうか。。。そんなことできるわけがない、と思えることができたりするかもしれないから、科学は楽しい。
3/08/2008
効率的な学び方
最近サイエンスに掲載された論文によると、同じことを反復して学ぶより、思い出す方を重視した方が良いらしい。
研究では、外国語単語の勉強(覚える)と試験(思い出し)をするとき、各単語について、
1.繰り返し勉強・繰り返し試験
2.繰り返し勉強のみ
3.繰り返し試験のみ
4.一回きり勉強と試験
という条件で成績を比較している。
すると、1が良いのは良いとして、2,4より3の条件が良かったらしい。さらに、1と3の結果は同じだった。つまり、一旦覚えたら、再勉強はあまり効果はないと解釈できる(一方、2と4の結果は同じくらいひどかった)。
さらに、1の場合、勉強と試験の両方をやるから、3の方が時間を節約できる。なぜなら再勉強時間はいらないから。ということで、一回勉強したことは、思い出すことにウェイトをおいた方が効率的、ということになる。
もちろん、現実社会では、なかなか「勉強」と「試験」を明確に区別できないかもしれない。けど、次の例はどうだろう?
例えば、資格試験の勉強をする時。
一通り教科書を読んだら、教科書を繰り返し読むより、練習問題を解き漁った方が良い、と考えられる。(それで本番の試験に落ちたら、、、この論文の著者たちにクレームしてください。。。)
例えば、統計の勉強。
教科書で一旦統計の基礎知識を身につけたら、実際にその知識を使う問題に取り組んだ方が良いかもしれない。これは経験的に真のような気がする。
では、スポーツはどうだろう?
練習だけたくさんするより、ゲームで実践感覚も身に付けたほうが良い。とよく言われることと近いかもしれない?
とにかく、一旦理論を身に付けたら、理論を繰り返し学ぶより実践重視にシフトした方が、結果的には、身に付けた理論の定着には良いのかもしれない。
リアルワールドや脳は、そう単純ではないにしても、信じるものは救われる。。。
今回紹介した論文
Science. 2008 Feb 15;319(5865):966-8.
The critical importance of retrieval for learning.
Karpicke JD, Roediger HL 3rd.
3/02/2008
NBAとMLBのチケット
最近の出来事。二つスポーツ関連を。
1週間前の土曜日、NBAの試合を見に行く。
バスケにはNJ州のチームがいる。Netsというチームがいる。
戦力としては「ボチボチ」なチームである。
今シーズンの成績はプレーオフ進出のボーダーライン。
ここ数年、プレーオフにはコンスタントに出ているようである。
試合を見に行った日、相手はインディアナ・ペーサース。
Netsより若干格下か?というくらいのチーム。
ゲームは、第3クオーターにネッツが点を重ねて差を広げ、そのまま逃げ切った。
テレビでよくみるプレー:例えば、ダンクシュート、パスを空中で受けそのまま直接ダンクするシュート(ウィキペディアによるとアリウープというらしい)も何回かみれた。すげぇ。。。
タイムアウトやハーフタイムの間など、こまめにファンサービスのイベントがあって、なかなか楽しかった。More than a gameがキャッチフレーズらしい。その通りな感じだった。これが地元密着型のアメリカンな客寄せか、と思った。
ファンサービスという点では、フットボールや大リーグより遥かに気合を感じられた。が、皮肉なことに、大リーグやフットボールにはお客の数という点では及ばないのか。。。
チケットの取りやすさにそれが出ているように思う。実際、空席がたくさんあった。そのゲームの後に来たメールにはこうあった。
先週来てくれてありがとう!
今週末のゲーム15%オフで、先着x名様にTシャツプレゼント!
必死なプロモーションメールである。。。
結局、最大のファンサービスは、スポーツそのものの面白さやスター選手がいるかどうかなのだろう。。。
確かにフットボールの第4クオーターのあの面白さは、バスケのそれとは少し違う。
それはともかく、おかげでNetsのことが前より気になるようになった。
ちなみに、NJ州にはもう一つプロスポーツのチームがいる。
DevilsというNHLアイスホッケーのチーム。
密かに強い。現在、地区トップ。
コンファレンス内でもモントリオールと競っている。
ホームアリーナはニューアーク市にある。
ラトガーズ大から徒歩10分ほど。
そのアリーナ、今年できたばかりのきれいなアリーナ。
ホッケーはオリンピックの中継を見たことがあるくらい。
次はNHLだな。。。
---
といいつつ、NHLの前にベースボール。
先週金曜日にヤンキースのチケットの一般発売がはじまった。
ネット上で争奪戦が繰り広げられ、自分も参戦。
結果から言うと、ボストン戦のチケットが二日分とれた!(かなりうれしい)
一日分は嫁さんたちが一時帰国している夏の時期。鬼のいぬまの・・・である。
ボストン戦のチケットでも、一人分なら比較的簡単に取れる。実際、昨年のプレーオフのチケットも3試合分とれたし。(が、うち2試合分は試合が行われずリファンド。。。)
他のボストン戦のチケットもまだ手に入るようだ。(3/1時点。お早めに。)
一方、家族分を取るのは困難を極める。
が、今回は棚ぼた的に取れた。
チケットを一旦キープできたら、2,3分以内に精算手続きをすませないといけない。おそらく、一旦キープした人が時間内に手続きをできなかったのだろう。手放されたチケットに自分が滑り込んだと思われる。
10時から販売開始で11時半頃まで粘り続けてとれた。
執念である。
これで松井が先発で出て、ボコボコにされる松坂を見れたら、相当にラッキーである。
Boston Sucks!
(お約束ということで。。。)
ちなみに、ヤンキー・スタジアムは今シーズンで見納め。来シーズンから新球場になる。
ということで、今シーズンのホーム最終戦9月21日のチケットも早々にソールドアウトに。その日の相手はボルチモア。一方、他のボルチモア戦のチケットは取り放題。この特別な日だけは違った。
StubHubというチケット販売サイトではすでに最低200ドル以上の値がついている。おそらく夏ごろになったら桁があがっているだろう。。。余分にとれていれば、大もうけということになるのか。。。
が、もしプレーオフに出れればそのゲームは最終戦ではなくなる。
もちろんプレーオフ中に特別なイベントはやらないだろうけど、状況によってはそのチケットの価値は下がるのだろうか。。。
ちなみに、今年のオールスターもヤンキー・スタジアム。
その最終戦どころではないのだろうけど、争奪戦にチャレンジしてやる!
3/01/2008
プランクトン社会の中の混沌
プランクトンたちの生息環境はカオス的であり、その変化の長期予測は不可能である、と主張している論文がネイチャーに掲載されていた。
この研究は面白くて、まず研究室に「人工バルト海」を作っている。そして、そこでのプランクトンやバクテリアの数などの変化を長期間(8年以上!)にわたって計測している。
その長期間の観測結果を元に、例えばプランクトンの数の変動をどれくらい先まで予測できそうか調べたところ、高々1ヶ月くらいしか予報できなかったらしい(天気予報よりは良い、とジョーク的な記述もある)。「長期予報」できない問題の根源は、プランクトンたちの数の変動がカオス的に振舞っていることによる、としている。
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この研究、方法論的に神経科学の研究と近いところがあって勉強になる。
今、「人工バルト海」を脳とみなしてみる。ある時点でのプランクトンAの数は、ある時点でニューロンAが出した「スパイク数」とみなしてみる。
実験としては、複数のニューロンの活動を同時に調べることと等価になる。計測データの解析として、ニューロン活動の相関性(二つのニューロンの活動がどれくらい似ているか)を調べたり、ニューロン活動の変化をどれくらい先まで予測できるか人工ニューラルネットで予測したり、リアプノフ指数なる量を計算して、予報と実測値とのズレを測ったりする。その予想とのズレを計算する方法(論文では2つ考えている)は参考になりそうな気がした。
この論文、エレガントで良い論文ではあるのだけど、個人的に気になったのは、カオス的だという結論は果たしてどうよ?ということ。カオスという初期条件に敏感なシステムっぽくて長期予報は無理、ということを言えたとして、それでどうするのか?
扱っているシステムは、カオスという「ルール」に従って振舞うシステムだ、ということがわかった点ではポジティブではある。が、長期予報は不可能だということがわかった点、あるいは長期予報できなかったという点では、ネガティブデータでは?という気もする。
神経活動の解析で同じことをやって「長期予報は無理でした」という結論をつけたとして、果たしてネイチャーに載るだけの価値があるか?というと疑問である。もっと解析の部分で「セクシー」なことをして、もっと「ポジティブ」な傾向を見出さないと意味がないように思える。
つまり、脳はカオスだ、と言ったところで脳のことはわかったことにならない。(たぶん・・・)
例えば、少しだけ先の予報ができるわけだから、それを有効活用する(例えば、Nicolelisのようにロボットアームを動かしたり、ロボットを歩かせたり)とか、予測できる・できない仕組み(メカニズム)をもっと掘り下げてみるとか。そのあたりまでやらないと、今の神経科学でネイチャークラスの論文を出すことは無理な気がする。。。実験技術がどんどん発展している分、そのあたりのハードルがどんどん高くなっている。
しがない業界である。。。
今回紹介した論文
Nature. 2008 Feb 14;451(7180):822-5.
Chaos in a long-term experiment with a plankton community.
Benincà E, Huisman J, Heerkloss R, Jöhnk KD, Branco P, Van Nes EH, Scheffer M, Ellner SP.
2/24/2008
統合失調症の新薬―LY2140023
ニューヨークタイムズに興味深い記事があった。
この記事では、統合失調症の新しい治療薬LY2140023と製薬業界の動向についてわかりやすくまとめられている。ビジネス欄の記事だから市場規模がどれくらい大きいかといったことも紹介してある。
この記事に登場するSchoeppという人、昨年9月Nature Medicineにその画期的な新薬に関する論文を報告した人でもある。論文の発表にあわせて出たニューヨークタイムズの記事や、同じ号のNews&Viewsにその論文の紹介・解説がある。
一言で言えば、その新薬は代謝型グルタミン酸受容体をターゲットとしている。いくつかある代謝型グルタミン酸受容体のうち、特定のタイプの受容体(mGluR2/3)をターゲットとしている。グルタミン酸の代わりにその受容体を刺激してくれる(アゴニスト)。
何が画期的かというと、これまでの薬はドーパミンの伝達経路をターゲットにしたものばかりだったけど、グルタミン酸受容体をターゲットにした全く新しいタイプの薬だ、ということ。しかも、統合失調症の陰性症状にも効き、これまでのところ副作用も見られないというすごい薬。
今回紹介したニューヨークタイムズの記事では、統合失調症の治療薬開発の歴史とこれからについて、Schoeppを主人公として描いている。
話はそれるが、Schoeppという人は大学で博士号をとって製薬会社Lillyに就職し、今はMerckのsenior vice president(副社長的役職?)で神経科学部門のボスを勤めているらしい(こちら)。博士号取得者のいわゆるキャリアパスを考える上でもいろいろ学ぶ点があるやもしれない。
さて、ここからは自分の独断と偏見。
その新しい薬は「グルタミン酸仮説」をサポートするという点では良い。一方で、最近はDISC1なる遺伝子と統合失調症の関連も注目されているように思う。そのDISC1は発生時期の神経細胞の移動、つまり、神経細胞が正しい位置に配置されるのに関わってたように記憶している。例えば、こちらにそのDISC1研究が今ホットだ、ということが紹介されている。
ところで、発生・発達上の問題とグルタミン酸仮説との接点はどれくらい議論されているのだろう?
一方、グルタミン酸は興奮性だけど、抑制性ニューロン、つまりギャバの働きも一部の研究者が注目している。例えば、こちらに総説がある。
こうしてみると何でもありではないか。。。
個人的には、統合失調症の原因はいろんなルートがあって、いろんなルートからたどり着いたシステムとしての異常が、まるで同じ「統合失調症」のように見えているのかもしれない、なんて思ったりもする。だとすると、どのルートからシステムがおかしくなったのか突き止めた上で治療薬をカスタマイズしないといけないのではないか?だとすると、統合失調症の万能薬を開発するのは困難極まりないようにも思える。
けど、もしその新薬がホントに万能薬だとすると、なぜそんな「単純」なロジックで働く薬が複雑な統合失調症を治療できるのか、そのギャップが非常に気になるところではある。
とにかく、代謝型グルタミン酸受容体をターゲットとした新薬LY2140023が、どれくらい多様な症状に効くのか、今後の結果に注目だ。
統合失調症関連の本
統合失調症関連の本(洋書)
2/23/2008
最近のニュースたち
最近あった、あるいはこれからあるイベントの小ネタ集。
1.論文
うちのラボから論文が出た。
論文情報はこちら。
Neural Comput. 2007 Nov 28 [Epub ahead of print]
Valuations for Spike Train Prediction.
Itskov V, Curto C, Harris KD.
内容は・・・高尚過ぎてようわからん。。。
おそらくこう:
ボスがポスドク時代に編み出したpeer predictionなるニューロン活動の予測法がある。その際、いくつかモデルを立ててパフォーマンス、つまりスパイク予測の精度を評価・定量して良いモデルを選択しないといけない。そんなモデル選択のための指標を新たに考えた、と理解したら良いか?その新たな指標、quadratic valuationなる指標は対数尤度と同等だけど計算が速いのがウリ、とある。さらにマルチ記録では不可避なスパイクソーティングのエラーに対してもロバストだ、というからうれしいではないか、という話のようだ。
書いてる自分もよくわかってない。。。
ちなみに、筆頭著者のヴラディミアは今コロンビア大のAbbott(理論の超有名人)のところでポスドクをしている。物理から神経科学へ転進した変な良いやつです。。。
2.コサイン
来週からコサイン。
自分は参加しない。旅費出してくれる保証ないし。。。でも一度は行ってみたい。
それはともかく、うちのラボからは、ボスのケンとアーターが参戦する。ケンはブザキ研のカムランとワークショップを開催する。アーターはそこでトークする。FeeやHasselmoといったビッグネームに混じってのトーク。unpublishedなデータもしっかり話してくれることだろう(トークの内容はまだ聞いてないけど)。
優秀な人は、こうして若手ホープとして名が知られていくのだろう。
追記(2/26):
ボスは3月3日のワークショップでダブルヘッダーでトークするようです。
こちらとこちら。後者のワークショップで先日紹介した仮説を話すよう。
3.休校
昨日、大雪のため大学が休校となった。朝6時半ごろアナウンスメールが届いた。
メール見ずに通学・通勤した人もいるのでは。。。
自分のうちから大学まで20キロくらいある。
事故のリスクをおかしてまで大学へ行く気はしなかったので、終日自宅業務に。ラッキーなことに最近はデスクワーク中心だったからか、結果的には通常業務とあまり変わらなかった。。。研究はうちでもできるということか。
ちなみに、夕方前、雪に埋まったマイカーを救出すべく雪かきをやった。去年生まれて初めて雪かきなるものをやって今年が2回目。雪かきはホント疲れる。。。雪国に住んでる人たちはほぼ毎日のようにやってるのだろうから大変だ。。。
ちなみに、ヒスパニック系の若い人たちが数人で歩き回って「流し雪かき」をやっていた。声をかけてお金を払えば、雪かきをやってくれるらしい。。。彼らは雪をビジネスチャンスと思ってるわけである。。。
4.Small + Shore = Obama
ニューヨークタイムズに小浜市のことが紹介されていた。
Obama氏が大統領になるとObama市はハッピー、ということらしい。
確かに、全国区どころか、全米・世界デビューのチャンスである。
ウィキペディアによると、
似顔絵饅頭の発売も検討
とある。
一時帰国してアメリカのラボに戻る時、これほど「おいしい」お土産はない。
ぜひ大統領になってもらわんと!
ちなみにObama Bという日本人研究者がいないかPubMedで調べてみたが(あほすぎ。。。)、見つからなかった。。。確かに日本人でファーストネームにBがつくのはなかなかないか。。。
小浜芭蕉とか?
小浜武士とか?
2/17/2008
研究者とニューロンの“生きるすべ”
大学院生やポスドクの研究者としての将来は、今やっている研究が世にどれくらいインパクトを与えるかで決まる。例えば、研究結果を論文という形で科学雑誌に「アウトプット」する。そして、他の研究者たちがその論文をたくさん引用してくれそうなら、つまり、ネイチャーやサイエンスといった「インパクトファクター」の高い雑誌に論文を出せれば、准教授や教授などの「テニュア職」を得て生き残るための道が拓ける。
仮にテニュア職に就いても、自分の研究分野で確固とした地位を築き上げるには、引き続き他の研究者にインパクトを与え続ける必要がある。もちろん、一旦生き残れることが決まったので、インパクトを与えなくても良い。ただし、他の研究者とのネットワークは希薄になる。
ここで、研究者への「インプット」は、過去の文献や自分の研究データ、さらには他の研究者からの口コミ情報。「アウトプット」は論文となる。他の研究者とのネットワークを拡張・維持するには、アウトプットの結果他の研究者から返ってくる良いフィードバックが重要となる。良いネットワークを構築できれば、入ってくるインプットも増える。
とにかく、より良い研究環境で生き残るためには、インプットの結果をアウトプットして、相互作用している相手にインパクトを与え続ける必要がある。
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脳も同じではないか?
つまり、ニューロンは、他のニューロンからたくさん入力を受けて、活動電位・スパイクとしてアウトプットを出す。そうして他のニューロンたちと相互作用する。そして、その出力先のニューロンから良いフィードバックをもらえれば、神経回路内での自分の立場を確固としたものにできる。
ニューロンの“生きるすべ”は研究者のそれに似ているかもしれない。
というのが、うちのボスが最近出した論文の主張である。
その論文は、彼の仮説を世に問う論文。なので、その仮説が本当かどうかは実験的に検証される必要がある。
その仮説は、論文での言葉を借りれば次の通り:
strengthening of a neuron’s output synapses stabilizes recent changes in the same neuron’s inputs.
今、ニューロンAがいたとする。
まず、そのニューロンAの出力側のシナプスが強まる。すると、そのニューロンAの「入力側」のシナプスのうち、最近変化したものが安定化する。換言すると、ニューロンAの神経終末の強化が同一ニューロン内の最近変化したシナプスの安定化に寄与する。
ちょっとわかりにくいか。
論文中の図1にそのコンセプトがまとめられている。その図がわかれば、その論文で言わんとするところがわかる。
まず、入力側のシナプスが変化して、ニューロンAのスパイクのパターンが変化する。
その結果、もし出力側(神経終末)のシナプスが強化されれば、「逆行性シグナル(retroaxonal signal)」が軸索(axon)に沿って細胞体・樹状突起へ伝わる。そして、変化したばかりの入力側のシナプスが安定化される。
一方、もし出力側のシナプスが強化されなければ、逆行性シグナルは伝わらず、変化した入力側のシナプスは元に戻る。
アウトプット側の変化がインプット側の変化の生き残りに重要だ、ということがポイントになる。
「逆行性シグナル」の「逆行性」。通常、電気信号は細胞体側から神経終末へ伝わる。その逆向きに伝わるシグナルを考えているから「逆行性」という言葉が使われる。
そして、想定している「逆行性シグナル」は、シナプス間を伝わるものでも、電気的なものが軸索を伝わるものではなく、もっと時間的には遅いであろう「シグナル」のようだ。例えば、「神経栄養因子」が引き金となって軸索から細胞体へ伝わるシグナル伝達などである。
この仮説は、いわゆる人工知能というか人工ニューラルネットの研究、そして、実験的な神経科学、特に軸索側での化学反応とシナプス可塑性の関係を調べた研究にインスパイアされているようだ。
この仮説のもう一つのポイントは、「逆行性シグナル」は教師信号的なものではなく、すでに変化したシナプスの「選択圧」的な役割を果たす、という点か。つまり、最近変化したシナプスが生き残るかどうか、そのフィットネスは、逆行性シグナルが軸索→細胞体→樹状突起へすぐに伝わってくるかによる、ということ。
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この論文で扱っている内容は広い。
まずヘッブ則の応用の失敗と「バックプロパゲーション」を取り入れた人工ニューラルネットの成功について紹介。そして、その「バックプロパゲーション」と神経系での学習との関係はどうか?と考えを膨らませている。
そして、仮説のエッセンスを紹介。
続いて、どんなものが逆行性シグナルとして考えられるか?そして、それがシナプスの安定化にどう働くか?過去の実験事実を紹介しながら考察している。そして、後半ではシステムレベルの話として、海馬の「場所細胞」の研究との整合性を議論し、さらに大脳新皮質へも応用可能ではないか、と話を展開している。
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ちなみにボスがこの仮説を言い出したのは、2年くらい前だろうか。ラボ・ミーティングで、今こんなん考えてんやけど・・・という感じでラボメンバーの意見を聞いてきた。そして、ヨーロッパの学会でポスター発表したり、論文の謝辞にもあるように、同じビル内のブザキやパレなどに原稿を読んでもらって世に出たことになる。
自分が思うに、彼の仮説のポイントは、1つのシナプスというより、1個のニューロンに注目して可塑性を考えよう、というところなのではないかと思われる。これまでの可塑性の分子レベルの研究は、自分の理解では、
シナプス・樹状突起-細胞体
神経終末-細胞体
プレ-ポストのシナプス
といった具合で「1個のニューロン」という視点は少なかったのではないか?と思われる。
コロンブスの卵的と言われればそれまでだが、なかなか面白い発想の転換の気がする。そして、シナプスレベルの話をニューロンレベル、回路、システムレベルへ拡張して「学習」を考えよう、ということになるのではないかと思われる。
(***彼から直接聞いたわけではないので、私の勝手な解釈です。オーバーフィッティング気味。)
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ちなみに、このエントリーの冒頭のアナロジー、実はこの論文の結論部分をそのまま使った。(「ケン節」炸裂な締めくくりである)
さて、彼は仮説を提示することで、可塑性研究の分野に触手を伸ばした。さて、どんなフィードバックを受けて、彼の科学者としての位置づけが変化するか、今後に期待である。
*****
彼の仮説に興味を持たれた方は、ぜひ原文をお読み下さい。
このエントリーは、あくまで私が理解した範囲でしか書けていませんので、誤解もあると思われます。
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参考文献
Trends Neurosci. 2008 Feb 4 [Epub ahead of print]
Stability of the fittest: organizing learning through retroaxonal signals.
Harris KD.
今回紹介した論文。Opinionとして数ヶ月以内に掲載されるようだ。
人工ニューラルネットについて
Nat Biotechnol. 2008 Feb;26(2):195-7.
What are artificial neural networks?
Krogh A.
良いタイミングで人工ニューラルネットに関する良い入門文献が出ていた。ムチャクチャ読み易い。
これを読むと、論文の導入部のポイントが明瞭になると思われる。
おまけ。
Nat Cell Biol. 2008 Feb;10(2):149-59. Epub 2008 Jan 13.
Intra-axonal translation and retrograde trafficking of CREB promotes neuronal survival.
Cox LJ, Hengst U, Gurskaya NG, Lukyanov KA, Jaffrey SR.
ごく最近出た論文。
神経終末にあるCREBのmRNAがニューロンの生存に必要、という話。つまり、CREBが軸索内でローカルに翻訳されて、それが核での遺伝子発現を誘導し、細胞の生存に寄与する、ということを明らかにしている。
ボスの仮説の文脈で考えるとさらに面白い。
例えば、核内で軸索側と樹状突起側のシグナルの同期検出的なことが起これば、仮説にかなり近い気がする。。。先日、この論文を見つけてボスに話したら「もうin pressになったから、引用できんな。。。」と嘆いていた。
歯医者へ行く2
先月、家族で歯科検診へ行った。
そして昨日、自分だけ再び歯医者へ行った。
検診の時、自分だけ問題が見つかったから。
その問題は、右上の奥歯の詰め物が外れかかっていたこと。
前回の検診時にアポをとって、土曜日希望としたら、ほぼ1ヶ月後の昨日となった。
ほぼ時間通りに行くと、待ち時間ナシですぐに診察台へ。
一応、名前をダブルチェックされた。勝手に歯を抜かれても困る。。。
まず局所麻酔。針を刺すチックという感覚は一切なかった。
しばらく待って詰め物の取替え。
10分ほどで完了。
大した苦痛はなく、あっさり終わった。
歯医者に到着して出るまで15分弱だった。
コーペイは15ドル也。
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ちなみに、治療の前と麻酔が効くのを待ってる間、先生と少し話をした。
日本のバレンタインデーについて。
彼は、日本のバレンタインデーの風習を他の患者さんから仕入れたようで、それをネタにしてきた。女性から男性にギフトを贈る文化は相当意外だったらしい。。。
ウィキペディアによると、チョコを贈る風習の歴史を知ることができる。クリスマスのKFC同様(過去ログ参照)、企業戦略がハマッたケースの一つなのだろう。。。あのソニーも関わったとか。。。
歴史はともかく、女性としてはアリガタ迷惑な風習か??
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さらにちなみに、昨日自分が出かけるとき、娘に
一緒に歯医者行く?
と聞くと
いかない!
と。
前回の検診、娘にとってちょっとしたトラウマになったようだ。。。
食後、
歯磨かないと歯医者いくことになるぞ~
と脅すと、
歯みがく!
と、いつも拒否しがちな歯磨きを自らするようになった(とりあえず、これまでのところ)
「将来、歯医者行きを避けられる」という報酬期待から生じる、「毎日の歯磨き」という小さなパニッシュメント?の受け入れである。
この手は使えるかも。。。
2/16/2008
スーパー・パレード
マンハッタンに舞う紙屑とトイレットペーパー。
ブロードウェーの歩道を埋め尽くしたヤンキースファン(写真左下で見上げてる人・わかりづらし)混じりのジャイアンツファン。
それが現実になるとは、9月の時点では誰一人としていなかったはず。。。
ということで、もう10日ほど前になるけど、スーパーチューズデーに、研究をサボってNYジャイアンツの優勝パレードを見てきた。
パレードは、ローワー・マンハッタンのブロードウェーにて。
バッテリーパークからシティーホールまでの行程。
まずは、スーパーボウルの当日。
嫁さんの知り合いのお宅でスーパーボウルを観戦した。さすがに最後は大いに盛り上がった。スポーツ観戦であんなに盛り上がったのは学部生以来ではないか。
それにしても、今シーズンのNYジャイアンツいろいろあった。。。安っぽい映画のネタになるんではないかと思うくらいのシーズンだった。
ということで、ブログのネタとして今シーズンを振り返ってみる。そんなことはどうでもえぇ、と思っている方が大多数だとしても。。。
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昨シーズン終了後、ティキ・バーバーが引退。自分が知る限り、たいした補強もせず今シーズンを迎えた。
シーズン出だし、頼みのディフェンスすら崩壊状態に。。。正直、プレーオフ進出すらあきらめた。
数試合でディフェンスが立ち直ったと思ったら、オフェンスの脆さが露呈。
イーライ・マンニングが、たくさんファウルをおかしたり、敵のデフェンダーめがけてたくさんパスを投げて、勝つべき試合で相手に勝ちをプレゼントしたり。。。レシーバーもバレスの不調が続き、シーズン終了間際には、人気者ショッキーがケガで戦列離脱。。。
とりあえず、プレーオフ進出を決めただけでもよくやった、と思った。
実際、負けてもおかしくないuglyな試合がいくつもあった。そのうち1,2ゲームを取りこぼしていたら。。。(今思うと、この勝負強さが優勝につながったのかもしれない)
が、レギュラーシーズンの最終戦。
相手はスーパーボウルの相手でもあったペイトリオッツ。ジャイアンツはすでにプレーオフ進出を決めていたのでどうでもいい試合。一方、ペイトリオッツにとっては「パーフェクト」シーズンのためには負けられない一戦。
しかし、ゲーム終了までジャイアンツはよう頑張った。もう一歩のところでペイトリオッツに勝ちそうだった。ジャイアンツとしては失うものは何もない、開き直りに近い状態で臨めたのだろう。思うに、この「開き直り」こそがワールドチャンピオンへの伏線になったと思われる。(よって、守るものができた次シーズンはかなり心配ではある。。。)
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そして、プレーオフ。
そのペイトリオッツ戦からイーライは完全に生まれ変わった。ほとんどノーミスの試合が続いた。ディフェンスは相変わらず良い感じだった。カウボーイズとパッカーズをギリギリのところで退けてスーパーボウルへ。新聞でも、イーライは生まれ変わった、と半信半疑ながらも絶賛する記事が目に付いた。
それにしてもスーパーボウル、ホントに良い試合だった。
あんな試合をされたら、ファンはたまらない。しかも勝ったし。。。
翌日、月曜日。
ニュースで「優勝パレードは明日11時から」とアナウンスしていた。行くことにした。自分がNJ州にいる間、もう二度と拝めない可能性が高いし。。。
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そしてパレード当日。
朝、研究室で一仕事して(一応)9時ごろからPathに乗ってローワー・マンハッタンへ。
電車に乗ったニューアークのホーム。すでにファンでごった返していた。高校生くらいの人から家族連れまで。
マンハッタンに着いて、10時前に何とか場所を確保して1時間ほど待つ。
11時からパレードスタート。
何台か通り過ぎた後、イーライたちが乗った車が来た。さすがに大いに盛り上がる。
こちらが、今回撮った中で精一杯の”typical”な写真。一応イーライを確認できるし、トロフィーも見える。
けど、背の高い「外人」の皆さんの中で、万歳状態で撮らざるを得なかったので、ピンボケや前の黒人のおじさんの写真モニターを撮ったり。。。ネタとしては悪くないが、かなり勝負弱い。。。
キッカー・タインス。スーパーボウルいけたの、あんたのおかげだよ。
(どうでもいいけど、前のおじさんの腕ジャマ。。。タインスの真似すんなよ。。。)
という感じで、撮った写真は、自分のフォトグラファーとしての才能をいかんなく発揮するデキだったが、いろんな選手を間近で拝めた。
が、普段みんなヘルメットをかぶっているので、ゼッケンナンバーかなにかつけてもらわんと、誰が誰かようわからんかった。。。
ちなみに、選手の乗った車と車の間にといった具合でニューヨークの観光バスも通った。
どういう基準で選ばれたのかは知らないが、一般人が乗っていたと思われる。
ということで、そのバスが通るたびに
Who Are You! Who Are You!
の大コール。
他にコールで面白かったもの:
Tiki Who! Tiki Who!
上述のようにTikiは昨シーズン引退した偉大なランニングバック。昨年までみんな「Tikiサマ」と崇めていたはずなのに、ファンの心理なんて所詮そんなもの。。。
Boston Sucks! Boston Sucks!
お約束?
ヤンキースのキャップをかぶってる人はたくさんいた。ジャイアンツファンのかなりの人はヤンキースファンでもあるのだろう。。。
ということで、次はヤンキースのパレードに期待。
2/09/2008
Rhythms without the Brain
周期的に変化する環境に対して、とある生物がその周期的な変化を読み取って予測的に対応できたとしたら、その生物は「知的だ」と言って良いのではないか?北大の研究チームが最近報告した研究によると、アメーバ(粘菌・変形菌)が、環境の周期的な変化を記憶・期待しているかのように振る舞うことがわかった。
その研究で調べたPhysarum polycephalumは変形菌(粘菌)の一種で、多核細胞の「スライム」だ。通常、乾いた環境になると、その粘菌の動きは遅くなる。そこで研究では、粘菌の生息環境の乾き具合(温度と湿度)を実験的に変化させて、粘菌の動く速さを測っている。
粘菌の「期待」
乾いた環境にすることを、例えば1時間周期で三回繰り返す。その時、その1時間周期のリズムにあわせて、粘菌の動きが遅くなる。さらにその後、粘菌がどう動くか調べたところ、まるで1時間周期のリズムを覚えたかのように、同じリズムで動きを変化させる(遅くする)ことがわかった。環境変化は実際には起こっていないのに、周期的な変化をまるで期待しているような動きを粘菌がみせた。
粘菌の「記憶」
続いてその研究では、その周期的な環境変化を起こした7-10時間後に、再び1回だけ乾いた環境にしている。面白いことに、その時は1回しか環境を変化させていないのに、7-10時間前に起きた1時間周期のリズムをまるで記憶して期待しているように動きが周期的に遅くなることがわかった。
粘菌の中のリズム
さらにこの研究では、この現象を説明する力学モデルを提唱している。そこでは、それぞれ異なるペース(周波数)でリズムを刻んでいる複数の振動子を仮定している。実際に粘菌は様々なリズムで動くのに基づいている。そのモデルは、その様々な動きを実現するための化学反応が粘菌内部で起こっている様子をイメージすれば良い。粘菌の中にいろんなリズムでスウィングしている振り子がたくさんいて粘菌本体の動くペースを決めているイメージ。
リズムと「期待」
そのモデルで環境変化を起こすとどうなるか?
環境変化によって、バラバラだった振動子たちの「位相」(振り子の場所)が揃う。その環境変化がリズムを持っていれば、振動子たちはそのリズムにあわせてシンクロする。振動子たちが一旦リズムを刻みだすとしばらくそのリズムが維持される。
これは、1時間周期で3回乾いた環境に変化させた後、しばらく粘菌の動きがリズムを刻んだ現象を再現したことになる。
リズムと「記憶」
では、しばらくした後に1回だけ環境変化を起こした後、どうやって粘菌は予測的な動きができたか?
その振動子のモデルが一つの解決策を教えてくれる。そのモデルでは、もともと異なる周波数で振動する振動子が複数いた。周波数Aで振動する振動子たち、周波数Bで振動する振動子たち、、、。上述のように、周期的な環境変化を繰り返したら、振動子たちの位相が一旦揃う。しかし、振動子たちはもともと異なる周波数でリズムを刻んでいるから、環境変化がないとすぐに位相がずれてしまう。
一方、同じ周波数で振動する振動子グループの場合、一旦揃った位相はなかなかズレない。もともと位相こそ違えど、同じペースで振動していたから。
その振動子グループごとに位相を揃えた状態で再び環境の変化が一回でも起こると、簡単にすべてのグループの位相が揃いやすくなる。こうして、粘菌の記憶的・予測的な動きを説明できるのではないか、とその研究から考えられそうだ。
ここでは、振動子たちのシンクロしたリズムが「予測」を、振動子グループが一旦位相を揃えたことが「記憶」に対応する。
知的な「脳ナシ」
もちろん、実際の粘菌の中でそのような振動子に対応する化学反応が起こって粘菌の動く早さを決めているかはよくわからない。これは今後の研究の課題になるだろう。
さらに、そのような粘菌の記憶・期待のような能力が、自然界で生きていく上でどう役立っているのか、それも今後の課題だろう。いずれにせよ、粘菌が外界に対して適応的に振る舞えるポテンシャルを兼ね備えているのは間違いないようだ。
最後に、この粘菌の「知性の源」がヒトの知性と進化的にどうつながるのか、今後の研究が注目される。
知的に振る舞うには、必ずしも脳はいらない。
参考文献・参考情報
Phys Rev Lett. 2008 Jan 11;100(1):018101. Epub 2008 Jan 3.
Amoebae anticipate periodic events.
Saigusa T, Tero A, Nakagaki T, Kuramoto Y.
今回紹介した論文情報。このグループは以前、粘菌が迷路の最短経路を解けることも発見している。
Nature. 2008 Jan 24;451(7177):385.
Cellular memory hints at the origins of intelligence.
Ball P.
ネイチャーで紹介された記事(直リンク)。「同期現象」で有名なStrogatzのコメントも紹介されている。
変形菌の世界 : 国立科学博物館 植物研究部
変形菌の見つけ方・飼い方なども紹介されていて超充実。
「振動子」のイメージを得るには、フーコーの振り子(ウィキペディア)
2/02/2008
スーパー・ネタミ脳
「スーパー」というと二つのスーパーがこれからある。
明日に迫ったスーパーボウル。
そして、今回ネタにする火曜日のSuper Tuesday。「ツナミ火曜日」という別名もあるらしい。
これまで予備選挙をチビチビやっていたが、多くの州で一斉にやって、各党の候補者を一気に絞り込む。
ヒラリーか、オバマか?
研究室内の一部の人たちが大いに盛り上がっている。
アメリカ国籍がなくて投票できないのに熱くなるポスドク。
オバマのキャンペーングッズ(ポスター、バッチの類)をゲットして、バッチをして歩く研究者。
オバマかヒラリーか迷っている人を、如何に説得してオバマ票を投じさせるか戦略を練ったりしている大学院生。
候補者の演説をテレビで見てると、ロックシンガーがMCをしているような盛り上がりようである。大したこと言わなくてもヒューヒュー言ってくれそうな雰囲気すら感じる。
そういうのを見ていると、うらやましく思う。
日本の政治の場合、どこが政権を握ろうが、誰が総理大臣になろうが知ったこっちゃない、と思っている人が多い気がする。自分はそう。が、アメリカはまさに「意思決定」して票を投じようとする雰囲気がある。候補者の主張をよく知っている人が多い(本来はそうあるべきなのだろうが)。つい感化されて、Debatesの番組を見たりした。。。
そんな大統領選挙の盛り上がりを見ていると、うやらましい。。。
ところで、その「うらやましい」。ネタミといったら良いか。
そんなネタミを感じている自分の脳はいったいどうなっているか?
今回はそのネタミをネタにする。(前置き長すぎ)
---
ネタミは、社会生活を送るヒトのおそらくほとんどが抱く感情。(ではないかと思われる)
大統領選挙でなくても、例えば、知り合いの研究者が「ネイチャー」や「サイエンス」に論文を出したり、独立職を得たりすると、多かれ少なかれネタミ的な感情を抱く。ネタミは、社会生活を送るヒトにとって、不可避的に起こる感情のような気がする。特に、昨今の激化した競争化社会、ネタミはさらに蔓延している気がする。
そんなネタミを感じている脳はいったいどうなっているか?
おそらく脳の中で相手の情報を入力として受け取り、自分の出力能力と比較していそうな気がする。意識的か無意識的かはともかく。とすると、何となくミラーニューロンがらみの議論があっても良いような気もしないでもない。(ミューラーニューロンに関しては、例えばこちら。英語ならこちら。プロ向けはこちら。)
そんな「ネタミ脳」の研究はあるのだろうか?
ネタミ。英語ではenvyと訳した方が良いか。
wikipediaで調べてみると、envyの定義は、
an emotion that “occurs when a person lacks another’s superior quality, achievement, or possession and either desires it or wishes that the other lacked it.”
とある。
自分には欠けている良い物事を他人が得た時に抱く感情で、自分もそうありたい、あるいはその得たものをその人が失って欲しいと思う感情、のようだ。
ジェラシーは、どちらかというと恋愛が絡んだネタミと考えた方が良さそうか。
そこで知ったばかりのウンチクを語ると、
アリストテレスはenvyのことを
the pain caused by the good fortune of others
と言っている。他の幸せに起因する痛み、とでも言ったらいいか。
シェークスピアのgreen-eyed monsterに関するウンチクもそこには記載されている。
しかし、科学関連のことは書かれていない。まともに研究されていないのだろうか?
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では、PubMedでenvy mirrorと叩いて論文を検索してみる。
No items found
またも自分の勘は外れたか。。。。
では、envy brainと叩いて論文を検索してみる。
確かに少なそうな雰囲気だ。そんな中で、Brainという雑誌に2007年に報告された論文がひっかかってきた。
ちょっと読んでみる。
腹内側部の前頭葉に損傷を負った人を対象に研究したところ、他者が抱いているネタミとあざけり(gloating)を理解するのに障害がある、ということがわかったようだ。しかも、右脳と左脳で違いがあるようだ。
面白い。
この論文では、「心の理論」を元に研究をスタートしている。ミラーニューロンと絡めるのはそうは悪くないか??
ちなみに、ネタミやあざけりの感情を”fortune of others” emotionsと呼ぶらしい。「他者の成功(不成功)」への感情。アリストテレスに源流があるか。
ただ、この研究をそのまま解釈すると、「前頭前野腹内側部」が関わっていそうなのは「他者のネタミ相手を理解する能力」、ということになる。というのは、この研究では、スクリーン上にキャラクターがいて、そのキャラクターがネタミを抱いている相手を4つの選択肢から選べ、という課題を用いている。前頭前野腹内側部に損傷を受けた人はこの課題の成績が悪かった。
だから、この研究は、キャラクター(他者)のネタミ相手を見つける機能を調べているのであって、ネタミそのものを感じられるかどうかとは別問題な気がする。
なので、ネタミを感じている自分の脳でも、ホントにそこが必要なのか、もう一つはっきりしない。
---
そもそも、ネタミという感情は、自分の能力を評価する・していることが超重要ではないか。例えば、ネイチャー論文を連発しているAさんにとっては、Bさんが「ネイチャー・ニューロサイエンス」に論文を出しても、ネタミの気持ちは弱そう。ネタミには「自己評価」的な要素が重要。
「自己評価」は、少なくともこれまでの自分のエピソードに基づいているだろうから、エピソード記憶に関わる脳の場所も重要ではないか?とすると、いろんな場所が関わってきそう。
「心の理論」がらみで考えると、ネタミを感じるには、相手の気持ちを読み取らないまでも、相手が成功したかどうか理解する必要はある。だから、「心の理論モドキ」は必要か。
こう考えると、envyを理解する上で、「心の理論モドキ」と「エピソード記憶」というトピックが浮かび上がるか。
この線の話だと、例えば、「心の理論」と「エピソード記憶」は独立、という研究があったりもする。とすると、なるほど、心の理論とエピソード記憶は別物で、上で紹介した研究は前者重視でenvyを調べた研究と考えられるか。
逆に、ネタミには、心の理論とエピソード記憶の相互作用は不可避、と考えると、脳のいろんなところが関わることになる。それから扁桃体はどうか?も考えたい。
なかなか奥の深そうな問題である。。。
---
ところで、ネタミの進化的意味はどうだろう?
競争相手が成功したかどうかを評価する能力はフィットネス向上につながるだろうから、その評価能力(の副産物?)としてenvyがある、と解釈しても良さそう。そして、ネタミはモチベーションにつながる。ネタミがきっかけで、自分も成功者になろうという気持ちにつながる。つまり、自分のフィットネス向上につながる感情とも言える。
一方で、ネタミが悪い方向へ向かうと、犯罪につながる。他人の財産を盗んだり、最悪その成功者を。。。諸刃の剣的な面もあるか。競争化社会でネタミが蔓延した結果、犯罪件数が増える、というのは大いにありそうだ。
それから、envyとjealousyは重複した部分を持つ言葉で、何となく脳活動も重複した部分がありそうな気もする。jealousyというと、恋敵に対して抱くenvyというニュアンスもあるか。とすると、恋するというか、子孫を残す生物のどこまでjealousyの起源をさかのぼれるのか、ちょっと興味がある。
ある動物は、モテモテのセレブな仲間を見て、嫉妬したりするのだろうか。。。
上のエピソード記憶と心の理論モドキの線で考えてみる。
エピソード記憶の研究なら、いろんな動物で調べられている。(と言ってそう間違ってはいない)
一方、心の理論モドキというか、ミラーシステムはどうか。
専門度が上がるが、ミラーニューロンの活動をコロラリー活動(corollary discharge)だと抽象度を上げて理解すれば、鳥はもちろん、昆虫にだってそんな活動をするニューロンはいる。コロラリー活動というのは、自分の行動出力情報と入力した感覚情報を差っぴいているような振る舞いを示す神経活動とでも言ったら良いか。ミラーシステムのエッセンスは、内因・外因の成分を差っぴく神経システム、と極論すればそうか。
ちなみに、ここでのミラーシステムの話は、オリジナルな心の理論の議論で言われる「他者の気持ちを理解する」、とはちと違う(実際、ミラーシステム=他者の意図・インテンションの読み取り、という仮説そのものが最近揺らぎつつある)。
しかし、ここまで来ると、もとのenvyとは随分外れた議論のような気もしてきた。。。
envyはemotionの一つ。
これは良い拘束条件にはなる。
けど、そもそもemotionとは何?
emotionをどうくくったら良いか?その拘束条件そのものが弱い。。。
メカニズムに基づかずに定義され使われてきた言葉は、得てしてこういう問題にぶつかる。。。
---
それにしても、envyをどう研究のネタにするか?
上述のように、envyは個人の価値観に強く依存する。必ずしも、他の研究者がネイチャー論文を出すことはenvyの対象にはならない。一方で、ビルゲイツにenvyを抱く人は多いか。。。ただ、成功が大きすぎたり、もともと手の届かないものに対する感情はenvyと違う気もする。相対的に他者の成功を評価しないといけない。その人が手の届きそうで届かない成功を実験的に再現できると良い実験ができそうか。「他者の成功」というパラメーターを操作できる実験をうまいこと考えないといけない。
それから、脳活動以外で如何にenvyを客観的に評価するか、という問題もある。もしそれができれば、脳損傷を負った人から何か糸口が得られるだろうし、ヒト以外の動物の研究へつながる。envyの結果生じる行動を探さないといけない。
横軸に「他者の成功指数」、縦軸に「envy指数」をとる。そして、格上の相手が成功した時より、うまいこと競合者が成功した程度の成功指数で「envy指数」が最大になれば、その実験はかなり良い線いってる気がする。
例えば、株取引のシミュレーションを題材にするのはどうか?(またか)
お金という生存に不可欠な要素を取り込んでるし。。。ルールとして、こっそりお金をパクれる、と設定してenvy指数を計算するもとにするとか。。。
そして、このゲーム中の脳活動を計測して、特定のイベントに関係した活動を見つけるとか。。。
研究としては楽しそうだけど、落とし穴がたくさんありそうな気がする。。。研究は楽しければ良いというだけのものではない。
長くなったことだし、またの機会に考えてみます。。。
長い文章読んでいただき、ありがとうございました。
いろんなご意見をお待ちしてます。
---
参考にした情報源
wikipedia
envy
jealousy
心の理論
mirror neuron (wikipedia)
mirror neurons (scholarpedia)
文献
Brain. 2007 Jun;130(Pt 6):1663-78.
The green-eyed monster and malicious joy: the neuroanatomical bases of envy and gloating (schadenfreude).
Shamay-Tsoory SG, Tibi-Elhanany Y, Aharon-Peretz J.
他者のenvyとあざけりを読み取るのに前頭前野腹内側部が関わることを明らかにした。
Science. 2007 Nov 23;318(5854):1257.
Theory of mind is independent of episodic memory.
Rosenbaum RS, Stuss DT, Levine B, Tulving E.
脳損傷を負った二人を調べたところ、心の理論とエピソード記憶は独立に働きうることを明らかにした。その二人の損傷部位が異なる点も興味深い。
Nature. 2008 Jan 17;451(7176):305-10.
Precise auditory-vocal mirroring in neurons for learned vocal communication.
Prather JF, Peters S, Nowicki S, Mooney R.
ごく最近センセーショナルに発表された論文。鳥のHVCという神経核に、他の鳥の鳴き声を聞くときと、自分がさえずる時に全く同じように活動するニューロンがいて、それが高次の神経核へ連絡を送っていることを明らかにした。発見以前に、技術的な点でプロをうならせる研究。
Science. 2006 Jan 27;311(5760):518-22.
The cellular basis of a corollary discharge.
Poulet JF, Hedwig B.
昆虫にコロラリー活動(自分の行動出力情報と入力した感覚情報を差っぴいているような振る舞いを示す神経活動)を示すニューロンがいることを報告している。
Curr Biol. 2008 Jan 8;18(1):R32-3.
Action observation: inferring intentions without mirror neurons.
Kilner JM, Frith CD.
従来の、ミラーシステム=他者の意図の読み取り、という仮説の修正が迫られていることを簡潔にまとめた記事。
知性と感情は別モノか?
Nature Review Neuroscienceに面白い総説が出ていて、それについて簡単に。
その文献情報はこちら。
Nat Rev Neurosci. 2008 Feb;9(2):148-58.
On the relationship between emotion and cognition.
Pessoa L.
このエントリーのタイトルで「知性」というのは、いわゆる「前頭葉機能」。文献のタイトルではcognition(認知)という言葉が使われている。以下「認知機能」と呼ぶことにする。例えば、ワーキングメモリ、注意といった類の脳機能を指している。
一方、感情と情動は専門的には区別されるが、ここでは積極的には区別せず、英語で言うところのemotionを指すことにする。
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さてこの総説。一言で言えば、認知機能=前頭葉、情動=扁桃体という古い見方を捨てましょう・改めましょう、ということを謳っている。
その根拠として、前頭前野が感情に関連した活動を示したり、逆に扁桃体が認知機能に関連した活動を示すといった研究例をまず引き合いに出している。続いて、脳のマクロレベルのネットワークの話を持ち出し、脳回路という構造上、認知機能と感情を分けるのはもともと難しいと主張。
そして、脳領域と脳機能との間には多対多の関係があるんだ、と主張している。つまり、1つの脳領域は複数の機能に関わっていて、逆に一つの脳機能ですら複数の領域の活動に支えられている、ということを主張している。そして、「相互作用」重視で脳を理解していきましょう、ということを謳っている。
主張としては、ごもっともでこういう見方は大好き。
が、問題は、その考えをどう実験的に確かめるか?ということ。
その有効策は何も言っていないと理解した。確かに、いくつか研究を紹介してこういう方向の研究が望ましい的な主張は読み取れた。が、例えば、脳の領野間結合に基づいた研究は、解剖学的な結合の「重み」を軽視している傾向が若干ある。軽視せざるを得ない現状がある。
例えばこの総説の図2や3。
これだけ見れば、「なるほど、脳の構造上、認知機能と感情を分けるのはナンセンス」、というのがよくわかる。が、この図で同じ矢印で結ばれている結びつき方は、果たして同じなのか?もし、結びつき方の「重み」が違って、実は認知機能と感情を完全ではないにしろ区別可能なら、従来の説は間違ってないと反論できる。機能的結合を考えたら、解剖学的な結合では見えない関係が見えてきて、やはり古い見方は正しい、ということにもなりうる。主張としては良いのだが、そのあたりの問題を具体的にどう考えるべきなのか、もっともっとテクニカルなことを考えないといけない。
話は少し変わるが、こういうグローバルネットワークレベルに関しては、ひょっとしたらコネクトームなしでも、うまいこと考えてうまくいったりして?という気がしないでもない。いくつかのツールに+αをかませば、仮説を立てるような研究ができるかもしれない、という気が最近ちょっとする。そして、その仮説を脳機能画像計測で検証するという研究がひょっとしたら可能かも?という気がちょっとする。「気がちょっとする」ばかりではダメだけど、マカクザルは非常に良いモデル生物というのは間違いない。(けど、実際にやるのは、超大変なんやろなぁ。。。)
それはともかく、上の文章で、
「マカクザルは非常に良いモデル生物というのは間違いない」は前頭葉
「超大変なんやろなぁ。。。」は扁桃体
が言っている。
などと分けるのはNGだ、ということを今回紹介した文献では言っている。(ちと違うか)
1/27/2008
The Swingy Market
下手に経済をネタにすると、無知を暴露して墓穴を掘るだけな気もする。が、あえて。。。
この一週間、株式市場が揺れに揺れた。
やれサブプライム問題だ、商品価格だ、公定歩合だ、景気刺激策だ、景気後退の鮮明化などなど。個人的な生活にもいろいろ関係のありそうなことがいろいろあった。
まずサブプライム問題は、ローンも組んだことがない自分には全く関係ない。(株価下落というトバッチリはうけてたりもする。。。あいたたた。。。)
次に、商品価格のこの1年ほどの高騰はシャレにならん。
まずガソリン代が高止まり。
原油以外の商品価格も高騰したおかげで、ラトガーズ大、特に自分のいる研究所の人たちがランチとして愛用しているタイレストランが値上げに踏み切った。これはまさに家計を直撃である。
5.90ドルで食べれたのが6.50ドルへ。
月12ドルくらい出費がかさむ。
せこい?
けど、2回分食べ損なうことになる。タックスをごっそり持っていかれるアメリカのポスドクとしては、せこくない切実な話だったりもする。
次に、公定歩合の異様なまでの緊急引き下げ。
もしこれからローンを組もうという人には良い話か?家の価格も下がってるし、数年のうちに家でも買おうという人には良い知らせだと思われる。(公定歩合をさらに下げてくれそうだし)けど、サブプライムですでに苦しんでる人には何の得にもならないのではないか。
景気刺激策。
専門家のいうことはようわからんが、庶民としてはちとうれしい報酬である。ニュースを知ってドーパミンニューロンが活動した気がする。自分の理解が正しければ、少なくとも300ドルはタックスが返ってくるらしい。うちには子供が一人いるからさらに300ドル。
さて、何に使う?
そのお金が向かうセクターの株は短期的に上がったりするのか。(もうすでに織り込まれたのか?そのあたりがよくわからん。織り込むって何??)
とりあえず、100ドルを使って我慢している本くらい買いたい。(涙ぐましい希望)
それにしてもこの政府の動きは早かった。そのスピードには驚いた。
日本でバブルがはじけた直後にこういう動きがあったのだろうか?というか、今動いた方が良いのでは?日本は経済と政治の乖離度がアメリカより大きい気がする。というか、すでに借金まみれで首回らずか?
日本といえば、株価にもあらわれているように、相対的な魅力がどんどん低下している気がする。何となく一人負け的な印象すら受ける。実際、アメリカの目はどんどん中国へ向かっているのを感じる。どの政党の誰が大統領になっても、一昔前の「日本バッシング」というのはトーンが落ちて、「中国バッシング」的な方向に行くような勝手なことを思ったりもする。バッシングを受けているうちが華である。日本にはもっと頑張って欲しい。心底思う。
と、ここまでが今週思ったこと。
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さて、ここから強引にサイエンスの話へ持って行ってみる。
株価はどうやって決まるか?
もちろん、表面的な辞書的なことを聞いているわけでなく、株取引に参加している人たちが、どんな見えない・文章化されていないルールにしたがって行動し、集団として意思決定をしているか?ということを気にしている。小難しい話ではあるがちょっと考えてみる。
おそらくそんな研究はたくさんあるのだろう。
けど、自分は全然知らない。なので、知っている情報のうち強引に結び付けられそうな情報に基づいて考えみる。
例えば、「集団による意思決定」は、複雑系というか、動物集団行動の研究として面白い研究がある。というかごく最近知った。ConradtとRoperの研究やCouzinたちの研究は面白い。
「株式取引における集団的意思決定」を考える上で気になることは少なくとも2点。
第一に、各エージェントが、ローカルだけでなくグローバルな情報も得ることがある、ということ。情報伝達の仕方が動物集団行動とちょっと違う気がする。第二に、各エージェント格差が大きい。つまり、各エージェントの影響力の分布は、間違いなく平等ではなく、おそらく正規分布でもなく、たぶんログノーマル的な分布か。このあたりを考えてモデルを考える必要があるのか?けど実験による検証は不可能に近いから、机上の空論になるおそれもあるか。。。
それはともかく、まず第一の点について補足。
株取引の場合、インターネットのおかげで、大きなインパクトを与える情報は一瞬で全体に広がる。一瞬で情報が広がるから、同期現象が過剰におきやすい。スーパーシンクロニーが起こる。インパクトのある情報が伝わると短期的に不安定な振る舞いを示す、というのは何となくわかる気もする。インターネットの時代前後で、株価の振る舞いを比較するのは面白いかも?それから情報を伝達する時の情報源は、必ずしも株取引に参加していなくても良い。株取引での情報伝達は、電話などで情報がローカルに伝わっていって意思決定する世界、とは若干違いそう。
第二の点について。
例えば、10万円くらいの資金で投資信託を買ってかわいく参加している人もいれば、インサイダー取引するアンフェアな連中がいたり、フランス有名金融機関のおバカさんのように、システムをハックして数兆円という想像できない額をスルような人もいたりする。ここまで異なる影響力を持った多様な要素からなるシステムはそうは見つからない。もちろん、ポジティブフィードバックが働き続けた結果としての今、という考えはありかもしれない。けど、エージェントの多様性はかなり重要な気がするがどうか。一方で個人の目的はゲインの最大化で一貫している。
他にもいろんな特徴があるのか?
では、脳はというと、各神経細胞がシナプスを介してバケツリレー的に情報を伝えていくから(教科書的には)、脳と株式市場は異なるルールで動いているような気もしないでもない。
一方で、株取引を実際にしているエージェントは脳を持っているので(最近は、AIがやってるヘッジファンドもあるとか、ないとか。。。「ヒト対AI 株取引バージョン」 である。。。脱線。)、エージェント内部はルールAが走るシステム、エージェントたちを集団としてみるとBという異なるルールで動く、というややこしいことになる。
と思ったけど、脳も違ってない気もしてきた。(あっさり前言撤回)
大脳基底部や脳幹からの情報、いわゆるアセチルコリンやらセロトニンは、グローバルな情報と考えられなくもない。その情報源は、例えば感覚情報処理に直接的に関与してなくても良い。
ローカルに情報伝達しつつ、グローバルな情報(脳状態、市場状態?)も受けながら、集団として意思決定なり、答え・値を一つに決める、そんなシステムと捉えれば、脳も株式市場も近いところはあるのか?例えば、グローバルな情報へのアクセス性というパラメーターを変えれば、実は脳シミュレーターが株シミュレーターになったりして、、、
んなアホな、、、、(暴走)
一方、多様性という点では、ニューロンは確かに多様ではある。けど、いわゆるニューロンの多様性とはちょっと違う気がする。けど、文字通りの「意思決定」に関する貢献度という点で考えれば、末梢のニューロンと連合野のそれとの影響力の違いを考えれば、アナロジーは考えられなくもないか?このあたりはよくわからん。
階層性、フィードバック、閾値によるストラテジーのスイッチ、多様性、などなど、、、そんなキーワードをどうやって消化させるか?
とりとめなく書いて不毛な話になってきたので、この辺でやめます。
補足
The Swingy Marketとは、各エージェントがスウィングしながら株価というswingyなメロディーを奏でているシステム、を指す。完全なでっち上げ用語。
1/20/2008
デリシャス
del.icio.usを使い始めて数ヶ月。
自分がつけたブックマークが1000を超えたので、ちょっとエントリーのネタに。
del.icio.usをお薦めできるかは他のサービスと比較したことがないので判断できない。けど、少なくともお薦めできるのは、タグ付け情報管理。いまさらだけど。。。
使っている主な目的は、文献などの管理。
(文献管理だけが目的だったらCiteulikeやSesameの方が良さそう)
ハードコピーを棚で管理したり、PDFファイルをハードディスクで管理するよりは圧倒的に高効率。自分の経験からそれは間違いなく言える。
今自分がやっている方法は次の通り:
論文のアブストラクトのページをざっと見て、面白そうだったら、雑誌名、年、著者名、関連キーワードなどをタグとして登録する。著者名はもちろん全員ではない。知っている人、あるいは知っておいた方が良さそうな名前をタグにする。
プラグインツールがあるので、1クリックで登録ウィンドウが表示され便利。
論文に限らず、新聞記事、プライベート性の高いものももちろん管理できる。プライベート性の高いものは非公開にできる。ライバルには知られたくないグラントやジョブの情報なども非公開に。。。
登録した情報は、付けたタグをもとに絞り込み検索ができるので、今のところ再チェックしたい情報を100%、しかも短時間で発掘できている。
それから、期待していなかったメリットも。
あるタグのブックマーク一覧を表示させると、意外な論文同士が関係していそうなインスピレーションを得られることが実際にある。その意味では、できるだけ思いつくままたくさんタグを付けると良いかもしれない。
問題点を挙げるなら、コメント欄の字数制限。
備忘録的にもっとコメントを残したい、と思ってもそれができない。情報管理という点では大きなデメリットである。
歯医者へ行く
アメリカに住み始めて3年弱。
初めて歯医者に行った。一家総出で。
どこか歯が悪いというわけではなく、クリーニングと検診が目的。
ただでさえ多くない給料から、毎回保険料をたっぷりボラれているので(タックスも)、一度は行こうと思っていた。
場所は、車で10分くらいのところ。韓国系の方が経営している歯医者だった。
もちろん、すべて英語でのやりとりになる。
(と言っても、検診だけだから、たいした会話のやりとりない)
まず、個人情報を登録するためのアンケートフォームに記入。
その中に、
普段から局所麻酔をしますか?
鎮静剤投与しますか?
という項目もあった。クリーニング程度で麻酔をする人もいるのだろうか。。。
それから、
保険会社がお金を払わない時、究極的にはあなたに支払い責任がありますよ
的な誓約書があった。アメリカらしい。
アメリカの保険会社を全く信用していない自分は、そのフォームを空欄にしていたが、
ここにもサインしてね
といわれ、
オーケー
とあっさりサイン。
そして、診察室へ。個室だった。
まずレントゲン撮影。
レントゲンのカメラは、ハンディカム程度のサイズで、局所的に4枚ほど撮った。そしてそれがすぐにPCモニターに表示された。なかなかハイテク。。。(最近は日本でもそんなものなのか?)
続いてクリーニング。
渡米前にやって以来なので実に3年ぶり。。。
そして検診。
このあたりは日本と同じ。x番xxxといった具合で、チェックしてくれた。
検診の結果、つめものが外れかかっているらしく、処置をした方が良い、とのこと。
ということで、次の予約をしてくれた。
嫁さんと娘はノープロブレムだった。
今回行った歯医者、清潔な感じで、先生も良い雰囲気だった。
登録した主治医を変更する必要はなさそうだ。
ちなみに、検診とクリーニングならフリー。
保険会社がしっかり負担してくれれば。
1/13/2008
なぜ多様性が必要か?
If we’re in an organization where everyone thinks in the same way, everyone will get stuck in the same place.
(みんな同じ考え方しかしない組織にいたら、みんな同じところで行き詰るだろう。)
これはScott E. Pageというミシガン大の人のコメント。
ニューヨークタイムズ紙に彼の記事が掲載されていた。この人は複雑系の研究者で、「多様性(diversity)」をキーワードに経済、政治、社会科学に関連した問題に取り組んでいるようだ。
彼はThe Differenceという本を出版していて、この記事はそれに関するインタビューとなっている。自分はこの本はまだ読んでいない。けどこの記事によると、この本が扱っている問題は、なぜ多様性が組織にとって重要で、多様性はどのように組織としての生産性を高めるか、ということのようだ。
インタビューのコメント、示唆に富んでいた。上のコメントは、最も印象に残ったコメント。多様性が必要な理由。
脳科学の文脈で考えると、少なくとも二つの点で参考になるかも?と思った。
まずは研究を進める上での話。研究戦略の話。第二は、研究対象の脳の働き方。
前者の研究戦略について考えてみる。
(脳を知るには研究戦略が大事だから。神経科学に限らない話な気がするから)
ようは、異なるバックグランドを持った人材を動因して一つの大問題に取り組むことが重要、という言うは易し・・・的なことなのだろう。
確かに、仮に同じバックグランドを持った人で構成された研究チームだとすると、例えば、統計処理をどうしたら良いのかわからなかったり、とある実験をどうすれば良いのかわからなからなかったりしそう。一人でもその道のプロがいたら、いとも簡単に解決するような問題に、無駄に時間と研究費を浪費しそう。
今の脳科学、少なくとも自分の分野はとにかく総合力が問われる。実験をするだけでも、神経科学の知識はもちろん、プログラミングというソフトから計測装置のハードの知識、そして電気ノイズというわけのわからないものに対する知識・経験がいる。解析となると、統計の知識が不可欠。そういう意味では、多様性を持った研究チームというのは、研究を潤滑に進める上で非常に大事な気がする。
実際上の問題は、如何にそんなチームの構成要員になるか?そして、如何にそんなチームを構成するか?
前者に関しては、最近は例えば物理系のバックグランドを持った人が確実に神経科学へ移ってきているので、そういう多様な人たちがいる研究室、そういう人を積極的に採用している研究室へポスドクなり大学院生として加わる、という道を探ることになりそう。自分が知っている範囲でも、日本にもそういう研究室がある。
後者に関しては、自分が今いる研究室は悪くない見本か。(成果という点ではまだだけど。。。)
ボスは物理系出身で、実験をしたことない。一方、自分の物理の知識は高校生レベルでスタック中。。。けど、実験のことなら、少なくともボスよりは知っている。でないと困るか。
他のメンバーを見ると、物理・数学系の出身者が他に2人。神経生理学のプロが一人。さらに、工学系出身のポスドクに、コンピューターサイエンス出身の大学院生。。。
よくもこんなに多様な人材を集めたなと思う。
なぜ集まったか考えるに、ようはボスが独立する前に非常に良い論文(いわゆるCNSクラスの論文)を出していることがクリティカルな気がする。実際、自分が今のラボを選んだのはそれによるところが大きい。結局はハイディフィニションな論文が、多様な人材を集めるための一つの必要条件ということにはなりそう。。。
一つのロジックはこうか:
多様な人が読む良い論文を出す→PIになる→多様な人材を集める努力をする
もちろん、PIとしての人間性も非常に大事だから、他のロジックもあるとは思う。
多くの研究者に読んでもらえる良い論文を書くまでは、安易にPIにならない方が良い気がする。多くの人に読んでもらえる論文も書かずに、下手にPI職について、例えば5年というタイムリミットをスターさせたとする。その場合、
多様な人材を集められない→単純な問題でスタック→生産性低下→予備データを得られない→グラントがあたらない→研究費ゼロ→ファイア
という容易に想像できる道を歩むだけな気がする。
PI職、確かに給料が少しはアップして、「独立して自分の裁量で研究ができる」という魅力にあふれてはいるが、その前の重要なステップをすっ飛ばすのは逆にリスクを上げるだけ。
だいぶ話がそれた。。。
話は、多様な組織。
多様性に加えて思うことがある。
それは柔軟性。
例えば、昨夜のNFLのプレーオフ(またか)。ニューイングランドのオフェンスを見ていても、ワイドレシーバー以外のいろんな人がレシーバーとして働いていた。多様な仕事・ポジションに加え、柔軟性を発揮する人材も揃えば、確実にタッチダウンを奪える無敵チームを編成できるのかも。
多様性にフォーカスを当てているPageさんのThe Difference、日本語訳の出版が予定されているそうだ。
1/06/2008
ワイルド・プレーオフ
年が明けていよいよNFLのプレーオフがスタート。
ついつい4戦全部見てしまった。(それだけうちでやることがなかった。。。)
一番面白かったのは、ピッツバーグでの試合。
試合スタートが遅かっりすると、いっそのこと第3クオーターまでは各5分、第4クオーターだけ15分プレーすると良いのに、とたまに思う。けどそれは、サッカーでPK戦だけやれば良い、というのと同じくらい乱暴な意見なのだろう。。。
フットボールの細かいルールはよく知らないけど、キッカーもかなり重要だな、と改めて思った。フィールドゴールはもちろんだけど、当たり前のようにやってるリターンのキックでも、ちょっとしたミスで20ヤードくらいロスることもあるわけで、1プレーの重み・プレッシャーという点ではQB以上のような気もする。
それはともかく、ごひいきのNYジャイアンツ。(どうでも良いけど、ホームスタジアムはNJ州にあるんだから、NJジャイアンツにしろと昔から思っているNJ州住民。。。)
第1クオーターで合計ゲインがマイナスで終わった時はテレビを消そうかとも思ったけど、QBのマンニングは最後まで安心して見ていられた。珍しく。。。先週のニューイングランド戦ですっかり自信をつけたのだろうか。残り試合はすべてアウェーで、今シーズンなぜか相性が良いわけだし、この調子で2月まで残ってニューイングランドを止めて欲しい。それか、スーパーボウルで兄弟対決というのも面白いかも?
次週末も4戦見そうな気がする。。。
1/05/2008
エクササイズと脳
エクササイズは身体だけでなく、心にも良いか?
トレーニング・エクササイズ(physical exercise)をすると、何となくすっきりした気分になる。エクササイズをする時、もちろん脳も働いているわけで、脳科学との接点も大いにありそう。今年はオリンピックイヤーだからか、昨年末から「エクササイズと脳」をテーマにした論文を目にする(気のせいか?)。何でも「脳」をつけたら良いわけではないけど、「オリンピック脳」とでも言ったら良いかもしれない。
そんな安っぽいタイトルの本が出版されるのに備えて、脳とエクササイズとの関係を扱った論文のうち、最近発表されたものを簡単に調べてみようと思う。ちなみに、この分野は全くの無知で、本文はしっかり読んでおりません。。。(まさに安っぽい?)
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エクササイズは脳を活性化するか?
エクササイズの脳に対する効果について、幅広い内容をまとめた総説が出ている。
この分野の歴史から、人・動物の研究、行動レベルから細胞・分子レベルの研究まで包括的に扱っているようだ。「エクササイズは、認知機能・脳の働きに有益である」という説を様々な角度から裏付ける証拠は確かにあるようだ。
生涯にわたってエクササイズを続けることは、心身の健康維持に結びつき、ひいては病気による経済損失を軽減する効果も期待できるのでは?といったことを主張しているようだ。
文献
Nat Rev Neurosci. 2008 Jan;9(1):58-65.
Be smart, exercise your heart: exercise effects on brain and cognition.
Hillman CH, Erickson KI, Kramer AF.
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エクササイズ生理学
新着のJournal of Physiologyでは、「エクササイズ生理学」の特集が組まれている。
もちろん、脳とエクササイズのテーマも含まれている(以下参照)。こちらがこの特集のアウトラインで、一般的なエクササイズというよりは、まさにオリンピックレベルのアスリートを対象にしたエクササイズ生理学を扱っている印象。いわば「オリンピック生理学」か。
上で「オリンピック脳」とは言ったが、エクササイズには脳以外の体の部分も大いに関わるので、その記事にもあるように、より広い範囲で「システム」を扱う分野だ、ということになる。なるほど。確かにこの分野は歴史ある「システム」を扱う研究分野だ、というのが伝わる。
文献
J Physiol. 2008 Jan 1;586(Pt 1):9.
Exercise physiology and human performance: systems biology before systems biology!
Joyner MJ, Saltin B.
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The Olympic Brain??
同じくその特集号に、まさに「オリンピック脳」というタイトルの論文が掲載されている。ただし、タイトルとは裏腹に、この論文では、運動制御に関わる運動野と脊髄の可塑性を比較的地味にまじめに扱っている。オリンピックという究極の運動制御との溝はまだかなり大きいか。
ちなみに専門的になるが、この文脈では、最近報告された論文は関わりそう。その研究では、運動野の神経細胞の活動と筋肉活動の関係は柔軟で、その柔軟性を支えているのは、特定の神経細胞の単純な活性度ではなく、筋肉活動の「文脈」や神経細胞たちの時間的な協調性だということを明らかにしている。非常に面白い研究。
文献
J Physiol. 2008 Jan 1;586(Pt 1):65-70. Epub 2007 Aug 23.
The olympic brain. Does corticospinal plasticity play a role in acquisition of skills required for high-performance sports?
Nielsen JB, Cohen LG.
Science. 2007 Dec 21;318(5858):1934-7.
Rapid changes in throughput from single motor cortex neurons to muscle activity.
Davidson AG, Chan V, O'Dell R, Schieber MH.
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エクササイズと脳と遺伝子とうつ病予防
エクササイズによって脳でどんな遺伝子が働き出すか、という視点で研究した論文が年末に出ている。
マウスに運動させた後、どんな遺伝子が働きだしたか海馬で調べた。そして、働き出した遺伝子群の中のVGFという神経成長因子に注目して研究。すると、そのVGFは抗うつ剤投与時に働くと知られていた遺伝子群と関わっていそうだ、という意外なことがわかった。つまり、うつ病予防・治療の新しいターゲットとして、VGFが新たな候補として挙がったことになる。
ちなみに、この論文は英語版wikipediaでもすでに引用されていた。wikipedia恐るべし。。。ちなみに、そのwikipediaのエントリーには他にも情報源を示しながら脳とエクササイズの関係が少し紹介されている。
文献
Nat Med. 2007 Dec;13(12):1476-82. Epub 2007 Dec 2.
Antidepressant actions of the exercise-regulated gene VGF.
Hunsberger JG, Newton SS, Bennett AH, Duman CH, Russell DS, Salton SR, Duman RS.
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おまけ~ゴルフパット中の脳内リズム
最後に紹介する研究はこうだ。
ゴルフエキスパートのパット精度と、脳内リズムとの関係を調べたところ、前頭葉のα波が小さくなるほどパットの精度が良い、と主張している。
実際のデータを見ると、上級者かどうか疑わしい一人の「上級者」の影響が出ているようにも思えなくもない。。。研究はイタリアで行われたようで、イタリアらしい楽しげな研究ではある。(ゴルフはメンタルスポーツだから、その関係で詰めていっても面白いかも?専門的にはongoing activityとの関係。)
文献
J Physiol. 2008 Jan 1;586(Pt 1):131-139. Epub 2007 Oct 18.
Golf putt outcomes are predicted by sensorimotor cerebral EEG rhythms.
Babiloni C, Del Percio C, Iacoboni M, Infarinato F, Lizio R, Marzano N, Crespi G, Dassù F, Pirritano M, Gallamini M, Eusebi F.
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何を学ぶ?
この病んだ世の中の救世主的な研究分野という気がちょっとした(大げさだが)。ゲームやバーチャルワールドにはまってないで、もっとエクササイズしろ!、と一見時代錯誤とも思える主張を、科学的な根拠を持ってできるすばらしい研究分野だという気もする。
とにかく、この分野注目しておこう。そして、この分野の成果をもとにWii2.0的なツールたちが出てくることを期待したい。脳の念力だけで世の中生きようというThe Matrix的方向は、おそらく間違っている。
一方、冒頭で「安っぽいタイトルの本が出版されるのに備えて」と書いたが、確かに簡単に本を書けそうな危険な分野でもある気もした。。。脳はお金の素。。。
もしも本を出すなら、「今年は運動不足解消!」と張り切っている人が多そうな今がベストか。間に合わないなら夏頃か??
北京オリンピックは8月。
頑張れニッポン!!
1/01/2008
2008年の抱負
新年明けましておめでとうございます。
2008年が皆さまにとって良い年でありますように。
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以下、今年の抱負ランキングを。
1.論文のアクセプトレターをゲットする。
2.レフリーの要求に応える。
3.論文を投稿する。
4.ボスに論文を直してもらう。
5.論文を書く。できるだけセクシーに。
6.その前に、論文用データを用意しろ。
7.グラントをゲットする。
8.新規プロジェクト1.0のエフォートを40%くらいに上げる。
9.新規プロジェクト2.0をスタートさせる。
10.2009年のための就職活動を開始する(秋ごろ)。そのためにもまず論文を。。。
.
.
15.友達を作る。
.
.
20.英語力・ディベート力をつける。
.
.
25.数学・物理をもっともっと勉強する。
.
.
30.このブログをもっと充実させる。
.
.
50.埃をかぶりがちなUSBギターをもっと弾く。
.
.
100.越年させた汚い机をきれいにする。ASAP。
.
.
1000.嫁さんとのバトルを避ける。if possible。